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Episode.5
欲しくてたまらない② 桐生視点
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怒ってるっつーより、拗ねてんじゃねぇの?
「拗ねるな」
「拗ねてないです! 子供じゃないんで!」
いや、怒ってるも拗ねてるも然程変わんねえか。再びプンスカしながら先を歩く梓。あの大人びた容姿からは想像もできねえほど、可愛らしく怒ってる梓が一言で言うと『死ぬほど可愛い』これに尽きる。
具体的に梓の何がいいのか……そう聞かれても『分かんねえ』としか言えねぇ。容姿は間違えなくいい、実年齢より随分と大人びていて、ここまで容姿が整っている女はそうそういねえ。『面食いかよ』と言われたら『まあ、そうかもな』としか言いようがねぇけど。
・・・まあ、なんつーか見た目だけじゃねえんだよな。あの交差点で初めて梓を見かけた時、俺がっつーより、俺の“本能”が梓を求めた。で、結局は俺自身も──。
「梓ちゃんってさ、誠のことを“ひとりの人”として扱うよね」
そうか……そうだな。梓は俺を敬ったり諂ったりしない。恐れたり、怯えたりもしない。梓は俺のことを“ただの人”として扱う。ソレが心地良かったのかもしれねぇな。
俺を見て微笑んだり、呆れた顔をしたり、時にはブツブツと怒ったりして……喜怒哀楽を容赦なく俺へぶつけてくる梓に惹かれた部分はあるな。
「他の女とは違う」
「ははっ。確かにそうかもね」
俺の周りには、俺の地位に目が眩んでる女が多い。大半がロクな奴じゃねぇ。
「梓は違う」
「はいはい。そうだね、分かったよ」
── 違う。梓だけは違う。上手く説明はできないが……格段に何かが違う。この俺が、喉から手が出るほど欲しくてたまらない女だ。そりゃ違うのは当たり前だろ。
「おーい。桐生さーん、親友さーん」
遅れてエントランスへ行くと、不貞腐れた顔をしながら傘を3本持っている梓がいた。
「あらら。雨降ってきちゃったかぁ」
「フロントで傘借りてきましたよ」
「気が利くね~、梓ちゃん」
「いえ。だって桐生さん、こうでもしないと絶っ対に傘ささないんですもん」
「え?」
おいおい、余計なこと言うなよ。
「おい、梓っ」
「桐生さんいっつも傘ささないんですよー? だから毎回傘貸してるんです。まあ、別にいいんですけど風邪引くんじゃないかって心配で。桐生さんが傘ささないのって昔からですか?」
「いや? 誠は雨に濡れるのが大の嫌いっ」
「ああーー、もういいだろ。そんなどうでもいい話。さっさと行くぞ」
「え、あっ、ちょっ、桐生さん! 傘!」
俺が早足で外へ向かうと、慌てて梓がついてきた。
「もぉ、子供じゃないんですから傘くらいさしてくださいよ」
なんて言いながら俺の隣に来て、傘を押し付けてきた。
「くくくっ。こりゃ面白いことを聞いちゃったなぁ」
ニタニタしながら俺の隣へ来た雄大がマジでうざすぎる。
「雄大……分かってるよな」
「ははっ。そんな睨まないでくれよ」
「あ、雄大さんって言うんですね」
「言わん」
「え?」
「呼ぶな」
「いや、いつまでも『親友さん』って呼ぶのはっ」
「不破でいい」
雄大呼びなんざ許さん。
「ははっ。ここまで器が小さいと、むしろ清々しいね」
「オメェは黙ってろ」
「はははっ。本当に仲が良いんですね」
そう言いながら無邪気に笑う梓。
・・・可愛すぎんだろ、お前。本人はこの異常な可愛さに気づいてんのか? やべえだろ、無自覚とか。毎日毎日、可愛くて仕方ねえっつーの。女ってこんな可愛い生き物だっけか? とか、ごちゃごちゃ考えてる自分が死ぬほどキモすぎてヘドが出そうだわ。
「梓ちゃん」
「はい」
「これからも誠に傘……貸してやってよ」
「……『傘を買え』じゃないんですね」
「誠は梓ちゃんの傘じゃないとダメなんだよ」
・・・余計なことを言うなっつってんだろ。
「そうなんですか?」
キョトンとした顔をして俺を見上げてくる梓。
