巻き込まないで下さい!!オカルト令嬢の婚約破棄騒動

ロク

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4 ヴィヴィの周りは泥沼です

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「大丈夫ですか?災難でしたね」

 声と共に手が差し出された。ヴィヴィアンはありがたくその手を取って立ち上がった。ドレスの汚れを払おうと手を離しかけたら、ギュッと強く握られ、腰をかがめたクロードに、素早く手の甲にキスされた。

「あ、あの、すみません……離して下さい」

 ヴィヴィアンは頰を赤く染めて狼狽うろたえた。

「ロイズ嬢、初めまして。俺はクロード・デュークと申します。デューク侯爵家の嫡男です。どうぞお見知りおきを」

 クロードは上目遣いにヴィヴィアンを見やり、ニコリと微笑んだ。そのままヴィヴィアンの手の感触を楽しむように弄びながら、手を握り続けている。
 ヴィヴィアンはますます顔が火照るのを止められず、恥ずかしくて困ってしまった。必死に手を引こうとするが思った以上に力が強く、痛くはないのに手が離せない。

「あ……の、助けていただいてありがとうございます、デューク様。でも、どうか手をお離しになって」

「ロイズ嬢、どうか私の事はクロードとお呼び下さい。馬車置き場まで行かれるのでしたら、私がエスコートしますよ」

 クロードは積極的で押しが強く、ヴィヴィアンには上手くあしらえないでいた。するとアスベルが走ってやってきた。

「その役目は婚約者である私のものですよ、デューク。その手を離していただきたい」

「あ、アスベル様!」

 アスベルは手刀でクロードの手をはたいた。ヴィヴィアンはクロードが怯んだ隙に手を振り払い、アスベルの側に駆け寄った。アスベルはヴィヴィアンの腰をしっかりと抱えた。

「油断も隙もありませんね。ヴィヴィ、明日からは帰りは私が迎えに行くまで教室で待っていて下さい」

「ええ、わかったわ、アスベル様」

「では失礼しますよ。ああ、言い忘れていました。ヴィヴィにちょっかいを出すのはやめて貰えませんか?デューク。貴方は色んな女性と浮名を流す『恋の狩人』と二つ名のある方。初心うぶなヴィヴィでは恋のお相手としては役不足ですよ。どうかそっとしておいて下さい」

「ああ、浮き名だなんて誤解ですよ。私の恋はどれも本気です。私はただ、最愛の人を探していただけですよ。でもとうとう見つけました。ロイズ嬢、貴女です。リシュルドには申し訳ないが、貴殿とはまだ結婚したわけではない。私にもまだチャンスはあるということです」

「何を!」

「私は本気ですよ。どんな手を使っても私の側にいて欲しいと思ってるんですから」

「残念ですが、私は誰にもヴィヴィを渡すつもりはありませんよ。では、失礼」

 アスベルはクロードを牽制するようにヴィヴィアンのこめかみにキスをしてから会釈をした。
 ヴィヴィアンは真っ赤になりながらも淑女の礼をしようとするが、腰を抱かれたままではうまく出来ず、みっともないことになってしまった。それでもアスベルはヴィヴィアンの腰に回した手を解くことはしなかった。


 
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