ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

文字の大きさ
33 / 203

執着のはじまり 3

しおりを挟む
タイトルでお気づきでしょうが、前中後編で終わりませんでした(汗)
ラッキースケベまで辿り着けずすみません。
明日まで悠臣視点になります。楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *



遥くんが用意してくれていたケーキはチーズケーキのようだ。
どうやら手作りらしい。
いつの間に作ってくれていたのかわからないが、目の前にケーキを置かれて碧斗もりんくんも嬉しそうだ。

私の前にもさっとケーキを用意してくれるが。あまりケーキの類は得意ではない私でさえも美味しそうだと思ってしまうほど魅力的なケーキだった。

ふとみれば碧斗の前にだけジュースがある。
さっき病院ではジュースを飲んでいたしアレルギーで飲めないということはないだろう。

遥くんに尋ねればあれは碧斗のものだからという言葉が返ってきた。

雇い主の家の冷蔵庫に入っているものを無断で使わないのは家事代行として来ている上では当然の意識だろうが、同年齢の子どもにお茶で我慢させるのは私としても本意ではない。

「ここで暮らしている間は、碧斗とりんくんは同じように扱って欲しい。そうでないと碧斗も気にしてしまうよ」

ある程度の線引きは必要だが、ここはそうしてほしい。
遥くんが断るよりも先にジュースを取りに行き、りんくんに手渡した。
碧斗もりんくんと同じジュースになり喜んでいるようだ。

「おじちゃん、ありがとー」

素直な感謝に思わず笑顔が漏れた。
私がおじちゃんと呼ばれる日が来るとはな。
久瀬くんが聞いたら一緒に笑ってくれそうだ。

おやつを食べ始めたがりんくんはもはやフォークを持とうともせず、口を開けて待っている。
そこに碧斗が嬉しそうにケーキを口に運ぶ。

なんとも楽しそうだ……羨ましい。

二人の楽しげな様子をつい見つめながら、私もケーキを口に入れた。

んっ? これはさつまいもか?
砂糖のような甘味は一切感じられない。
このさつまいもの甘みだけの素朴な味わいは、まさに子どもたちのおやつにはぴったりな上に甘みが苦手な私も満足させてくれる。

これなら毎日でも食べたい。そう思わせてくれるケーキだった。

満足なままにおやつの時間を終えると、子どもたちは勉強したいと騒ぎ出した。
碧斗の口からそんな言葉が出てきたとこに驚くが、これもりんくんのおかげなのだろうか。

「あおとくんが、りんのおなまえかいてくれるってー! だから、おねがーい!」

りんくんのその言葉に驚いた。
碧斗はまだ字が書けないはずなのに、どういうことだろう?

気になって尋ねれば、自分の名前は書けるようになっていると教えてくれた。
まさか、教えてもないのに?

驚きを隠せないまま、碧斗の様子を見ていると真剣な表情で自分の名前を書き始めた。
まだ完璧とは言えないが確かにあおとと読める字がそこにある。
りんくんからも褒められて嬉しそうだ。

りんとひらがなで書くように指示されて、名前を書いてやると碧斗はそれを見ながら字を書き始めた。
それを見守るりんくんの優しげな表情に遥くんの表情が重なって思わず見入ってしまう。

上手に書けるようになった碧斗はりんくん誘われるがまま、他の文字も勉強しようと二人でサークルに行ってしまった。
後を追いかけて二人をサークルに入れてやり、遥くんの元に戻る。

この機会にりんくんの漢字を尋ねると『琳』だと教えてくれた。
これは光り輝く美しい宝石が触れ合って鳴る澄んだ音という意味だったな。

碧斗の碧も美しい宝石という意味を持つ。
こうして出会った二人が同じ意味の名前だというのも運命的なものを感じる。

――悠臣くん。すごくかっこいい名前ですね。僕、遥なので名前が似てて嬉しいです。

初日に遥くんからそう言われたことを思い出す。
これもまた運命ということなのか?

なぜかそんな感情が湧き上がってきて、遥くんを見るとドキドキしてしまう。

「西条さん? どうかされましたか?」

「いや、部屋で少し仕事をしてくる」

自分でもわかっていない感情を知られたくなくて、私は逃げるように自室に飛び込んだ。

部屋に入ったものの何もやることはない。
モニターで遥くんの動向を見つめながら、自分の感情を考えるだけ。

彼の手際の良さに感心したり、味見をする彼の口元に注目したり、ぼーっと映像を見ていると、急に遥くんの姿が消えたと思ったら、突然私の部屋の扉を叩く音が聞こえた。

慌ててモニターを消し、扉に向かうとほんのりと頬を染めた遥くんが目の前にいた。
ずっと遥くんを見ていたからか、思わず可愛いと言いかけて必死に口を噤んだ。

彼はそんな私の様子に気づくことなく、私を見上げてゆっくりと口を開いた。

「お邪魔して、すみません。あの、夕食とお風呂どちらを先にするか、聞くのを忘れてしまって……。先にご飯にしますか? それともお風呂に入ります?」

そのセリフを聞いた途端、

――ご飯にします? お風呂にします? それとも、ぼく?

そんな妄想が頭の中に浮かんだ。

つい、遥くんと言いそうになって見つめていると、不思議そうな顔で名前を呼ばれて我に返った。
遥くんがそんなことを言うはずがないのに、何を考えているんだ。

碧斗と先に風呂に入ると告げて、一度扉を閉めた。

遥くんに対してなにを考えているんだろうと自己嫌悪に陥ると共に、ズボンの下で昂りかけているソレを早く鎮めなければという焦りで自分でも混乱してしまっていた。

しばらく経ってようやく落ち着きを取り戻し、部屋から出るとサークルの前で大騒ぎしている声が聞こえた。
子どもの扱いが上手な遥くんにしては珍しい。何かあったのかと思って近づけば、碧斗が琳くんと一緒に風呂に入りたいと駄々を捏ねていた。

流石にそれはいいよとは言えない。
どうするかと思っていると、仕方ないとでも言うように遥くんが口を開いた。

「わかった、じゃあご飯食べ終わってから僕と三人で入ろう――」

何?
遥くんが碧斗と琳くんと三人で入る?
琳くんと入るのはともかく、碧斗も一緒に? 裸で? 
そんなこと許せるはずがないだろう!

そう思った瞬間、

「それはダメだ!」

と叫んでしまっていた。

しまった! と思い、慌てて誤魔化した。

私が二人を入れればそれで解決だ。

遥くんに断られる前に、問題ないと言い張って二人を連れて風呂場に向かった。

「あの、それじゃあ琳の身体を洗ったら声をかけてください。脱衣所まで琳を受け取りに来ます。碧斗くんのときも声をかけてくれたら受け取りに行きますよ。着替えやその他は僕がしますので、その後、少しのんびりと入ってください」

背後から遥くんにそんな言葉をかけられたが、脱衣所に遥くんが来る?
そう思うだけで、少し興奮してしまう私がいた。
しおりを挟む
感想 527

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

処理中です...