72 / 191
第五章 鷹の男
5 ※
しおりを挟むそのまま店の隠し扉を使って、ベータはアルファをそのずっと階下にある隠し部屋へと連れて行った。
ベータの隠れ家は様々な星域に点在しており、アルファでさえもその全貌は分からない。しかしどこにもここのようなバーや喫茶店などの窓口が備えられており、その近くに普通に寝起きのできる部屋が用意されているのだった。
「ん、……ん」
ほとんどものも言わずにベッドのある部屋に連れ込まれ、アルファはそのまま男に抱きすくめられた。扉を背にしてしばらく口づけを交わしたあとは、ゆっくりと着ているものを脱がされながらベッドに近づいていく。
本人がそう保証したとおり、彼の手は優しくて、アルファに快感以外のものを与えることはなかった。手馴れた様子でアルファの着ていた普通のダークスーツを脱がせていく。頬に、顎に、首筋にと唇を触れさせていきながら上着を脱がせ、ネクタイをほどき、スラックスのベルトをすとんと落とす。
アルファは男の背中や後頭部に腕を回して、その優しい愛撫にただ酔った。
火の灯った体はあっけなく暴走をはじめ、下腹に燃えるような熱がどんどん集まってゆく。
ベッドに沈められるころにはすでに、アルファは半裸の状態にされていた。ワイシャツの前は全部はだけられ、スラックスの前はくつろげられている。
男はアルファの足の間に腰を入れ、ゆっくりとあたたかなキスを顔から首、胸にとほどこしていく。耳朶を舐められ、唇で食まれながら胸の突起をくりくりと指先で弄ばれると、腰の中のせつないものが一気に加速した。
「あ、……あ、あ」
たまらなくてもぞもぞと腰を揺らせば、胸の飾りをぺろぺろと舐めていた男がくすりと笑った。硬くなったその部分にするりと手を差し入れられ、下着の上から触れられる。
「っひゃ……!」
変な声が出てしまって、慌てて手で自分の口を抑えこんだ。しかし、布の上からゆっくり摩られ、指先で巧みにくすぐられると、喉奥からひくひくと、恥ずかしい声が漏れ出した。腰が勝手にがくがくと震えてしまう。
我慢しようとすればするほど、その分だけ目尻に涙がたまっていく。男はそれを見下ろしながら、アルファが快感に震える姿をじっくりと楽しむ様子だった。男の手の動きに合わせて、無意識に腰を振っている自分に気づき、アルファの脳の中心がかっと焼けつくように熱くなる。
「ふぐ……ッ、や、いや――」
恥ずかしい。恥ずかしくてたまらないのに、やめてほしいとは思わない。口元をおさえこんだまま横を向いていたら、男はまた慣れた様子でアルファの足からスラックスを引き抜いた。
その手が、唇が、アルファの感じやすい部分を探して肌の上をなぞっていく。
「んっ……ん、んっ……」
「なかなか、感じやすくていやらしい体をお持ちだ」
アルファの乳首をその唾液でほとんどふやかしてしまいながら、ベータが笑う。そこは桜色に変えられて濡れ光り、すでにつんと空を向いて立ち上がってしまっている。
「こんな体を軍服に包んで、毎晩さぞや色々ともてあましておいでだったんだろう。気の毒に」
「……!」
思わず見上げて睨んだら、意外にも男の瞳の中でなにか熱いものが揺らめいていて、アルファは言葉を失った。
が、「どうして」と考える暇もなかった。
「ひゃあっ……! あ!」
ベータがするりとアルファの下着の中に手を忍びこませ、そこをやわやわと撫で上げ始めたからだ。明らかにアルファに聞かせるように、早くもその先端から零れ始めていたものをくちくちと音を立てて指先で弄ぶ。
「はっ……あ」
腰の奥から、堪えられないような衝撃が何度も襲ってくる。それが彼の指であると思うだけでも、アルファは必死に射精感を耐えなくてはならなかった。
指の動きを止めないまま、そうっと耳朶に囁かれる。
「……訊いてもいいか? 自分でここを触ったことは」
「……っ」
かあっと、全身に羞恥が走りぬけた。
正直なところ、何もしたことはないと言えば嘘になった。
特に、この男に出会ってからは。
男はこちらの表情から何事かを読み取ったように、笑みを含んだ声でまた訊いた。
「後ろもか? 自分で何かを挿れてみたことは」
「…………」
「触れるとき、誰のことを考えていた」
「…………」
何も答えずに唇を噛みしめて彼を睨みつけたら、ベータはあっさりと諦めたらしかった。
「悪かった。『客』に訊くことじゃなかったな」
(……!)
その単語を聞いた瞬間、体が竦んだ。
「客」。
いきなり耳朶に飛び込んできたその言葉は、そのままアルファの胸を冷たい槍で突きとおした。
0
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
窓のない部屋の、陽だまりみたいな君
MisakiNonagase
BL
都心の高層ビル、その「内臓」とも言える地下一階のメール室。
そこで働く山﨑智之は、目立たず、期待されず、淡々と郵便物を捌く「透明人間」のような毎日を愛していた。自分は低スペックで、華やかな地上には居場所がない。そう、諦めていた。
そんな彼の静寂を破ったのは、二十二階の住人、若きエース・風巻隼人だった。
完璧なルックス、圧倒的な成果、羨望の眼差しを一身に浴びる彼が、なぜか地下のメール室に足繁く通い始める。
「五分だけ、ここにいさせてくれないか」
一通の郵便物から始まった、五分間だけの秘密の共有。
次第に剥き出しになっていく隼人の孤独と、それを無自覚に包み込んでしまう智之の温度。
住む世界が違う二人が、窓のない部屋で見つけたのは、名前のつかない「救済」だった。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
溺愛極道と逃げたがりのウサギ
イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。
想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。
悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。
※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。
二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる