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前世からの聖獣転生
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私は前世の記憶がある………と言っても、死んだ時の事しか覚えていないけど。
うっすらだけど経営難の動物園で、残された動物の檻へと走っていた気がする。
「はぁっ…………どうしよう……追い付かれる」
飼育委員の作業着の前を引き裂かれ、息を上げながら夜の動物園を走って逃げていた。
何から逃げていたのかは覚えていない。
なぜ服が破れているのかも分からない。
でも、自分が世話をしている虎の飼育スペースまで逃げていた。
私が向かったのは、年老いた虎の檻だった。
グルル………。
私の匂いが分かったのか、重い足取りで檻の側まで来てくれた。
「お願い助けて」
縋る想いで檻に手を入れ、ゴワゴワした金色の毛を撫でた。
「あんな男に穢されるくらいなら、あなたの牙にかかりたい。貴方が人間だったら迷わず、その胸に飛び込むのに」
気高い王の風格漂う年老いた虎は、何故か私に懐いてくれた。
彼は私の前では大きな猫だった。
今では私の手からしか餌を食べなくなった。
「置いていかないで」
すると虎は立ち上がって檻の入り口へと移動して座り込んでしまう。
促されるまま檻の中に入ると、大きな両手が私の肩を押すので座ると、大きな身体が押し倒した。
見上げる彼は笑っている気がした。
ザラザラした舌が涙を舐め取り、ゆっくり唇を撫でた。
まるでキスされている様で、ドキドキした。
体の力が抜け、そっと大きな頭に手を伸ばすと、大きな舌がゆっくり口の中を入れられ擽られる。
「………んっ………貴方のモノになりたい」
掠れた声に応えるように、その舌が露わになった胸の谷間を優しく撫で、首を擽るように這い上がってきた。
「………あっ」
耳や頬を優しい舐められると、お臍のしたにゾクゾクする程の熱が生まれる。
ここが猛獣用の檻の中で、冷たいコンクリートの床に押し倒されているにも関わらず、付き合ってきた どの人間の男性達よりも優しく丁寧に私を昂らせる。
破れた洋服の隙間から、下着の中に侵入した舌が胸の中心を探るように動き、少し硬い鼻が掠めればピリピリと刺激が襲う。
愛しくて、気持ちが良くて、彼の優しい目を見たら興奮してしまう。
寿命を待つばかりの虎の雄に心を奪われていた私は、体も奪われる錯覚に陥っていた。
無理なのは分かっている。
私は人間で、彼は虎なのだから。
そして彼は大きな口を開けて、私の首に噛み付いた。
痛さも感じず一瞬の事だった。
きっと明日の朝は、飼育員が虎に襲われた事故として新聞やニュースに取り上げられる。
でもこれは、私と年老いた虎の無理心中だとは誰も信じないと思う。
最後の力を振り絞って愛する女性を噛み殺した虎は、発見される頃には冷たくなっていた。
凄惨な事故現場な筈なのに、殺した虎も殺された女性も抱き締め合う様に幸せそうな顔で眠って居るようだった事は、限られた者しか知らない話だった。
そんな私も、めでたく虎に転生しました♡
……………はは(乾いた笑い)………バッカヤロ~!
虎だよ!モフモフのふわふわだよ!自分が!
目覚めれば大きな虎のママンに身体を舐められておりました!
ママンは美しいメス虎です。
そしてパパンは……………嘘でしょう?
『嘘な事があるか。聖獣である白虎の妻が美虎で何が悪い』
この国の守護聖獣の白虎が、野生の虎を娶り産まれたのが私らしいです。
ママンよりも2回りほど大きな白い虎が、私のパパンです。
よく見ると私以外にも、兄弟らしきモフモフの赤ちゃん虎が3匹います。
みんな金色の毛をしている。
『あちしだけ白い』
『聖獣の血が濃い証拠だな』
『おぉ…………ん?だからパパン以外とは、お喋りが出来ないの?』
何を言っているかは理解できるけど、会話になるのはパパンだけです。
『ははは。アイツらは、ただの虎だ。聖獣として交尾したのは後にも先にも1回だけだ。今は身体を小さくしているからな。フルで子作りしたのはお前だけだ』
マジか!?
『込められた魔力は桁違いだ。嫁になった初夜だけだ。あとは負担になるから手加減しているから、お前以外は普通の虎だ』
『あちしは?』
『…………知らん』
『えぇ~?!パパン無責任~!』
『パパン止めろ。お父様と呼べ!我にも分からん。白虎として本気で子作りしたのは生まれて初めてでな』
パ………お父様の言うことには、虎の嫁は初めてらしいです。
人が多かったそうですが、やはり擬人化したり、小型化して手加減していたので、そもそも子供が出来たことが無いそうです。
しかし、美しいママンに一目惚れし口説けば、強いオスのお父様にメロメロ状態になったらしく聖獣白虎として初夜を迎えると私が誕生したそうです。
『ネコ科で最強のベンガルトラの純血と、聖獣最強の白虎のハイブリッド誕生だな。今は、ただの白い虎だがな』
もしかしなくても白いだけの虎じゃね?
ハイブリッドでなく、虎同士じゃん!
