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Episode.4
親友③
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「うかうかしてちゃ~取られるよ?」
「だーかーらー、桐生さんとはそういうのじゃないの! ていうか、美冬はどうなの!? 彼氏が~なんて浮いた話、一切聞いたことがないんですけど!」
「はあ? あたしが特定の男を作るタイプだと本気で思ってんなら、友達辞めたほうがいいんじゃなーい?」
「微塵も思ってない!」
「いや、それはそれで失礼すぎでしょ」
── 結局、学校の休み時間もタピってる時も、なぜか桐生さんの話で持ちきりになった。
『“禁断”なんてもんはな、ブッ壊すためにあんだよ』なんてサラッと言えちゃう美冬は、やっぱりかっこいいなって思う。美冬って可愛いけど、本当にかっこいいんだよね。
「んじゃ、また~」
「送ってくれてありがとう。明日、顔出すね」
「うい~」
今日は時間があるからって、マンション付近まで送ってくれた美冬。可愛くてかっこいいとかズルいな、本当に。美冬の後ろ姿が見えなくなるまで見送ってマンションへ向かった。
美冬は基本、土日はバイト漬けだから私がバイト先に通ったりしてて、もう常連中の常連になってる。平日もバイトはあるんだけど『梓との時間はマジで必須でしょ』って、ちょくちょく休みを取ったり、バイトの時間を調節してくれたりして、私の彼氏か! ってツッコミたくなるほどのことを当たり前かのようにしてくれてる。だから、私だって通っちゃうもんね! っていう感じで、土日は美冬がバイトしてる和菓子屋へ行くことが多い。
「美冬が考案した新作食べるの楽しみだな~」
なんて浮かれていた私の視界に入ってきたのは、遠目からでも伝わってくるほどのイケメンオーラを放つ男の人。そして、こっちをチラッと見るなり、笑顔で手を振りながら走ってきた。周りを見渡してみたけど私しかいないってことはあの人……私に手を振ってるの?
近づいて来るのはいいんだけど、全く知らない人で笑えない。
「いやぁ、年甲斐もなく走っちゃったなぁ」
「……」
「一目で分かったよ、君が梓ちゃんだって」
「……」
・・・誰、マジで……誰!?
「くくっ。そんな顔しないで? 僕、不審者じゃないから」
いや、不審さしかないよね? この状況は。一体何者なの? この超絶爽やかイケメン。
「ごめんごめん、僕は誠の友人だよ」
「まこと……?」
「そそ。桐生誠」
「あ、ああ……」
── で、なんなの!? なんで桐生さんの友人が私に話しかけて来たの!?
これってもしかして、品定め的なやつかな? 桐生さんの隣人として不足はないか……みたいなやつだったりする? だったら不足しかないと思いますけどぉ……。そもそも桐生さんのことよく知らないし、私。
知ってるのは名前とヤクザだってこと、ぶっきらぼうで言葉足らずだってこと。あとは傘をささない……くらいの情報しかない。年齢も連絡先も、恋人や結婚の有無も、何も知らない。
── まさか……。
恋人もしくは奥さんがいて……私のことを浮気相手か何かと勘違いして大騒ぎになってるとか!? やばいよ、やばいよ、それはやばいよ! 何もないです、桐生さんとは本当に何もないんです! なんて言っても信じてもらえなくて、私は海の藻屑になるんだろうな……きっと。
「ははっ。そんな死にそうな顔しないでよ」
「……すみません、桐生さんとは本っ当に何もないんです。本当に、何も」
「え? “何もない”……じゃあ困るんだけどなぁ」
「“死ね”……ということでしょうか」
「……ん?」
「……え?」
沈黙が流れて、真顔で見つめ合う私達。
「くくっ。可愛くて面白いって最高だね~、梓ちゃん」
クスクス笑ってるけど私は一切笑えないし、なんなら泣きたいくらいだし。
「あの、本当に桐生さんとは何もないんです。そんな関係性ではないので、その……ごめんなさい。私、何も知らなくて……ていうか、そもそも桐生さんが私みたいな学生を相手にするわけもないですし……はい。だからっ」
「ああ、ごめんごめん。何か勘違いしちゃってるかな? ……って、やれやれ。もう来ちゃったか」
「……え?」
「何してんだ」
私の真後ろ……というか、上? から声が聞こえて、バッと顔を上に向けると、桐生さんの胸元にコツンッと頭が当たってしまった。
「あっ、すみません」
離れようとした瞬間、後ろから私のお腹に桐生さんの逞しい腕が回ってきて、ギュッとロックされて動けなくなる。
・・・へ? え、いや……あの……なんですか? この状況は。
「くくくっ。そんな警戒しなくても、取って食ったりはしないよ? なんて言ったって誠の“特別”、だからね?」
── 私が桐生さんの……“特別”?
