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しおりを挟む首のところをちゅうっと吸い上げられ、ローブを下から押し上げていた俺のソレをゆるっと扱かれて変な声が出た。
くっそう、恥ずいって!
「こうして、そなたを気持ちよくさせ……可愛がりたいとずっと思っていた。そなたのこういう可愛い声をたくさん聞きたいと思ってきた」
「うう……っ。や、やめろよお……」
恥ずかしすぎて、全身の細胞がパーンって飛び散ってしまいそうだ。
思わず両手で顔を隠しちまったら、そっとその手をどかされた。
「そなたは何度も訊いていたよな。『自分でいいのか』と」
手の甲に、またキスを落とされる。
「とんでもない。私は、『そなたがいい』のだ。あちらの世界にいたときからずっと。こちらへ来て、そなたの容姿が元に戻ってからもずっと。……他のだれにも、そなたの代わりなどできないさ」
「ク、クリス……」
「でも、そなたはなかなか信じてくれなくて。それがずっともどかしかった」
「ううっ……」
「それを証明してみせるには、これは一番いい方法だ。……そう思わないか?」
なんかもう、わけわかんねえ。
超イケメン皇子が目の前で俺なんかにこんな告白してるとか、夢じゃねえの? わけわかんないのに、じわあっと目のところが危なくなる。
「泣かないでくれ。これからそなたを大いに楽しませてやりたいのに」
「な、泣いてねえっ」
言ったそばから、目尻のそれをじゅっと吸い取られちまった。目尻も心もくすぐったくなる。耳、熱い。
「そなたは私のことばかりそんな風に言うが、こちらだって気が気ではなかった。特に今日みたいな日は」
「……はへ?」
どういう意味だよ。
「昼間、そなたも貰っていただろう? クラスの女子から」
「え? いやそんなもん──」
言いかけて、ハタと気づいた。
そういえば、陽キャの女子から「義理と誕プレ~」っつって、小さいチョコをもらったこと。
「え、まさか。まさか皇子、見てたの……?」
「当たり前だろう」
皇子、ほんのちょっとむくれた感じの声だ。
「え、でもほんとに? マジで??」
だってあの時、こいつの目の前には自分専用の女子の列があれだけつながってたんだぜ? あの大騒ぎの中、しっかり俺のことはチェックしてたとか。マジすげえ。女の子たちへの対応だって、ひとりひとり結構丁寧にしてたみたいなのに。ってか目がいくつあるんだよ。
まあ、もと騎士団で剣の腕も凄かった人だから、そのぐらいの芸当はなんてことないのかもしんねえけど。それでもびっくりだ。
「あ、あんなの超『義理』だって。本人が堂々と宣言してたろ? めっちゃ義理。純粋な義理。気持ちなんてミリも籠ってねーやつだから!」
こんなん、言わせねーでほしい。自分で言ってて情けなくなるわ。
「いや、それはないだろう」
「えええ?」
「本当になんとも思っていない相手なら、まったく何もしないで無視するのが普通だと思うぞ」
「あ、いや……。そりゃまあそうかもしんねえけど」
「そら見ろ」
「『そら見ろ』って。いやちげえ! あれは単純に友チョコどまりだって。あいつ、彼氏だっているし。ほら、俺、野球部のキャプテンで、この間ついに甲子園まで行ったじゃん? それでちょっと、ほんのちょび~っと露出が増えてメジャーになっちゃったわけで──」
「心配だ。まことに心配だ」
「いやいやいや。皇子~??」
なんだその大真面目な悩み顔。
ここまで来たらもうギャグかと思うわ。
そして、なんだその過剰な嫉妬。
……そう。これ、嫉妬だよな?
え、マジ?
この人、俺相手に嫉妬なんかすんの……??
あんだけ目の前に女の子の列つくっときながら、てめえは俺なんかがもらったあの義理チョコのことでもやもやしてたってのか。なんかちょっと可愛い。
「ともかく。これ以上ほかの者が、そなたの魅力に気づいてくれないことを心から願っている」
「いやいやいや! だれも一生気づかねえって!」
大げさにもほどがあるわ。
「あんなの、『無視すんのもビミョーだし』ぐらいなノリだって。心配する必要なんざ、これっぽっちもねえって!」
言いながら、むず痒いみたいなウキウキするみたいな、変な感じが胸にいっぱいになってくる。
皇子が、嫉妬。
あんな程度のことで。
こんな俺に、本気で嫉妬とか──。
ダメだ、口もとが緩んじゃう。
と、皇子が軽くにらんできた。
「こら。なにをニヤニヤしてるんだ」
「し、してねえって」
必死で頬を緊張させつつ、まっすぐに皇子を見上げる。でもすぐ「ぷっ」と吹き出しちゃった。
「こら、健人!」
「あっははは! ごめんごめんて!……あうっ!?」
思わず飛び上がった。
突然、腰のあたりでローブの布を持ち上げていた俺のモノを、皇子の手がぎゅっとつかんできたんだ。
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