『なんだ………そのジト目は。言っておくが虎と白虎は虎同士に見えるが、種族や先祖は別者だからな』
『ほんとに~?』
『ムッ?父を疑うのか?!』
『ソンナコトナイニョ(棒読み)』
『我が子ながら、よい性格をしておる』
『お褒めに預かり光栄ざます』
『『………』』
ママンは兄弟達の世話で手が離せず、パ………お父様は威圧感が半端ないから兄弟達に恐がられて近寄れないから、仕方なく私が相手をしてあげます。
親孝行の娘です(自画自賛)。
お父様は、あの時の虎では無い事に、少しだけガッカリしたけど、もし再会したらママン似の美虎になっている筈なので、嫁にして欲しいから親子で無くて良かったとも思っていました。
うっすらだけど経営難の動物園で、残された動物の檻へと走っていた気がする。
「はぁっ…………どうしよう……追い付かれる」
飼育委員の作業着の前を引き裂かれ、息を上げながら夜の動物園を走って逃げていた。
何から逃げていたのかは覚えていない。
なぜ服が破れているのかも分からない。
でも、自分が世話をしている虎の飼育スペースまで逃げていた。
私が向かったのは、年老いた虎の檻だった。
グルル………。
私の匂いが分かったのか、重い足取りで檻の側まで来てくれた。
「お願い助けて」
縋る想いで檻に手を入れ、ゴワゴワした金色の毛を撫でた。
「あんな男に穢されるくらいなら、あなたの牙にかかりたい。貴方が人間だったら迷わず、その胸に飛び込むのに」
気高い王の風格漂う年老いた虎は、何故か私に懐いてくれた。
彼は私の前では大きな猫だった。
今では私の手からしか餌を食べなくなった。
「置いていかないで」
すると虎は立ち上がって檻の入り口へと移動して座り込んでしまう。
促されるまま檻の中に入ると、大きな両手が私の肩を押すので座ると、大きな身体が押し倒した。
見上げる彼は笑っている気がした。
ザラザラした舌が涙を舐め取り、ゆっくり唇を撫でた。
まるでキスされている様で、ドキドキした。
体の力が抜け、そっと大きな頭に手を伸ばすと、大きな舌がゆっくり口の中を入れられ擽られる。
「………んっ………貴方のモノになりたい」
掠れた声に応えるように、その舌が露わになった胸の谷間を優しく撫で、首を擽るように這い上がってきた。
「………あっ」
耳や頬を優しい舐められると、お臍のしたにゾクゾクする程の熱が生まれる。
ここが猛獣用の檻の中で、冷たいコンクリートの床に押し倒されているにも関わらず、付き合ってきた どの人間の男性達よりも優しく丁寧に私を昂らせる。
破れた洋服の隙間から、下着の中に侵入した舌が胸の中心を探るように動き、少し硬い鼻が掠めればピリピリと刺激が襲う。
愛しくて、気持ちが良くて、彼の優しい目を見たら興奮してしまう。
寿命を待つばかりの虎の雄に心を奪われていた私は、体も奪われる錯覚に陥っていた。
無理なのは分かっている。
私は人間で、彼は虎なのだから。
そして彼は大きな口を開けて、私の首に噛み付いた。
痛さも感じず一瞬の事だった。
きっと明日の朝は、飼育員が虎に襲われた事故として新聞やニュースに取り上げられる。
でもこれは、私と年老いた虎の無理心中だとは誰も信じないと思う。
最後の力を振り絞って愛する女性を噛み殺した虎は、発見される頃には冷たくなっていた。
凄惨な事故現場な筈なのに、殺した虎も殺された女性も抱き締め合う様に幸せそうな顔で眠って居るようだった事は、限られた者しか知らない話だった。
そんな私も、めでたく虎に転生しました♡
……………はは(乾いた笑い)………バッカヤロ~!
虎だよ!モフモフのふわふわだよ!自分が!
目覚めれば大きな虎のママンに身体を舐められておりました!
ママンは美しいメス虎です。
そしてパパンは……………嘘でしょう?
『嘘な事があるか。聖獣である白虎の妻が美虎で何が悪い』
この国の守護聖獣の白虎が、野生の虎を娶り産まれたのが私らしいです。
ママンよりも2回りほど大きな白い虎が、私のパパンです。
よく見ると私以外にも、兄弟らしきモフモフの赤ちゃん虎が3匹います。
みんな金色の毛をしている。
『あちしだけ白い』
『聖獣の血が濃い証拠だな』
『おぉ…………ん?だからパパン以外とは、お喋りが出来ないの?』
何を言っているかは理解できるけど、会話になるのはパパンだけです。
『ははは。アイツらは、ただの虎だ。聖獣として交尾したのは後にも先にも1回だけだ。今は身体を小さくしているからな。フルで子作りしたのはお前だけだ』
マジか!?
『込められた魔力は桁違いだ。嫁になった初夜だけだ。あとは負担になるから手加減しているから、お前以外は普通の虎だ』
『あちしは?』
『…………知らん』
『えぇ~?!パパン無責任~!』
『パパン止めろ。お父様と呼べ!我にも分からん。白虎として本気で子作りしたのは生まれて初めてでな』
パ………お父様の言うことには、虎の嫁は初めてらしいです。
人が多かったそうですが、やはり擬人化したり、小型化して手加減していたので、そもそも子供が出来たことが無いそうです。
しかし、美しいママンに一目惚れし口説けば、強いオスのお父様にメロメロ状態になったらしく聖獣白虎として初夜を迎えると私が誕生したそうです。
『ネコ科で最強のベンガルトラの純血と、聖獣最強の白虎のハイブリッド誕生だな。今は、ただの白い虎だがな』
もしかしなくても白いだけの虎じゃね?
ハイブリッドでなく、虎同士じゃん!
『なんだ………そのジト目は。言っておくが虎と白虎は虎同士に見えるが、種族や先祖は別者だからな』
『ほんとに~?』
『ムッ?父を疑うのか?!』
『ソンナコトナイニョ(棒読み)』
『我が子ながら、よい性格をしておる』
『お褒めに預かり光栄ざます』
『『………』』
ママンは兄弟達の世話で手が離せず、パ………お父様は威圧感が半端ないから兄弟達に恐がられて近寄れないから、仕方なく私が相手をしてあげます。
親孝行の娘です(自画自賛)。
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