「さっさと失せろ」
「やれやれ、それが親友に言うセリフかね」
「俺の許可無く勝手に接触するような奴が親友かよ」
・・・一触即発!? とか思ったけど、そんな雰囲気でもない。桐生さんは元々表情から感情を掴めないタイプの人だから、何となく声のトーンとかで察するしかないんだけど、この声のトーンは怒っていない……と思う。
ていうか、あの……離してくれませんか。心臓が飛び出そうなくらいドキドキしてるんですけど。
「ははっ。それよりいい加減、離してあげたらどうかな? どうしていいか分からず困ってるよ? 梓ちゃん」
「……ああ、悪い」
「い、いえ……」
桐生さんから解放された私はスッと桐生さんの隣へ移動した……もちろん少し間を空けて。
「痛くなかったか」
「え? あ、はい」
「そうか」
相変わらず真顔でぶっきらぼうな桐生さん。強面でぶっきらぼうで言葉足らずだけど、とっても優しいんだよね。ギャップ王決定戦で優勝間違えなしだよ。
そんな桐生さんは、私の瞳をジッと見つめてくる。私、この人に後ろから抱きしめられてたんだ……とか思うとまた心臓がドキドキし始めて苦しくなる。そもそも異性に抱きしめられたりすることなんて一度もなかったわけで、初めてがあの桐生だよ? そりゃ緊張もするって。
「何もされてねぇか」
「……へ?」
「するわけないだろ? 全く、親友を疑う君の神経を疑うね。僕は」
「何もされてねぇか」
親友さんをガン無視して私から目を逸らさない桐生さん。
「あ……はい。全く、なにも」
「そうか」
「だーかーらー、桐生さんとはそういうのじゃないの! ていうか、美冬はどうなの!? 彼氏が~なんて浮いた話、一切聞いたことがないんですけど!」
「はあ? あたしが特定の男を作るタイプだと本気で思ってんなら、友達辞めたほうがいいんじゃなーい?」
「微塵も思ってない!」
「いや、それはそれで失礼すぎでしょ」
── 結局、学校の休み時間もタピってる時も、なぜか桐生さんの話で持ちきりになった。
『“禁断”なんてもんはな、ブッ壊すためにあんだよ』なんてサラッと言えちゃう美冬は、やっぱりかっこいいなって思う。美冬って可愛いけど、本当にかっこいいんだよね。
「んじゃ、また~」
「送ってくれてありがとう。明日、顔出すね」
「うい~」
今日は時間があるからって、マンション付近まで送ってくれた美冬。可愛くてかっこいいとかズルいな、本当に。美冬の後ろ姿が見えなくなるまで見送ってマンションへ向かった。
美冬は基本、土日はバイト漬けだから私がバイト先に通ったりしてて、もう常連中の常連になってる。平日もバイトはあるんだけど『梓との時間はマジで必須でしょ』って、ちょくちょく休みを取ったり、バイトの時間を調節してくれたりして、私の彼氏か! ってツッコミたくなるほどのことを当たり前かのようにしてくれてる。だから、私だって通っちゃうもんね! っていう感じで、土日は美冬がバイトしてる和菓子屋へ行くことが多い。
「美冬が考案した新作食べるの楽しみだな~」
なんて浮かれていた私の視界に入ってきたのは、遠目からでも伝わってくるほどのイケメンオーラを放つ男の人。そして、こっちをチラッと見るなり、笑顔で手を振りながら走ってきた。周りを見渡してみたけど私しかいないってことはあの人……私に手を振ってるの?
近づいて来るのはいいんだけど、全く知らない人で笑えない。
「いやぁ、年甲斐もなく走っちゃったなぁ」
「……」
「一目で分かったよ、君が梓ちゃんだって」
「……」
・・・誰、マジで……誰!?
