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決断
しおりを挟む……それから
暫くは姿見の前での1人ファッションショーならぬ、髪型チェック。手鏡も使っての後ろ髪の確認も忘れない。
ユニークスキルだけに、誰に教わるでもなく思いのままに髪型を変える事が出来た。伸ばしたり、縮めたり、色もそれなりに。
伸ばし過ぎて、
「お、おお。髪って、伸ばすとこんなに重たくなるんだな」
と思わぬ重量感を味わったり。
丸坊主にして、
「お、おお。すーすーするのは慣れてたはずなのに、すーすーのレベルが違う。抵抗が一切ないとここまでになるんだな。それに逆毛が手に引っ掛かって痛いな」
と薄毛の当時と比較したり、思わぬ攻撃力を味わったり。
黒から茶、金。赤、青、黄色と。虹色なんかも再現させたりもして、
「おお。部分的な色分けも出来るけど、やり過ぎるのも気持ち悪いな。やっぱり程々が1番か」
と一般人なら当たり前の感想を漏らしたりもした。これは全部独り言。
小一時間程だっただろうか。流石にやる事が無くなった事もあり、十分に堪能できた事もあり、漸く動き出す決心をする。
「よし。じゃあ、新たな人生のスタートだ。悔いのないように精一杯に生きるぞ」
誰に見せるでもない両手ガッツポーズを決め、装備を整えてから走り出した。
今は、金髪の角刈り。
理由は、何となく強そうに見えたから。どこぞの映画に影響されたかは別として、どこぞのキャラクターを真似してるかも別として、戦闘民族を意識したかどうかは置いておこう。
そんな髪型もやってみたら出来たのだが、流石に仰々しくて恥ずかしくなって止めたようだった。
見る人が見れば、どこぞの対戦型格闘ゲームの格闘家のようではある。筋肉はそこまでないのだが。
スインは走る。
普通なら、単純に考えるなら、1番近い、歩いて1日の距離にあるとされているストーレーの町を目指すだろう。
安全思考があるのなら、それが最適解であると言ってもいい。元日本人ならば尚更に。
初めての世界、それもモンスターの出る異世界。慎重に行動して然るべきなのだが、まずは人恋しくなるような環境にも居るのだが。
だが、スインは走った。それとは違った方向に。
走りながら考えた。大凡は打ち合わせ通りの設定になっているようだったが、所々が可笑しかった。
いきなりレベルが『8』である事。しかも8って、何か意味があるのかな。とか。
各種項目は『並』なのに、幸運だけが『低』な事とか。
元異世界人特典というのの中に、聞いてない項目も色々あって嬉しかったのだが、『テンプレ体質』はなんか嫌だなあと思ってしまった事とか。
お金はありがたかったけど、武器・防具の名称が一々気になってしまった事とか。
色々と思う事はあったが、細かい事を気にしている場合じゃない。髪に関する心配はないはずだが、気にし過ぎる癖は直そうと思った。影響が出ると怖いから。
だが、ユニークスキルにレベルがあるのは、そういう世界なのだから受け入れるしかないと思うが、それがモンスターを倒すと上がると言うのなら、上げるしかないだろうと考えた。
出来る事が増えると言うのなら、増やしたかった。『増える』という言葉にも弱かった。
数日間無敵で飲み食い要らず、『♪でもなるべく早めに町を目指してね』なんて言われていたが、これは上手く利用するべきだと思った。
だから目指した。ダンジョンを。
しかも、初級ではなくて中級のダンジョンを。
どうせ同じような距離なら、難易度が高い方がレベルも上がり易いと思ったから。数日間あると言われる『無敵』のうちに。
そんな単純な理由からだった。
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