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「戻るぞ」
コーディーさまがボーっと立っている里奈に声をかけた。
帰りは里奈の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれた。
「あっ、あれは」
帰りは違う道を通ったらしくて、数人の画家が壁に絵を描いていた。
「おい、ちょっと待て」
さっきまでの沈んだ気持ちをぬぎ払うように、壁画を描いている作業を見入った。
木製タワー式の足場に画家が座って壁に絵を描いていた。見習いの少年が梯子に上り作業道具を渡したりしている。
「あれは……」
「ああ、均衡を司る女神の絵だな」
この世界にはたくさんの神々がいる。均衡を司る女神の半分の顔は悪魔のように恐ろしくて残りの半分の顔は天使のいうな無垢な綺麗な顔をしている。体つきも半分は女性の膨らみのカーブがあるが、後はスレンダーな体系だった。左右の手には光と闇を握っていた。
均衡を司る女神の周りは魔獣や人や国が描かれている。戦争と平和の風景。荒地と穀物地帯。王国の街と貧しい農村。
「えっ! この生き物はなんですか?」
里奈の目に、もう二度とお目にかからないで結構と勝手に絶縁した羽うさぎの絵があった。
「ピコピコだ。Sランクの魔獣だ。小さい体系をしているが強い魔獣だ。安心しろ、これを見た者はいない。伝説の魔獣だ」
「……」
(はい、ちゃっかり伝説のピコピコちゃんに異世界トリップで最初に会ったよ。これって、私って、滅茶苦茶ツイているの? 滅茶苦茶ツイてないってこと?)
羽うさぎピコピコの後ろに人間の女性がいた。ピコピコは熊のような魔物に火を吐いている。
「この絵は描いた者の想像画だ。
おまえは絵が好きなのか?」
「えっ? あっ、はい。私もいつか画家になりたいです」
じっくり絵に見入っていたら、コーディーが尋ねた。はっきり言って、さっきまでひどい態度をとっていたコーディーにこんな質問をされて心外だった。
「……そうか。レイーシャさまともう会うな。おまえのためにもよくない。
もし誰かに養って欲しいなら、私がなってもいい。私は子爵の次男だが小さいが土地も屋敷もある。そして近衛兵だ。おまえ一人を妾として一生養うことができる。毎日、好きな絵を描いて生活すればいい。
だから、レイーシャさまなど高望みせずに私の妾になれ」
「っ!!」
(ちょっと、なにこの人言っているの? それとも私の聞き間違いなんだろうか?
どこをどうしたら、絵の話をしていたら、急に妾の話になるの?)
それにさっき、あんなに嫌な態度をしていた相手にこんな話をするなど信じられない。
異世界だから、人の常識や思考が異常なのか……。
「もし私の妾になるなら、メリーナさまに頼み、壁画を描けるように頼んでもいいぞ」
「私、壁画は、どんな風に描くのか勉強したいです。だからあの画家のお手伝いをさせてもらいたいです。
あの、私は妾などなりません」
レイーシャさまは、里奈を妻にしたいと言ってくれた。
「分かった。ではレイーシャさまとはなにもないんだな?」
「えっ?」
なんでそんな結論に出るのだろうか……異世界人は、摩訶不思議な人物なのだろうか。
「よく聞くんだ。レイーシャさまともう話すな。それがおまえのためだ。分かったな!」
返事ができずに下を向く。
「よく私の言ったことを考えるんだ。レイーシャさまはメリーナさまのものだ」
最後の言葉で全部理解した。コーディーさまはメリーナさまのために、里奈がレイーシャさまと仲良くなるのが嫌なんだ。だから里奈を遠ざけようとして、自分の妾になるように言ったんだ。
「行くぞ」
「あっ、あの、またここに来て絵を見てもいいですか?」
「私と一緒ならいい。だが一人でここに来るな。いいな」
コーディーさまは帰り道は里奈の徒歩に合わせてゆっくり歩いてくれた。どうして行きはあんなに嫌な奴だったんだろうと疑問が残ったままだった。
