気が付いたら乙女ゲームの王子になっていたんだが、ルートから外れたので自由にして良いよね?

ume-gummy

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番外編

ギムレット、グーテベルクへ来る2

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 ギムレット

「全く、何やってんだよぉ。」
「すまん。」
「折角、合法的に二人でデートさせてやろうと思ったのに。」
「はは、ベルンハルトが思ったより強くてさ。
 俺の強いのなんかはチートみたいなもんだろ?ちゃんと訓練してる奴には適わないよ。
 それにアルフォンスがレナトスを置いて来る訳ないだろう?」
「そーだけど。」

 今、僕たちは城下にある流行のカフェみたいな店にいる。
 アルフォンスが発案してレナトスの家が経営しているそうで、この世界には無いサービスがあって、なかなか繁盛しているみたいだ。
 特に可愛い店員のスマイル0G(こっちの世界の通貨単位)の威力は凄い。
 その店員に声を掛けたいのか、僕の後ろに立っているデニスがそわそわしだした。
「デニス、行ってきていいよ。
 この店のセキュリティ魔道具は城と同じくらい強力だから、この中なら護衛一人で十分だ。」
「え、でも。」
「今日の俺はギムレットの護衛だ。」
 ルーカスはそう言ってデニスを追い払った。

「で、腹は決まった?」
 二人きりになったところで、僕は口を開いた。
兄さんライムの事だよ。」
「ああ。長い事待たせて悪かったな。
 これでアルフォンスの事は諦めがついたよ。
 でも、本当にあいつはまだ待ってくれているのか?」
「うん。兄さんも諦めが悪いからね。
 そういうところ似てる。」
 僕は口元まで持ってきていた炭酸割りのジュースを飲まずにテーブルへ置いた。
 そして真っ直ぐにルーカスを見る。
「兄さんの事をよろしくお願いします。
 兄さんは一途な人でね、ずっとルーカスだけを好きなんだ。
 あんなに尽くしてもらっておいて、大事にしなかったら許さないから。」


 *******


 兄さんライムは僕がギムレットとして目覚めた時も、おかしくなった時もいつも味方になってくれた。
 穏やかで、優しくて、美人で頭がとても良い。
 兄じゃなかったら、僕が嫁にしたいくらいだ。
 そんな素敵な兄さんは誰がどう見てもルーカスを好きなのがバレバレだ。
 最初は、自分が関わってルーカスを呼んだから責任を感じているのかと思っていたけれど、それだけじゃなかったんだ。
 兄さんはルーカスに喜んで尽くして、協力して、役に立とうと努力していたのに、馬鹿ルーカスは全然気付いていなかった。
 その上、グーテベルクに潜入した時に遠くから見たアルフォンスに一目ぼれして、混乱に乗じて娶ろうとした。
 それでも兄さんはルーカスを嫌いにはならなかった。
 だからアルフォンスがグーテベルクに戻って、レナトスと上手く行ったと手紙をもらった時には密かに喜んだもんだ。
 そして兄さんからやや強引に許可をもらって、僕から兄さんの気持ちをルーカスへ話させてもらった。
 そのくらいしないと金髪美形好きのルーカスバカはいつまで経っても、兄さんの気持ちに気付かないだろうから。

 それで今回の旅行だ。
 ルーカスは最後にもう一度アルフォンスに会って、きっぱりとその気持ちを断ち切ると約束した。


「この後どうする?」
「もう少し街を見て回ったら、お菓子を買いたい。
 僕、明日はキャロルとエリーゼの様子を見に行くんだ。
 手ぶらじゃ何だし。」
「誰なんだ?」
「ゲームの主人公とライバル。」
「そうか。」
 ルーカスは僕のこういうところを知っても全く動揺しなくなったな。
 慣れって怖い。

「俺はライムに土産でも見に行こうかと思ってる。
 レナトスが良い感じの指輪をしていたからアルフォンスに店を教えてもらった。」
「えっ!それじゃ僕も行く!
 ルーカスいきなり引くほど高い指輪買いそうだし、僕も一緒に選ぶから」
「うっ、そんなことないと思うが・・・了解。」
「ルーカス様、ギムレットさん!俺も行きたいです!」
 話が済んだところで店員を気にしつつ、デニスが戻って来た。
 手にはフライドポテトもどきを持っている。
 アルフォンスは向こうの文化を少しづつ取り入れてるんだな。
 キルシュに支店を出してもいいか聞いてみよう。
 それより。

「デニス、碌に話した事の無い子にいきなりアクセサリーをプレゼントしたら引かれるよ。」
「そういうものなんですか?」
 ルーカスと言い、デニスと言い、兄さんと言い、キルシュの男ってどうしてこうなの・・・僕、未だに誰とも付き合った事無いのに、ここだと恋愛相談ばっかりしてる。
 せっかく異世界に来たんだから、もっと異世界っぽい事がしたいなぁ。

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