巻き込まないで下さい!!オカルト令嬢の婚約破棄騒動

ロク

文字の大きさ
3 / 25

3 巻き込まないで下さい!

しおりを挟む

 食堂を出た後、気持ちを切り替えた二人は中庭を散策した。季節は初夏。手入れされた花壇には様々な花が咲き乱れ、蝶が楽しげに花々の間を飛び交っていた。

「図書館で本ばかり読んでないで、たまには散歩もいいだろう。ごらん、緑の美しい季節だよ」

「ええ、本当に綺麗だわ。連れてきてくれてありがとう」

 その時、またもや言い争う声が聞こえてきたのだ。

「私と婚約を破棄して下さい」

「サミュエル様?いったいどうしたんですの?急に……」

「私には貴女ではない、心に秘めた女性がいるんだ」

「何を仰ってるかわかりませんわ!」

 女性は蒼白になり、両手で顔を覆うと激しく泣き出した。

「それは、どなたですの?」

 その言葉に、男生徒はヴィヴィアンを切なげに見つめた。

「え?なあに?まさかあんな遠くから私を見てるの?まさか、また私が絡んでるんじゃないよね?」

 またしてもヴィヴィアンは狼狽うろたえ、震えながらアスベルを探した。すると青ざめた顔のアスベルが素早く横に来て腰に手を回した。

「いったい今日はなんていう日だ!厄日か?」

 アスベルは怒りに震えながらヴィヴィアンを見た。

「ヴィヴィが魅力的なのは知っているが、まさか彼に何かしたのかい?でなければ婚約破棄するほど思い詰めたりしないだろう?」

「いいえ、知らないわ!お願い、信じて!」

「本当に?だったらなんで!あー、心配でヴィヴィから離れられないよ。目を離した隙に、誰かに奪われそうだ。愛してるよ、ヴィヴィ。私を捨てないでおくれ」

 アスベルはヴィヴィアンを抱きしめながら呟いた。

「食堂の男は二年のケイン・グラナダ伯爵令息、中庭の男は
サミュエル・ウィストン侯爵令息だ。本当に心当たりはないのかい?」

「もちろんよ!だって私にはアスベル様がいるのに」

「だったらなぜ?」

 その時昼の授業の予鈴が鳴り、二人は慌てて教室に戻った。


 そして放課後。帰ろうと馬車止めに向かって歩いていた時、後ろからまたしても婚約破棄の言葉が聞こえてきた。振り返れば一組のカップルが揉めていた。

「フローラ・アガサ、お前とは婚約を破棄をする!俺はもうこの思いにふたをして、好きでもない人と一緒に過ごすことが出来ない。悪いが俺のことは諦めてくれ」

「ウォルフ様!どうして急にそんなことをおっしゃるの?イヤです、イヤです!私は別れませんわ」

 ヴィヴィアンは青ざめた顔で二人を見つめ、次に来るセリフに備えた。今までのパターンだと私の名前が出てくる気がする。
 案の定、ウォルフはヴィヴィアンを見ると、駆け寄ってきて足元にひざまずき、流れる仕草でヴィヴィアンの手の甲にキスを落とした。

「ロイズ嬢、俺はウォルフ・カイザーだ。初めて貴女の声を聞いた時から愛してる。どうか俺の気持ちを受け入れてくれ」

「ヒッ!な、な、何を、お、仰っているの?あ、貴方にこ、こ、声をか、掛けたことなんて、あ、あ、あったかしら?」

「ああ、貴女は忘れてしまったんですね。あの出会いを」

 ウォルフは切なそうにヴィヴィアンを見上げた。その時、いきなり両肩を突き飛ばされて、ヴィヴィアンは尻餅をついた。

「貴女ね!私の婚約者に何をしたの?返してよ!私のウォルフ様を返して!」

「よせ!やめるんだ、フローラ。ロイズ嬢、俺が悪かった。貴女の姿を見つけて思わず言ってしまったんだ。でも愛しているのは本当の気持ちだ。また改めて申し込みに行くから待っていてくれ」

「離してよ、この悪女!人の男をよくも盗ったわね!覚えてらっしゃい!必ず復讐してやるわ」

 フローラと呼ばれた女性は、ウォルフに引き 摺 ずられるように連れて行かれた。ヴィヴィアンは尻餅をついたまま、呆然とそれを見送った。

「いったい何だったのかしら?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

転生令嬢はのんびりしたい!〜その愛はお断りします〜

咲宮
恋愛
私はオルティアナ公爵家に生まれた長女、アイシアと申します。 実は前世持ちでいわゆる転生令嬢なんです。前世でもかなりいいところのお嬢様でした。今回でもお嬢様、これまたいいところの!前世はなんだかんだ忙しかったので、今回はのんびりライフを楽しもう!…そう思っていたのに。 どうして貴方まで同じ世界に転生してるの? しかも王子ってどういうこと!? お願いだから私ののんびりライフを邪魔しないで! その愛はお断りしますから! ※更新が不定期です。 ※誤字脱字の指摘や感想、よろしければお願いします。 ※完結から結構経ちましたが、番外編を始めます!

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

自称悪役令嬢は嫌われるべく暗躍する!皆の幸福の為に嫌われるはずが、何故か愛されてしまいました。

ユウ
恋愛
侯爵令嬢のレティシアは婚約者との顔合わせの日、前世の記憶を取り戻す。 乙女ゲームの王道的悪役ヒロインの立ち位置にいる事に。 このままでは多くの人が悲しむ結果になる。 ならば家を存続させ一人で罪を被って国外追放なろう!と思いきや。 貴族令嬢としては色々ぶっ飛び過ぎてポンコツ令嬢のレティシアに悪女は厳しかった。 間違った悪役令嬢を演じる末に嫌われるはずの婚約者に愛されてしまう中真のヒロインが学園に現れるのだが… 「貴女悪役令嬢の癖にどういう事よ!ちゃんと役目を果しなさいよ」 「えっと…なんかごめんなさい」 ポンコツ令嬢はうっかりヒロインに頭を下げてしまって事態は急変してしまう。

処理中です...