「くくっ。そんな顔しないで? 僕、不審者じゃないから」
いや、不審さしかないよね? この状況は。一体何者なの? この超絶爽やかイケメン。
「ごめんごめん、僕は誠の友人だよ」
「まこと……?」
「そそ。桐生誠」
「あ、ああ……」
── で、なんなの!? なんで桐生さんの友人が私に話しかけて来たの!?
これってもしかして、品定め的なやつかな? 桐生さんの隣人として不足はないか……みたいなやつだったりする? だったら不足しかないと思いますけどぉ……。そもそも桐生さんのことよく知らないし、私。
知ってるのは名前とヤクザだってこと、ぶっきらぼうで言葉足らずだってこと。あとは傘をささない……くらいの情報しかない。年齢も連絡先も、恋人や結婚の有無も、何も知らない。
── まさか……。
恋人もしくは奥さんがいて……私のことを浮気相手か何かと勘違いして大騒ぎになってるとか!? やばいよ、やばいよ、それはやばいよ! 何もないです、桐生さんとは本当に何もないんです! なんて言っても信じてもらえなくて、私は海の藻屑になるんだろうな……きっと。
「ははっ。そんな死にそうな顔しないでよ」
「……すみません、桐生さんとは本っ当に何もないんです。本当に、何も」
「え? “何もない”……じゃあ困るんだけどなぁ」
「“死ね”……ということでしょうか」
「……ん?」
「……え?」
沈黙が流れて、真顔で見つめ合う私達。
「くくっ。可愛くて面白いって最高だね~、梓ちゃん」
クスクス笑ってるけど私は一切笑えないし、なんなら泣きたいくらいだし。
「あの、本当に桐生さんとは何もないんです。そんな関係性ではないので、その……ごめんなさい。私、何も知らなくて……ていうか、そもそも桐生さんが私みたいな学生を相手にするわけもないですし……はい。だからっ」
「ああ、ごめんごめん。何か勘違いしちゃってるかな? ……って、やれやれ。もう来ちゃったか」
「……え?」
「何してんだ」
私の真後ろ……というか、上? から声が聞こえて、バッと顔を上に向けると、桐生さんの胸元にコツンッと頭が当たってしまった。
「あっ、すみません」
離れようとした瞬間、後ろから私のお腹に桐生さんの逞しい腕が回ってきて、ギュッとロックされて動けなくなる。
・・・へ? え、いや……あの……なんですか? この状況は。
「くくくっ。そんな警戒しなくても、取って食ったりはしないよ? なんて言ったって誠の“特別”、だからね?」
── 私が桐生さんの……“特別”?
「さっさと失せろ」
「やれやれ、それが親友に言うセリフかね」
「俺の許可無く勝手に接触するような奴が親友かよ」
・・・一触即発!? とか思ったけど、そんな雰囲気でもない。桐生さんは元々表情から感情を掴めないタイプの人だから、何となく声のトーンとかで察するしかないんだけど、この声のトーンは怒っていない……と思う。
ていうか、あの……離してくれませんか。心臓が飛び出そうなくらいドキドキしてるんですけど。
「ははっ。それよりいい加減、離してあげたらどうかな? どうしていいか分からず困ってるよ? 梓ちゃん」
「……ああ、悪い」
「い、いえ……」
桐生さんから解放された私はスッと桐生さんの隣へ移動した……もちろん少し間を空けて。
「痛くなかったか」
「え? あ、はい」
「そうか」
相変わらず真顔でぶっきらぼうな桐生さん。強面でぶっきらぼうで言葉足らずだけど、とっても優しいんだよね。ギャップ王決定戦で優勝間違えなしだよ。
そんな桐生さんは、私の瞳をジッと見つめてくる。私、この人に後ろから抱きしめられてたんだ……とか思うとまた心臓がドキドキし始めて苦しくなる。そもそも異性に抱きしめられたりすることなんて一度もなかったわけで、初めてがあの桐生だよ? そりゃ緊張もするって。
「何もされてねぇか」
「……へ?」
「するわけないだろ? 全く、親友を疑う君の神経を疑うね。僕は」
「何もされてねぇか」
親友さんをガン無視して私から目を逸らさない桐生さん。
「あ……はい。全く、なにも」
「そうか」
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