「……どうだろうな」
そんな綺麗な瞳で俺を見つめてくんな。
「ちゃんと傘買ってくださいね? いつも私がいるわけじゃないんで」
やれやれと言いたげな顔をして、どこか嬉しそうな表情にも見える。悪いが買うつもりはない。あるからな、普通に。
梓との接点が欲しくて、繋がりが欲しくて、血迷った俺は、“降りしきる雨の中、傘をささない男”という死ぬほど謎なキャラを演じることにした。
『もぉー』と言いながらも俺のスーツを拭く梓が、どうにも俺の心をくすぐって、どうしようもなく愛おしくて、俺のモンになっちまえばいいのに……そう思わずにはいられなかった。
あんなにも濡れるのが嫌で、クソほど嫌いだった雨が、今じゃ『降ってくれ』とか願ってんだもんな。頻りに天気予報確認したりして……きしょ。
「これじゃどっちが“子供”かイマイチ分かんないね~」
「桐生さんじゃないですかー? ずぶ濡れになっても意地でも傘買わないですし」
「違ぇ」
「だったら傘、買ったらどうですか?」
「要らん」
「ほら、不破さん! どう思います? ほぼ毎回このやり取りですよ?」
「ははっ。誠の場合、子供っていうか……不器用なんだよ」
「……不器用?」
ニヤニヤしている雄大。コイツ、この状況を楽しんでやがるな。どんだけ性格悪ぃんだよ。
「余計なこと言うなっつってんだろ。どんだけ理解力ねえんだ、テメェはよ」
「まぁまぁ~」
で、そんなこんなで着いたスーパーの中は案の定、相変わらずの冷え具合だった。まあ、ぶっちゃけスカート短すぎんのが、気に入らないっつーのもあったけどな。『服装なんて自由だろ』と思う反面、『なんで他の野郎に見せてんだ』と苛立ちが積もる。正直、自分でも“やべぇ男”としか思えねぇ。きしょすぎんだろ、普通に。服装にまでケチつけるとか、やべぇとかのレベル越えてやがる。
雄大の言う通り、ただの“器がちっせえ男”でしかない。まあ、でも……こんなことが気になるのも梓だからなんだろうな。女がどんだけ露出してようがなんだろうが、気にしたことなんて一度もねえし。心底どうでもいい。
だが、梓となれば話は別だ。
「拗ねるな」
「拗ねてないです! 子供じゃないんで!」
いや、怒ってるも拗ねてるも然程変わんねえか。再びプンスカしながら先を歩く梓。あの大人びた容姿からは想像もできねえほど、可愛らしく怒ってる梓が一言で言うと『死ぬほど可愛い』これに尽きる。
具体的に梓の何がいいのか……そう聞かれても『分かんねえ』としか言えねぇ。容姿は間違えなくいい、実年齢より随分と大人びていて、ここまで容姿が整っている女はそうそういねえ。『面食いかよ』と言われたら『まあ、そうかもな』としか言いようがねぇけど。
・・・まあ、なんつーか見た目だけじゃねえんだよな。あの交差点で初めて梓を見かけた時、俺がっつーより、俺の“本能”が梓を求めた。で、結局は俺自身も──。
「梓ちゃんってさ、誠のことを“ひとりの人”として扱うよね」
そうか……そうだな。梓は俺を敬ったり諂ったりしない。恐れたり、怯えたりもしない。梓は俺のことを“ただの人”として扱う。ソレが心地良かったのかもしれねぇな。
俺を見て微笑んだり、呆れた顔をしたり、時にはブツブツと怒ったりして……喜怒哀楽を容赦なく俺へぶつけてくる梓に惹かれた部分はあるな。
「他の女とは違う」
「ははっ。確かにそうかもね」
俺の周りには、俺の地位に目が眩んでる女が多い。大半がロクな奴じゃねぇ。
「梓は違う」
「はいはい。そうだね、分かったよ」
── 違う。梓だけは違う。上手く説明はできないが……格段に何かが違う。この俺が、喉から手が出るほど欲しくてたまらない女だ。そりゃ違うのは当たり前だろ。
「おーい。桐生さーん、親友さーん」
遅れてエントランスへ行くと、不貞腐れた顔をしながら傘を3本持っている梓がいた。
「あらら。雨降ってきちゃったかぁ」
「フロントで傘借りてきましたよ」
「気が利くね~、梓ちゃん」
「いえ。だって桐生さん、こうでもしないと絶っ対に傘ささないんですもん」