コーディーさまがボーっと立っている里奈に声をかけた。
帰りは里奈の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれた。
「あっ、あれは」
帰りは違う道を通ったらしくて、数人の画家が壁に絵を描いていた。
「おい、ちょっと待て」
さっきまでの沈んだ気持ちをぬぎ払うように、壁画を描いている作業を見入った。
木製タワー式の足場に画家が座って壁に絵を描いていた。見習いの少年が梯子に上り作業道具を渡したりしている。
「あれは……」
「ああ、均衡を司る女神の絵だな」
この世界にはたくさんの神々がいる。均衡を司る女神の半分の顔は悪魔のように恐ろしくて残りの半分の顔は天使のいうな無垢な綺麗な顔をしている。体つきも半分は女性の膨らみのカーブがあるが、後はスレンダーな体系だった。左右の手には光と闇を握っていた。
均衡を司る女神の周りは魔獣や人や国が描かれている。戦争と平和の風景。荒地と穀物地帯。王国の街と貧しい農村。
「えっ! この生き物はなんですか?」
里奈の目に、もう二度とお目にかからないで結構と勝手に絶縁した羽うさぎの絵があった。
「ピコピコだ。Sランクの魔獣だ。小さい体系をしているが強い魔獣だ。安心しろ、これを見た者はいない。伝説の魔獣だ」
「……」
(はい、ちゃっかり伝説のピコピコちゃんに異世界トリップで最初に会ったよ。これって、私って、滅茶苦茶ツイているの? 滅茶苦茶ツイてないってこと?)
羽うさぎピコピコの後ろに人間の女性がいた。ピコピコは熊のような魔物に火を吐いている。
「この絵は描いた者の想像画だ。
おまえは絵が好きなのか?」
「えっ? あっ、はい。私もいつか画家になりたいです」
じっくり絵に見入っていたら、コーディーが尋ねた。はっきり言って、さっきまでひどい態度をとっていたコーディーにこんな質問をされて心外だった。
「……そうか。レイーシャさまともう会うな。おまえのためにもよくない。
もし誰かに養って欲しいなら、私がなってもいい。私は子爵の次男だが小さいが土地も屋敷もある。そして近衛兵だ。おまえ一人を妾として一生養うことができる。毎日、好きな絵を描いて生活すればいい。
だから、レイーシャさまなど高望みせずに私の妾になれ」
「っ!!」
(ちょっと、なにこの人言っているの? それとも私の聞き間違いなんだろうか?
どこをどうしたら、絵の話をしていたら、急に妾の話になるの?)
それにさっき、あんなに嫌な態度をしていた相手にこんな話をするなど信じられない。
異世界だから、人の常識や思考が異常なのか……。
「もし私の妾になるなら、メリーナさまに頼み、壁画を描けるように頼んでもいいぞ」
「私、壁画は、どんな風に描くのか勉強したいです。だからあの画家のお手伝いをさせてもらいたいです。
あの、私は妾などなりません」
レイーシャさまは、里奈を妻にしたいと言ってくれた。
「分かった。ではレイーシャさまとはなにもないんだな?」
「えっ?」
なんでそんな結論に出るのだろうか……異世界人は、摩訶不思議な人物なのだろうか。
「よく聞くんだ。レイーシャさまともう話すな。それがおまえのためだ。分かったな!」
返事ができずに下を向く。
「よく私の言ったことを考えるんだ。レイーシャさまはメリーナさまのものだ」
最後の言葉で全部理解した。コーディーさまはメリーナさまのために、里奈がレイーシャさまと仲良くなるのが嫌なんだ。だから里奈を遠ざけようとして、自分の妾になるように言ったんだ。
「行くぞ」
「あっ、あの、またここに来て絵を見てもいいですか?」
「私と一緒ならいい。だが一人でここに来るな。いいな」
コーディーさまは帰り道は里奈の徒歩に合わせてゆっくり歩いてくれた。どうして行きはあんなに嫌な奴だったんだろうと疑問が残ったままだった。
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