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「ゼロから千まで」15話
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「ゼロから千まで」15話
零一の言葉に急いで掻き込んでいたご飯が千歳の喉に詰まる。苦しそうに胸を叩く千歳を見て零一はすぐにお茶を差し出した。
「大丈夫?」
零一に背中を支えられながら千歳はお茶を飲み、事なきを得た。ホッとしたのも束の間、千歳はすぐさっきの質問の返答に対して聞き返す。
「ずっとってどういうこと!?」
零一は目を丸くしていたが嬉しそうに頷く。
「今日一日ずっとって意味だよ。」
「なーんだ。」
千歳はホッと胸を撫で下ろしたが、ずっとという言葉がどうしても引っかかった。
「じゃあ、夕方までいるってことだね?」と一応零一の反応を確かめる為に追加で聞き返すと、零一は笑顔で「朝までだよ。」と答える。千歳が言葉を詰まらせている間に零一は答えを言った。
「泊まりの許可貰ったんだ。」
「泊まり?」
予想外の返答に動揺したが、最近友人たちも部活などで忙しく暇だった千歳にとって家族以外の誰かとずっとお話しできるのは嬉しかった。
元々、千歳は一人で過ごすよりも誰かと一緒にいる方が落ち着くタイプの人間だった。そして警戒心の無い千歳は特に疑問を持たずに零一の泊まりを受け入れた。
「千歳、明後日退院でしょ?記念にと思って」
よく分からない理由だったが、千歳は勉強会という名のおしゃべり会をスタートすることにした。
「前はよく裏山を探検したよね。秘密基地作ってさ。そこら辺の草や石を悪者に見立てて、零一はうちの相棒役だったよね。」
「うん。千歳は勇者っていう設定だったよね。懐かしいな。今はやれなくなっちゃったけど」
「え?たまにやるよ。」
零一は驚いた顔で問題集に書かれてある千歳の拙い解答から顔を上げる。
「一人で?」
「いや?帰り道でやりたくなったらやる。普段は二葉が乗ってくれるんだけど、たまに三来もやってくれる。」
「え?二人はどういう」
「二葉がなんか回復してくれて、三来は適当に魔法かけてくれる相棒。」
「それは聞き捨てならないな。」と零一は口を尖らせる。
「相棒役は僕がいい。」
初めて零一が子どもっぽい発言したので千歳は笑った。楽しそうにケラケラ笑っている千歳に零一は頬を膨らませる。
「そんなに笑わなくてもいいじゃないか。」
「だって、高校入ってから零一と遊んでなかったから、もうそんな遊びしないんだと思ってた」
すると、零一の表情はたちまち曇り始め、やがて俯いてしまったので千歳は焦った。
「あ、なんかごめん。」
「ちーちゃんは変わったね。」
突然、昔の呼び名で呼ばれたので千歳は目を見開く。
「変わった?うちが?」
「そう。」
「変わったのはれいちゃんじゃなくて?」
零一は苦笑した。そんな大人びた表情が千歳には十分変わって見えた。
「いつもちーちゃんは前を歩いてた。後ろなんて振り向かず、ずっと前だけ見てた。」
もう日は落ち始め、外は暗くなり始めていた。そんな窓の外の光景を遠くを見る眼差しで零一は見ていた。
「でも、今は違う。ちーちゃんは色んな方向を向くようになったんだね。知らなかった。」
千歳も零一と同じように窓の外を見た。夕日が綺麗なオレンジ色をしていて口の中が甘酸っぱく感じた。
「うちも、零一が色んな人と一緒に遊んだりするようになって、変わったんだって思ったよ。」
零一は小さく笑った。
「あの時は何も分かっていなかったんだ、俺。高校に入って、考え方も環境も色んなことが変わったけど、」
大きく零一は息を吸った。
「でも、ちーちゃんが大事だってことは変わらなかったよ。」
