ハーゲンの逆襲【生え際の型】~カリスマヘアーで最強に至れるかもしれないがそこは目指さない男~ ※本人談あれは薄毛だった

復活のおたけさん

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レベルアップ

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「お。レベルが上がってるじゃないか」

 もう何度階段を降りたのだろうか。4回? これで5回目だっただろうか。あまり考えずにここまで来てしまった。

 やれやれ。少し興奮し過ぎていたようだ。

 途中で何となく体が軽くなったような気がしていた俺は、階段を降りながらステータスの確認をしてみた。走りながらでは集中できないし、モンスターの対処を優先させるのは当たり前だった。


 レベルは8から10に、ユニークスキルのカリスマヘアーは、1から2になっていた。

 ステータスの項目は変わらずに『並』のままだが、体が軽く感じる程には身体能力は上がっているようだ。幸運も『低』のまま。それはいい。良くはないけど、仕方ない。

 これが早いのか普通なのから分からないが、上がってるって事は素直に喜べた。増えていたから。

 カリスマヘアーのレベルが上がった事により、

『生活魔法 開放』と表示されていた。

 種火を着けたり、少量の水を出したり、薄明かりを灯したり、軽く身体を綺麗にしたりする魔法の様だ。


 レベルを上げて行けば、こうやって何かのスキルが開放されて行くという事だろう。

 カリスマヘアーとの関連性は理解できないが、悪いものではない。俺にはとっては便利になって行くのだろうから、まだまだ開放させて行きたいと思った。



 階段を降りると、そこには岩場のフィールドが広がっていた。

 何となくではあるが、これまでとは雰囲気が変わったのが分かる。本来ならど素人で初めてのチャレンジで、しかもたった1人でここまで来るような事はないのかもしれないが、

『数日間無敵で飲み食い要らず』なのだからまだまだ止めるつもりはない。恐らく1日くらいは経っているのかもしれない。だが、数日と言われているのならまだ大丈夫なはず。

 2日でも数日と言えるかもしれないが、最低でも3日はもってくれると信じている。何の根拠もないが。


「おらっ!」

 ドガッ

 レベルが上がって確実に身体能力も上がっている。それをこんな中途半端な所で止めたくない。それが本音だったりする。

 武器も、途中で回収できた棍棒や錆びた剣なんかを使っていたりする。力任せに叩き付ける方法は変わっていないが。


 モンスターも最初に比べれば手応えが有り過ぎるものにはなっていた。

 スライムに始まり、昆虫を大きくしたようなモンスター、そして二足歩行で人型のゴブリンなるものまで登場するようになっていた。


 初めて見た時には何かと思う所があったのだろう。若干の躊躇ためらいを見せていたようだが、無敵期間を無駄にする訳にもいかないからだろう。直ぐに意を決して飛び掛かって行っていた。

 やれば出来る。やらなければ出来ない。何事も。

 独特で嫌~な感触や、罪悪感や背徳感などの感情も湧いたのだろうが、相手がモンスターである事、醜い風貌と虚列な悪臭を放つ存在でもあった事で吹っ切れたと思われる。

 最初の魔石を回収するのには少しも時間が掛かったが、それ以降はこれまで通りの動きを見せていた。


 数が多くなってきた所で所詮は只のゴブリン。多少の攻撃は食らったが、やられたらやり返すの精神で暴れ回った。

 不死でダメージの入らない存在。それが今のスインだ。


 モンスターに恐怖心なるものがあるのかは分からないが、ゴブリンが人型だからかもしれないが、少し戸惑っていたようにも見えたかもしれない。

 これがもう少し下の階層であれば、役付きのゴブリンも居たりして脅威度も増すのだが、そういう意味では助かっていたのはスインの方だったのかもしれない。

 だが、そうではあっても四方から襲い掛かるゴブリンの群れを、たった1人で迎え撃つ青年。大した武器を装備するでもなく、魔法による攻撃があるでもなく、只々手に持った得物で殴り掛かってくる狂った人間。

 そんな感覚だったのかもしれない。


 疲れもなく、1人だから仲間を気にする事もない。だから散々やりたい放題に暴れ回ってもなんとかなった。近くに他の冒険者が居なかった事も良かったのかもしれない。そんな光景を見られていたら、……

 あまり良くない噂が流れてしまう事になったであろうから。


 レベルも上がり、更に身体能力が上がって行った事により、徐々にどころか、直ぐに慣れてしまっていた。これも若さ故。初体験の刺激も恐ろしい。


 そして次へ。会敵即殴打。これの繰り返しだった。


 そんな時だった。『宝箱』なる物を見付けたのは。

 つい、興奮してしまい、流れで勢いに乗ってしまい、鑑定で安全を確認する事もなく、無敵状態なんだから何が仕掛けられてても大丈夫だろう。まだ階層も浅いはずだし。

 なんて軽い気持ちで近付き、そのまま蓋を開けてしまった。

 かぱっ

 ガコン

「っ!!」


 浅はかだった。元おっさん、ショック。反省します。

 そう思った時には既に落とし穴の中。

 中と言っても、延々と続く滑り台のような感覚だけが伝わってくる暗闇の中。風の音と、尻、背中を中心にして滑って行っているのが分かるだけだった。


「やっちまったか。ははは、……」


 冷静に言ったつもりだが、散々、ぎゃーーっ! やら、う、うわああぁぁ~~! やら叫び声倒した後の事だった。

 それ程長いスロープを下って行った。強制的に。

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