黒虎の番

月夜の庭

文字の大きさ
25 / 29

白虎の怒りと魔王の決意

しおりを挟む
ビアンカとラファエルが番として、気持ちを確かめ合っている最中、別の場所では聖獣であったはずの白虎が背中にアルダルシを乗せて、かつての住処である城で大暴れをしていました。


『我の娘に手を出した報いは受けてもらう』


謁見の間の天井に大きな穴を開け、立派な玉座を粉々に破壊し、国王の肖像画を風で切り裂いていった。


国王の権威の象徴を破壊し尽くす白虎を止められる者は存在しなかった。


唯一、止められる可能性があるアンダルシアが、かつての伴侶の胸ぐらを掴み、顎が歪み鼻血がでるほど殴りつけていた。


「わたくしの癒しであるビアンカに手を出すなんて、絶対に許さないわ」


その様子を魔王と勇者が腕を組んで並んで見詰めている。


「もっと早く、こうするべきだったな。俺の討伐を指示しているのも、エヴァンスを勇者に指名した教会の責任者もコイツだ」


「そうだね。教会の責任者には業突く張りのジジイは不向だよね。無能な馬鹿が権力を持つと国が亡びるからね」


国を守護していた聖獣に、魔力が多いの不老の美魔女に、人間を襲う気は無いけど魔族の中で最強の魔王と、そして人類最強である勇者の4人を敵に回した1人の老人は自分の愚かさを身をもって思い知る。


「おい。この国はアンダルシアに手伝ってもらいながら、エヴァンスが納めろ」


「どうしたんだ?急に」


「急では無いさ。俺は魔王に戻るタイミングを伺っていたんだ。俺が魔族を制圧して納める覚悟を決めたんだ。たが人間側を納める奴が馬鹿だと意味が無い。だから無駄な争いを避ける為にエヴァンスが元勇者として王になれ。地位や血筋など関係なく王座に付ける者。それが英雄や勇者だ」


この一件は愚かな国王に白虎と勇者が鉄槌を下し、クーデターを起こしたと、瞬く間に国中に広まった。


元々国王から信頼され人気があったアンダルシアが一緒に帰って来て、勇者の補佐をする姿に国民はお祭り騒ぎで歓迎した。


元々国王としての仕事をあまりしていなかった前国王が、アンダルシアが居なくなってから、まともに仕事が出来るはずもなく、悪政が続き国民の信頼は落ちるとことまで落ちていた。


不満だらけの日々を送っていた国民にとって、国の守護神であった聖獣白虎と若くて強い勇者の国盗りは気持ちを晴れやかにする出来事で、大歓迎された。


貴族の中には反発する者も存在したけど、アンダルシアと共に大掃除すると、見た目と若さだけでなく国王としての実力もある認識され、いつの間にか反対する人間は居なくたっていた。


そして新しい国王は、魔王と会談し平和協定を結んだ。


勇者によって、真の平和が訪れた瞬間でした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

これが普通なら、獣人と結婚したくないわ~王女様は復讐を始める~

黒鴉そら
ファンタジー
「私には心から愛するテレサがいる。君のような偽りの愛とは違う、魂で繋がった番なのだ。君との婚約は破棄させていただこう!」 自身の成人を祝う誕生パーティーで婚約破棄を申し出た王子と婚約者と番と、それを見ていた第三者である他国の姫のお話。 全然関係ない第三者がおこなっていく復讐? そこまでざまぁ要素は強くないです。 最後まで書いているので更新をお待ちください。6話で完結の短編です。

番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はスミレ・デラウェア。伯爵令嬢だけど秘密がある。長閑なぶどう畑が広がる我がデラウェア領地で自警団に入っているのだ。騎士団に入れないのでコッソリと盗賊から領地を守ってます。 そんな領地に王都から番探しに王子がやって来るらしい。人が集まって来ると盗賊も来るから勘弁して欲しい。 お転婆令嬢が番から逃げ回るお話しです。 愛の花シリーズ第3弾です。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...