千歳はゆっくり零一の方を向く。零一も千歳を見つめていた。
「好きだよ、千歳。」
零一の言葉に急いで掻き込んでいたご飯が千歳の喉に詰まる。苦しそうに胸を叩く千歳を見て零一はすぐにお茶を差し出した。
「大丈夫?」
零一に背中を支えられながら千歳はお茶を飲み、事なきを得た。ホッとしたのも束の間、千歳はすぐさっきの質問の返答に対して聞き返す。
「ずっとってどういうこと!?」
零一は目を丸くしていたが嬉しそうに頷く。
「今日一日ずっとって意味だよ。」
「なーんだ。」
千歳はホッと胸を撫で下ろしたが、ずっとという言葉がどうしても引っかかった。
「じゃあ、夕方までいるってことだね?」と一応零一の反応を確かめる為に追加で聞き返すと、零一は笑顔で「朝までだよ。」と答える。千歳が言葉を詰まらせている間に零一は答えを言った。
「泊まりの許可貰ったんだ。」
「泊まり?」
予想外の返答に動揺したが、最近友人たちも部活などで忙しく暇だった千歳にとって家族以外の誰かとずっとお話しできるのは嬉しかった。
元々、千歳は一人で過ごすよりも誰かと一緒にいる方が落ち着くタイプの人間だった。そして警戒心の無い千歳は特に疑問を持たずに零一の泊まりを受け入れた。
「千歳、明後日退院でしょ?記念にと思って」
よく分からない理由だったが、千歳は勉強会という名のおしゃべり会をスタートすることにした。
「前はよく裏山を探検したよね。秘密基地作ってさ。そこら辺の草や石を悪者に見立てて、零一はうちの相棒役だったよね。」
「うん。千歳は勇者っていう設定だったよね。懐かしいな。今はやれなくなっちゃったけど」
「え?たまにやるよ。」
零一は驚いた顔で問題集に書かれてある千歳の拙い解答から顔を上げる。
「一人で?」
「いや?帰り道でやりたくなったらやる。普段は二葉が乗ってくれるんだけど、たまに三来もやってくれる。」
「え?二人はどういう」
「二葉がなんか回復してくれて、三来は適当に魔法かけてくれる相棒。」
「それは聞き捨てならないな。」と零一は口を尖らせる。
「相棒役は僕がいい。」
初めて零一が子どもっぽい発言したので千歳は笑った。楽しそうにケラケラ笑っている千歳に零一は頬を膨らませる。
「そんなに笑わなくてもいいじゃないか。」
「だって、高校入ってから零一と遊んでなかったから、もうそんな遊びしないんだと思ってた」
すると、零一の表情はたちまち曇り始め、やがて俯いてしまったので千歳は焦った。
「あ、なんかごめん。」
「ちーちゃんは変わったね。」
突然、昔の呼び名で呼ばれたので千歳は目を見開く。
「変わった?うちが?」
「そう。」
「変わったのはれいちゃんじゃなくて?」
零一は苦笑した。そんな大人びた表情が千歳には十分変わって見えた。
「いつもちーちゃんは前を歩いてた。後ろなんて振り向かず、ずっと前だけ見てた。」
もう日は落ち始め、外は暗くなり始めていた。そんな窓の外の光景を遠くを見る眼差しで零一は見ていた。
「でも、今は違う。ちーちゃんは色んな方向を向くようになったんだね。知らなかった。」
千歳も零一と同じように窓の外を見た。夕日が綺麗なオレンジ色をしていて口の中が甘酸っぱく感じた。
「うちも、零一が色んな人と一緒に遊んだりするようになって、変わったんだって思ったよ。」
零一は小さく笑った。
「あの時は何も分かっていなかったんだ、俺。高校に入って、考え方も環境も色んなことが変わったけど、」
大きく零一は息を吸った。
「でも、ちーちゃんが大事だってことは変わらなかったよ。」
千歳はゆっくり零一の方を向く。零一も千歳を見つめていた。
「好きだよ、千歳。」
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