春画を売ったら王子たちに食べられた

四季

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 里奈は無償にハンナお母さんやミイシャに会いたかった。教会を出た後に、洗濯場に行った。

「ミイシャ」

 ミイシャは洗濯物を干した後で、殻の洗濯かごを持っていた。

「……」

 ミイシャは無言で近づいて来る里奈を無表情見ていた。

「ミイシャ? どうしたの?」

 ミイシャの様子が変で不安になり挨拶より先に口から出た。

「……リッ、リーナのせいよ! リーナのせいで私たちは、私たち洗濯場の下女たちは嫌がらせを受けているのよ!」

「えっ!?」

 ミイシャは一体なにを言っているの!?

「リーナがどこの誰の子どもを妊娠して、それをレイーシャさまの子どもと嘘をついて王族に取り入ったから! リーナのせいで、私たちはアバズレの非人って意地悪されているのよ!
 とくに、お可哀想なメリーナさまをお慕いする人たちのせいで、私たちの住む寮の窓ガラスが割れて怪我をした人もいるのよ!」

「どうして……」

 理由を聞いてもミイシャになんて言っていいか分からずに、そんな言葉しか口からしか出なかった。

「どうしてって、どうしてか分かっているでしょ! 私、あれほどリーナに注意したでしょ! なのに、リーナは陛下の愛人になって綺麗なドレスを着て! で、私たちは、リーナのせいで嫌がらせを毎日受けているのよ!

 もう私たちに関わらないで! とっとと私たちの前から消えて!」

「ハンナお母さんは!? ハンナお母さんはどこにいるの!? ねえ、お願い教えて」

「うっ、ハンナお母さんは二日前に食堂の下男たちの暴行を受けて部屋で寝てる……。もう私たちのことはほっといていて。ハンナお母さんにも会わないで」

 最後までミイシャの言葉を聞かずに走った。

「リーナーー」

 ミイシャが里奈を引き止めようとした。コーディーさまは里奈に走らないように、と言いながら後ろからついてくる。
 里奈は逃げ足だけ早いから、二人の言葉を聞かずに走った。

「ハンナお母さん!」

 ノックもせずに部屋に入った。

「コーディーさまは来ないで!」

 部屋の中までコーディーさまが入ろうとしたから大声をあげる。彼は里奈の意志を尊重してくれて部屋の入り口で待機していてくれた。でも扉は開いたままだった。

「リーナ?」

 いつものようにハンナお母さんの側に寄って抱きつきたかったけれど、ミイシャみたいに拒否されたらと思って足がすくんだ。

「どうしたの? お母さんに抱擁をしてくれないのかい?」

「ハンナお母さん……うっ、うっ、うっ」

 上半身を起こして里奈を待っているハンナお母さんの胸に抱きついた途端に堰が切ったようにん泣きむせぶ。

「リーナ、会いたかったよ」

「……うん」

 何度も里奈の髪の毛を梳かすように撫でて、落ち着くの待ってくれていた。

「赤ちゃんができたんだってね。よかったわ。おめでとう。私はおばあちゃんになるのね。
 お願い、お母さんにはその子の父親が誰か教えてもらえない?」

 ハンナお母さんには本当のことを言いたかった。でもジョンリー陛下のシーオンさまが父親と言うことをしばらく黙っているように言われていたから言えない。

「……赤ちゃんの父親はレイーシャさまなのかい?」

「……違う」

 里奈が父親が誰か言わないと気づいたようで、ハンナお母さんが言葉を変えて聞いた。

「そう。ねえ、リーナ、あなたはその人と一緒になるの? なれるの? 妻にしてもらえるの?」

 どの質問にも頭をふった。シーオンさまは里奈を妻にすると言ってくれた。でも実際には身分差と言う越えられない壁がある。なにより里奈ももう軟禁生活がこれからずっと続くかもしれないと分かっていて、シーオンさまと結婚する勇気がなかった。
 レイーシャさまにしても、みんなに愛されているメリーナさまを悲しませてまで、一緒にいる覚悟ができない。初恋は決して実らない。
 なにより最初に裏切ったのは里奈なんだ。

「そう。リーナ、あるお方が、私とリーナが田舎で生活をするための資金援助をしてくれるとおっしゃってくださったの。
 私の生まれた村に戻って、一緒に暮らしましょう?」

「赤ちゃん、魔力がいるの……」

 もっといろいろなことを聞きたかったけれど、魔力問題が一番重要だった。赤ちゃんが魔力不足になると里奈の命も危なくなる。

「ええ、その方がきちんと魔力回復薬を提供してくださるそうよ。リーナはなにも心配しなくていい生活を保証してくるそうよ。お願い、うんと言って」

 ハンナお母さんの顔は青く痣ができていて、暴行された時についた傷があっちこっちあって痛々しい。

「……うん」

「よ、よかった」

 ハンナお母さんが里奈の小さな体を抱きしめた。ハンナお母さんは里奈の返事を聞いて安心したようで声を出さずに泣いていた。

 しばらくして落ち着いてから、小声で今夜こっそりお城を出る手順を教えてくれた。
 二人はずっと小声で話していたからコーディーさまにはなにも聞こえていないはずだ。
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