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「ゼロから千まで」23話
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「ゼロから千まで」23話
零一のアパートは学校から少し離れた場所に建っており、築年数もそこそこ重ねていそうな雰囲気だった。近づくと見える建物の壁にある黒ずんだ汚れは、夜だとなんだか不気味に見えた。
小学生の頃、零一が引っ越してしまったことには理由があった。
それは、急な両親の他界だった。交通事故だったらしい。その日は零一と一緒に外で遊んでいたから、零一だけ助かったのだ。それからすぐ零一は親戚の家に引き取られていったのだ。
「れいちゃん。どうしてアパートで暮らすことになったの?」
零一の提案で手を繋ぎながら階段を上り、零一の部屋のドアの前まで歩く。しかし、返事が無かったので、千歳は顔を上げると零一はどこか後ろを見ていた。
「どうしたの?」
「え?いや…なんの話だっけ。」
「アパート暮らしの理由だよ。」
零一は「あー」と言ってから「親戚の家からだと高校まで遠いんだよ。叔父さんたちに許可を貰ってアパート暮らしを始めたんだ。」とようやく前へ向き直る。
「サッカーも遅くまでやってる時あるもんね。」
千歳の言葉に零一は苦笑しながら鍵を開けてドアを開ける。
「それもあるけど、ちょっと叔父さんたちと距離を置きたかったんだ。」
「なんで?」
零一の叔父さんたちとは零一が引っ越す際にチラリと顔を見た程度だった為、人物像などよく浮かばなかった。
「親戚と言えど、ちょっと俺だけ疎外感を感じちゃってさ。」
零一は整頓された部屋のベッドに腰を下ろす。
「僕からしてみては、どちらかと言うとちーちゃん一家の方が親戚って感じがするんだよね。」
「いつでも家に来ていいよ。」と笑いながら言う千歳に零一は何か思い詰めた表情で千歳を抱きしめる。突然抱きしめられたので千歳はびっくりしたが、病院で抱きしめられた時よりは緊張しなかった。しかし、零一は加えて千歳の頭を撫で始めたので、不思議そうに顔を上げて零一を見つめる。零一がこちらへ顔を近づけてきたので、驚いた千歳は一歩後ろへ後退る。千歳の頭に触れていた零一の手の平が離れていく。
「じゃあ、ご飯食べたら勉強会、始めようか。」
「う、うん。」
いつもだったら勉強会という言葉に気後れしていたが、それどころではなかった。さっきの雰囲気は、今までに感じた事ない焦燥感を覚えさせた。頭を触られたはずなのに背中を撫でられたような、そんな感覚があった。
「せっかくだから、僕が作るよ。ちーちゃん、なに食べたい?」
「え、れいちゃん、料理できるの!?」
そう言って千歳は零一と一緒に冷蔵庫を眺める。零一の表情はよく見えなかった。代わりに冷蔵庫の中に入っている、綺麗に並べられた野菜や肉が目に入る。千歳は一体どんな献立が良いかとワクワクする気持ちと同時にどこかスッキリしない気持ちが心の中をかき混ぜていた。
零一のアパートは学校から少し離れた場所に建っており、築年数もそこそこ重ねていそうな雰囲気だった。近づくと見える建物の壁にある黒ずんだ汚れは、夜だとなんだか不気味に見えた。
小学生の頃、零一が引っ越してしまったことには理由があった。
それは、急な両親の他界だった。交通事故だったらしい。その日は零一と一緒に外で遊んでいたから、零一だけ助かったのだ。それからすぐ零一は親戚の家に引き取られていったのだ。
「れいちゃん。どうしてアパートで暮らすことになったの?」
零一の提案で手を繋ぎながら階段を上り、零一の部屋のドアの前まで歩く。しかし、返事が無かったので、千歳は顔を上げると零一はどこか後ろを見ていた。
「どうしたの?」
「え?いや…なんの話だっけ。」
「アパート暮らしの理由だよ。」
零一は「あー」と言ってから「親戚の家からだと高校まで遠いんだよ。叔父さんたちに許可を貰ってアパート暮らしを始めたんだ。」とようやく前へ向き直る。
「サッカーも遅くまでやってる時あるもんね。」
千歳の言葉に零一は苦笑しながら鍵を開けてドアを開ける。
「それもあるけど、ちょっと叔父さんたちと距離を置きたかったんだ。」
「なんで?」
零一の叔父さんたちとは零一が引っ越す際にチラリと顔を見た程度だった為、人物像などよく浮かばなかった。
「親戚と言えど、ちょっと俺だけ疎外感を感じちゃってさ。」
零一は整頓された部屋のベッドに腰を下ろす。
「僕からしてみては、どちらかと言うとちーちゃん一家の方が親戚って感じがするんだよね。」
「いつでも家に来ていいよ。」と笑いながら言う千歳に零一は何か思い詰めた表情で千歳を抱きしめる。突然抱きしめられたので千歳はびっくりしたが、病院で抱きしめられた時よりは緊張しなかった。しかし、零一は加えて千歳の頭を撫で始めたので、不思議そうに顔を上げて零一を見つめる。零一がこちらへ顔を近づけてきたので、驚いた千歳は一歩後ろへ後退る。千歳の頭に触れていた零一の手の平が離れていく。
「じゃあ、ご飯食べたら勉強会、始めようか。」
「う、うん。」
いつもだったら勉強会という言葉に気後れしていたが、それどころではなかった。さっきの雰囲気は、今までに感じた事ない焦燥感を覚えさせた。頭を触られたはずなのに背中を撫でられたような、そんな感覚があった。
「せっかくだから、僕が作るよ。ちーちゃん、なに食べたい?」
「え、れいちゃん、料理できるの!?」
そう言って千歳は零一と一緒に冷蔵庫を眺める。零一の表情はよく見えなかった。代わりに冷蔵庫の中に入っている、綺麗に並べられた野菜や肉が目に入る。千歳は一体どんな献立が良いかとワクワクする気持ちと同時にどこかスッキリしない気持ちが心の中をかき混ぜていた。
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