【改訂版】Two Moons~砂に咲く花~

るなかふぇ

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第二部 エスペローサ編 第四章 陰謀

4 腹心(2)

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「ガルフさん、今日はお加減いかがですか?」

 患者の一人に声を掛けながらその寝台の隣に立って、シュウは包帯を取り替える準備を始めた。護衛の二人は少し離れて様子を見ている。

「また包帯を取り替えますので、ちょっと辛抱してくださいね?」

 寝台の上にいる、体じゅう包帯だらけの患者に優しく声を掛ける。男は「う、うう」と唸るような声を出して少しだけ頷いている。
 ガルフは重傷患者の一人で、少し前に酷い熱傷で運ばれてきた兵士だった。兵舎の中のストーブの近くで洗濯物を乾かそうとして、誤って自分の衣服に火が燃え移り、火だるまになったのだと聞いている。想像するだけでもぞっとするような悲惨な事故だ。どんなにか熱くて痛かっただろうかと考えるだけでも胸が痛くなる。
 いまの彼は全身が焼けただれて、顔もよく分からない状態だった。体じゅうに軟膏を塗られて包帯でぐるぐる巻きにされている。ここへ運び込まれた当初は酷い痛みと発熱のために夜も眠ることもできず、ずっと呻き声を上げ続けていたものだ。

 シュウはこのところ、毎日少しずつ折を見ては彼の体に触れるようにしていた。彼が眠っている隙を見つけてはその体に触れてきたのだ。ガルフには本当に申し訳なかったし、シュウとてそうしたいのは山々だったけれども、彼をあまりにも劇的に治療してしまうわけにはいかなかった。どうしても。
 今日のシュウは、またもう少し彼に触れることができれば、もっと普通に会話もできるようになるのではないかと内心期待していた。今まではこのひどい傷のために、まともな意志の疎通がほとんどできていなかったからである。

「すみません。ちょっとだけ、体を横にしますね……」

 包帯を解いて薬を塗りなおし、また清潔な包帯を巻きなおす。
 シュウが甲斐甲斐しく患者の世話をしているところを、クリスとホッパーは周囲を警戒しつつ少し離れたところで見守っていた。

 ──そして。
 その時なぜかクリスの目が、一瞬ぎらりと厳しく光った。


 ◇


 その夜。

「陛下。お願いがあるのですが」

 クリスはまたナリウスの執務室を訪れていた。最近ではこの部屋でも、必ず兜は脱いでいる。ナリウスは執務机の向こうでいつものようにゆったりと書類を眺めていた。もちろん人払い済みである。

「そなたはまこと、『お願い』の多い男だな」ナリウスが目を上げて、面白げに微笑した。「で、今度は何だ?」

 クリスは一礼し、静かに、かつ端的に国王に願い出た。

「使える部下を、もう少し増やして頂きたく」

 ナリウスの瞳がきらりと光って細められた。

「……わかったか」
「はい」

 クリスが頷く。
 もちろん、シュウに密かに手紙を渡していた人物を特定した、ということだ。

「しばらくは泳がせて様子を見ます。そろそろ、我々二人だけでは手が足りませぬゆえ」

 ナリウスがゆるやかに微笑んだ。

「承知した。人選は任せる。好きに動いてみよ」
「ありがとうございます」

 クリスはそれだけ言うと、素早く踵を返して執務室を後にした。

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