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第二回 話し合い

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 2週間後、再びキルシュから手紙が来た。
 今度は「お嫁に来ませんか?」的な内容ではなく、召還状と言った感じの内容だった。
 相手は明らかに焦っているようだ。何で?
 その少し脅すような内容に、見た目より気の弱い父王は気を病んでしまった。

 また数日後、今度は俺を迎えに使者がグーテンベルクまで来る、という内容の手紙が来た。
 これは侵略するとも取れる内容で、ついに俺も出発しなければいけなくなった。
 国にしてみれば、俺一人の犠牲で済むなら安いものだろう。
 ついに体調の悪い父に代わって国政を担っている兄たちに呼び出された。


 第一王妃の息子である兄二人は双子だ。
 主に政務を勤める第一王子のディートフリートは茶色っぽい金髪のストレートヘアを肩の長さで揃え、濃い青の瞳を持つ第一王妃に似た美人で、騎士団を纏める第二王子のエーレンフリートは燻んだ金髪のツーブロックに茶色の瞳の精悍な男だ。
 そして双子なのにあまり似ていない。

 7歳年上の二人とアルフォンスは余り仲が良くなかったらしいが、今は俺の働きかけでそこまで仲が悪いわけではない。
 特にエーレンフリートはベルンハルトと仲が良い事もあり、俺の事もそれなりに気に掛けてくれる。
 現在、王に代わってディートフリートが使っている執務室に呼び出された俺は兄二人とレナトス、騎士団長のヨゼフとエミルとベルンハルトに囲まれていた。

「お前の本意ではないのは解ってるいるが、選択肢がないのだ。」
 ディートフリートは眉間に深い皺を寄せている。
 中立と言ってもグーテベルクは小さな国だ。
 上手くやって行かなければ直ぐにつぶされてしまうだろう。
 それならば、俺一人差し出すなんて大した事はない。

 キルシュの手紙では、結婚式は俺の20歳の誕生日を予定しているらしい。
 引渡しは海の上で、キルシュに連れて行ける者は一人。
 嫁に来いとか言ってなんだか人質扱いっぽいし、向こうの都合の良い内容に首を捻ってしまう。
 それにラクーンも俺を諦めていないんじゃないのかな?

「ラクーンの方はどうなりましたか?」
「ラクーンの王子も相変わらずお前にご執心だ。
 ラクーンにお前を渡したら、ヴィルヘルムたちが第三王子派を興してこの国を乗っ取る計画があるらしいぞ。
 それならば平和の使者も兼ねてキルシュへ行って欲しい。」
「怖・・・そういえばヴィルヘルムはどうなったのですか?」
「奴は娘の事もあって滞在を許されている様だが、決して良いとは言えない待遇だそうだ。
 それもあって我が国を乗っ取る計画を立てているのかもな。」
「そうですか。また攫われないように気を付けないと。」
 エミルを見ると何度も首を縦に振っていた。

「それでも俺はこのキルシュが優位な交渉内容が気に入らない。
 向こうでの俺の扱いは?全く自由が無いとか、奴隷扱いとかだと嫌なんだけれど。」
「キルシュでは奴隷制は廃止されているので大丈夫だとは思うが・・・」
「何?」
 ディートフリートははっきりしない。
 こういう所が父王に似てるんだよなぁ。
「ディートフリート様、発言の許可を。」
 許可を受け、レナトスが引き継いだ。

「現在、平民出身の者が多いキルシュでは魔力の少ない者が多く、他国に比べて生活レベルが劣るようです。
 医療に関してもその様な有様なので、治癒魔法が使えるアルフォンス様に一刻も早く来て頂きたいのではないかと推測されます。
 なので、酷い扱いはされないのではないかと。」
 仕事モードのレナトスは、淡々とそう話す。
 眼鏡のせいで表情は読み取れないが、次の言葉を紡ぐ前に大きく息を吐いた。

「しかし、そのお陰で魔力が少ない者でも扱える道具の開発も盛んなのですよ。
 この間のラクーンとの戦闘では、かなり威力のある兵器が使われたとか。」
 そこで、チラリとヨゼフを見た。
「ああ、俺が見たのは魔石を効率良く使った大砲で、かなり遠くまで攻撃できていました。
 それから魔石と魔石を繋げて操作できる偵察用の鳥とかも見ましたし。
 魔石も魔力も必要の無い小型の弓などもありました。」

 鳥・・・ドローンみたいなものかな?もしかして向こうにも転生者がいるのかも。
「それでラクーン側にかなりの被害が出たのです。」
「そう、それは厄介ですね。
 で、俺が行けばこちらには侵略せずに友好関係を結んでくれると約束してくれたんですね。」
「そうだ。」
 ディートフリートははっきりとそう言ったので、俺は渋々ながら了解した。

 一週間後にキルシュから使者がやって来るので、俺はその使者と一緒にキルシュまで行くそうだ。
 国境までの護衛はエーレンフリートが直々にしてくれるそうだ。
 因みに向こうで全て用意するので持ち物は何もいらないと言われた。

 会議が終わると、レナトスがやって来た。
「あのような発言をしましたが、本当は貴方を行かせたくなどありません。」
「わかってるよ。」
 自分の方へレナトスを引き寄せると、少し震えているのが判った。

 そこへエーレンフリートがやって来て「お前は変わっているね。」と言った。
「人の好みをとやかく言われたくはありません。」
 俺が珍しく不快感を露にしたからエーレンフリートは少し驚いたようだ。
 でも「気持ちは解るよ。すまなかった。」と言ってくれ、これからはレナトスと自由に会える様に護衛に話を通してくれると請合ってくれた。
 ヨゼフも協力してくれるらしいし、ディートフリートも「自由にすればよい。」と言ってくれた。

 うーん、皆に気遣われているのが判って少し気まずいな。


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