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妖精はしたたかでいたずら好き

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「リチャードを取られてしまいそうですけれどもね」
「うちは一代限りだからな。それは構わない」
「あなたがリチャードの教育に気を使ったからです。だからリチャードが評価されているんですよ」

 そうなのか?
 俺自身が貴族の通う学院と縁がなかったこともあり、人脈と教養の面で苦労した。
 息子にはそういう人生を歩ませまいと思っただけだ。
 俺が行ったことが全てムダではなかったことを知ると、心の底が温かくなる。

「あの妖精のような娘には悪いことをしてしまった。合わせる顔がない」
「あなたは御存知でした? 妖精はしたたかでいたずら好きなんですよ」
「えっ?」

 どういうことだろう?

「メローちゃんは婚約破棄の段階で既にこうなることを予想してたみたいで」
「何だと? まさか……」
「私もリチャードに聞いただけなんですけれどもね」

 いや、商人どもの裏の顔を知っていたら予想は付くかもしれないな。
 何てことだ!

「その上で婚約破棄されようが、リチャードのことを買いだと考えたのですよ」
「商人の視点でか? 純愛じゃないのか?」
「嫌ですよ、あなたったら。メローちゃんは我が国で五本の指に入る商人の娘ですよ?」
「……」

 いくら何でも、父親の意向で婚約破棄された相手と再び付き合ってるわけじゃないだろう。
 ないと思いたい。
 となるとあの娘自身の計算高い意思なのか。
 商人の娘怖い。

「……確かにリチャードは、俺の息子にしては出来過ぎだと思う」
「もちろんメローちゃん、リチャードへの情もなくはないのでしょうけれどもね」
「浅慮なのは俺だけなのか……」
「ところがあなたも期待されてるんですよ」
「えっ?」

 何も持たない俺を?
 どうして?

「旧ゴダード伯爵家領を発展させようというのが王家の考えらしいんですよ」
「ああ、それは俺も聞いた」

 領地と爵位の返上の際にだ。
 一応、労われた。
 何でも隣国との協商関係を強化するに当たり、通り道の旧ゴダード伯爵家領に手を入れるとのことだった。
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