「え?」
おいおい、余計なこと言うなよ。
「おい、梓っ」
「桐生さんいっつも傘ささないんですよー? だから毎回傘貸してるんです。まあ、別にいいんですけど風邪引くんじゃないかって心配で。桐生さんが傘ささないのって昔からですか?」
「いや? 誠は雨に濡れるのが大の嫌いっ」
「ああーー、もういいだろ。そんなどうでもいい話。さっさと行くぞ」
「え、あっ、ちょっ、桐生さん! 傘!」
俺が早足で外へ向かうと、慌てて梓がついてきた。
「もぉ、子供じゃないんですから傘くらいさしてくださいよ」
なんて言いながら俺の隣に来て、傘を押し付けてきた。
「くくくっ。こりゃ面白いことを聞いちゃったなぁ」
ニタニタしながら俺の隣へ来た雄大がマジでうざすぎる。
「雄大……分かってるよな」
「ははっ。そんな睨まないでくれよ」
「あ、雄大さんって言うんですね」
「言わん」
「え?」
「呼ぶな」
「いや、いつまでも『親友さん』って呼ぶのはっ」
「不破でいい」
雄大呼びなんざ許さん。
「ははっ。ここまで器が小さいと、むしろ清々しいね」
「オメェは黙ってろ」
「はははっ。本当に仲が良いんですね」
そう言いながら無邪気に笑う梓。
・・・可愛すぎんだろ、お前。本人はこの異常な可愛さに気づいてんのか? やべえだろ、無自覚とか。毎日毎日、可愛くて仕方ねえっつーの。女ってこんな可愛い生き物だっけか? とか、ごちゃごちゃ考えてる自分が死ぬほどキモすぎてヘドが出そうだわ。
「梓ちゃん」
「はい」
「これからも誠に傘……貸してやってよ」
「……『傘を買え』じゃないんですね」
「誠は梓ちゃんの傘じゃないとダメなんだよ」
・・・余計なことを言うなっつってんだろ。
「そうなんですか?」
キョトンとした顔をして俺を見上げてくる梓。
「……どうだろうな」
そんな綺麗な瞳で俺を見つめてくんな。
「ちゃんと傘買ってくださいね? いつも私がいるわけじゃないんで」
やれやれと言いたげな顔をして、どこか嬉しそうな表情にも見える。悪いが買うつもりはない。あるからな、普通に。
梓との接点が欲しくて、繋がりが欲しくて、血迷った俺は、“降りしきる雨の中、傘をささない男”という死ぬほど謎なキャラを演じることにした。
『もぉー』と言いながらも俺のスーツを拭く梓が、どうにも俺の心をくすぐって、どうしようもなく愛おしくて、俺のモンになっちまえばいいのに……そう思わずにはいられなかった。
あんなにも濡れるのが嫌で、クソほど嫌いだった雨が、今じゃ『降ってくれ』とか願ってんだもんな。頻りに天気予報確認したりして……きしょ。
「これじゃどっちが“子供”かイマイチ分かんないね~」
「桐生さんじゃないですかー? ずぶ濡れになっても意地でも傘買わないですし」
「違ぇ」
「だったら傘、買ったらどうですか?」
「要らん」
「ほら、不破さん! どう思います? ほぼ毎回このやり取りですよ?」
「ははっ。誠の場合、子供っていうか……不器用なんだよ」
「……不器用?」
ニヤニヤしている雄大。コイツ、この状況を楽しんでやがるな。どんだけ性格悪ぃんだよ。
「余計なこと言うなっつってんだろ。どんだけ理解力ねえんだ、テメェはよ」
「まぁまぁ~」
で、そんなこんなで着いたスーパーの中は案の定、相変わらずの冷え具合だった。まあ、ぶっちゃけスカート短すぎんのが、気に入らないっつーのもあったけどな。『服装なんて自由だろ』と思う反面、『なんで他の野郎に見せてんだ』と苛立ちが積もる。正直、自分でも“やべぇ男”としか思えねぇ。きしょすぎんだろ、普通に。服装にまでケチつけるとか、やべぇとかのレベル越えてやがる。
雄大の言う通り、ただの“器がちっせえ男”でしかない。まあ、でも……こんなことが気になるのも梓だからなんだろうな。女がどんだけ露出してようがなんだろうが、気にしたことなんて一度もねえし。心底どうでもいい。
だが、梓となれば話は別だ。
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