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帰還
しおりを挟む「・・・おはよう。」
「ふふ、もう夕食の時間ですよ。」
夕方、俺が目覚めると、ルネはすでに起きていて、きっちりと身形を整えていた。
「食事はこちらへ運ばせるように手配しました。
着替えてしまいましょう。」
そういうと、こちらで揃えてくれた服を出してきて着替えを手伝ってくれた。
「自分で着替えられるよ?」
「私が手伝いたいのです・・・ダメですか?」
ルネが可愛らしく首を傾げたので、着替えを手伝ってもらう事にしたのだが。
「う・・・我慢できなくなる。」
ボタンを留めながら、時々見上げてくるルネに行為中の姿が重なって見える。
「流石に今はダメですよ。」
思わず手を掴んだら、やんわりと退けられてしまった。
「それから、良い知らせと悪い知らせがあります。」
「何?」
ルネはボタンを全て留め、パンパンと俺の胸を2回叩きこちらへ向き直った。
「良い知らせは明日、レンを迎えにエミルとベルンハルトがこちらへ到着するという事で、悪い知らせは近日中にフロレンツとヴィルヘルムと協力者が、裁判を受ける為にこの城へ連れて来られると言う事です。」
「え・・・直ぐグーテベルクに帰りたい。
俺、フロレンツに会わないと、ダメ、かな?」
動揺が思い切り出て、めちゃくちゃ声が震えてしまった。
顔も青ざめているかもしれないと思っていたら、ルネが優しく抱きしめてくれた。
「いいえ、あの男は他国の王子を攫った時点で有罪です。
無理して会うまでもなく、ディートフリート様とルーカス様が極刑にしてくださるでしょう。
そうおっしゃると思って、すでに迎えが来たら直ぐに帰れるように手配してあります。
私も早く帰りたいので。」
「ありがとう。ルネにはお世話になりっぱなしだ。」
「いいえ、あなたは私の心を救ってくださったのですから、このくらい当然です。」
ルネはそう言ってにっこり笑うと、隣の部屋に用意されたテーブルへと案内してくれた。
それから一緒に夕食を取って、お風呂にも一緒に入ってくれて、またイチャイチャして、離れないように抱きしめ合って眠った。
こっちで再会してから、ルネはずっと俺と一緒にいてくれる。
いいのかな?今までは仕事しているところばかり見ていたのに。
聞いてみようとしたけれどルネは逆に俺に甘えるばかりで、上手くはぐらかされてしまった。
グーテベルクへと帰る朝、リオン、ルディ、ラースが綺麗になって連れて来られた。
首輪も無くなっていて、それぞれに似合う服を着ていた。
三人はフロレンツのした事を証言してから、グーテベルクから来た信用できる侍女にどこかへ連れて行かれていたのだ。
どうやら、それぞれ身体に見合う服を誂えてもらったり、遊びに行ったりと甘やかされていたそう。
顔色がとても良くなっていて、目つきも穏やかになっていた。
前はよく似ていると思ったが、こうして見ると髪と目の色意外全然似ていない。
リオンはまだ小さくて子供っぽいけれど、良く考えて行動する子で、ルディは三人の中で一番背が高くてしっかりしていて、ちゃんとしたレディだ。
ラースは貴族出身なだけあって態度も身のこなしも洗練されているし、頭も良いので、リーダーとして他の二人に信頼されている。
始めは三人とも俺が養子にしようと思っていたのだけれど、王子が他国から養子を取るのは面倒事に繋がるからと兄たちに止められてしまったのでルネに相談すると、全員ルネが養子にしてくれると言った。
「こうやって皆で並ぶと親子みたいでしょ?本当の親子になってお姉さんとも仲良くしてくださいね。」
「「「はい!」」」
三人はラクーンを出られると聞いただけで喜び、ルネの養子になれると聞いてさらに驚いていた。
ここで気付いたのだが、ルネは全てエリーゼに相談しないで決めてしまっている。
彼女はどう思うんだろう。
そろそろ俺の中身はアルフォンスじゃない事をエリーゼたちに話した方がいいんじゃないだろうか。
昼過ぎにグーテベルクから迎えが来た。
ルーカスやニコにお互い遊びに行く事と、俺の力に頼らない医療を普及させる為の研究を一緒にする約束をして、後は兄たちに任せ、俺たちは直ぐにグーテベルクへと戻った。
「心配かけてごめんね。」
「いいえ、アルフォンス様がご無事で良かった・・・お守りできず申し訳ありませんでした。」
迎えに来たエミルは俺に謝りっぱなっしだったが、俺が侍従を続けて欲しいと頼んだら嬉しそうにしていた。
王宮騎士として俺付になったベルンハルトは、前みたいに気軽に話しかけたりはして来なかった。
俺がいない間に心境の変化があったそうだ。
グーテベルクへ戻り、父王と母上に今までのあらましを報告した。
父王は俺を犠牲にした事を謝ってくれ、もう俺を取引の材料にしないと約束してくれた。
母上にサンドの事を聞いたら「絶対に秘密。」と言われて、存在を口外する事も、今どうしているのか聞くことも禁止されてしまったので未だに御礼をしていない。
もしかしたら直ぐ近くにいるのかもしれないけれど。
マリアンは泣いて喜んでくれた。
リオン達とも仲良くしてくれるって言っていた。
そうそう、キルシュからエミルの護衛としてやって来たデニスは、キルシュに戻らずにルネの護衛になった。
ニコの代わりを探していたので丁度良かったらしい。
ルネは能力主義なので、お眼鏡に適えば出身国や生まれを気にしないのだ。
俺は変わらず父王や兄たちの補佐をしている。
仕事で成果を残して、皆に認めてもらって、ルネとの事に口出しできないようにしたいから。
それに最近は薬師を巻き込んで薬なんかの研究にも力を入れているんだ。
結局、俺とルネは内縁と言う関係を続けている。
今、ルネは余り仕事に行かなくなって、城の中の離れに俺やリオンたちと一緒に住んでいる。
夫婦同然なのだが、やっぱり娘の父と元婚約者が出来ていると言うのを正式に認めるのは体裁が悪いらしく、偉い人たちに関係を公にする事を止められたのだ。
そのせいでルネが仕事に行き辛くなっているのではと思ったが、ルネは全く気にならないし、今が一番幸せだと言った。
*****
「・・・レナトス、さま、連、さま」
ルネに秘密を打ち明けられたあの祠でお祈りして、やっと女神さまに会うことができたのは、もう冬も終わろうかと言う頃だった。
今回はルネも一緒だ。
「女神さま、お久しぶりです。」
俺とルネが挨拶をすると、女神さまはニコニコと子供らしく笑っていた。
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