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不安にさせないために…… 3
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「琳くんの実父がなぜ琳くんを取り返そうとしたかだが、理由がわかったよ」
その言葉に遥くんは一気に表情を変え狼狽した。
琳くんを奪われることに心から恐怖を感じているのだろう。
不安な声をあげる遥くんの背中を優しく摩り落ち着かせた。
本当はこのことを話そうかどうか迷っていた。
奴が琳くんを狙う理由を遥くんに知らせて怖がらせたくないという気持ちもあった。
今のように不安にさせてしまうのがわかっていたからだ。
だが、奴の意図を知らずにもし遥くんが子どもたちを連れて外に出るような事態に陥ったら?
あれだけ跡取りに執着している奴だ。もしかしたら、どこかからか嗅ぎつけて遥くんと琳くんを襲うかもしれない。
子ども二人連れていたら逃げるのも難しいだろうし、遥くんのことだ。
碧斗と琳くんを必死に守ろうとして自分が犠牲になるのを厭わないだろう。
そんなことは絶対にさせられない。
この家の中にいれば絶対に安心なのだから、奴が狙う理由を教えてでもここから出したくない。
自分の子どもを持つことが叶わなくなった奴に優しい遥くんが決して同情したりしないように、私は言葉を選びながら理由を告げた。
奴が病気を患い、子どもを持てない身体になったこと。
再婚した相手が産んだ子どもは奴の子どもではなかったこと。
そしてそれに伴い、あの家の、あの男の血を受け継ぐ子どもが琳くんだけになったこと。
それを話すと、遥くんはみるみるうちに怒りの表情を見せた。
無理もない。
妹さんは不貞を疑われ検査をうけさせられ、琳くんが奴の実子だと結果が出たにも関わらず、家柄が釣り合わないという理由だけでボロ雑巾のように捨てられたのだから。そんなことをしておきながら、今更琳くんが欲しいだなんて自己中心的にも程がある。
怒りに震えながら子どもたちを起こさないように我慢している遥くんの手が震えている。
その手にそっと自分の手を重ね、大丈夫だと声をかけた。
弁護士に動いてもらっているから安心して欲しいと告げると遥くんは小さく頷いた。
そして一番守って欲しいことをはっきりと伝えた。
「人間追い詰められたら何をしでかすかわからない。だから琳くんの病院に行く日までは絶対に外に出ないでくれ。それだけを約束してほしい」
これだけが心配なんだ。
遥くんが私を信頼して頷いてくれるのがたまらなく嬉しくて、彼の頭をそっと撫でた。
不安な気持ちを少しでも楽にしたくて、彼をそっと抱き寄せた。
「遥くんと琳くんは私が必ず守るから」
これは私の誓いだ。これからの私たち家族のためにもこの誓いは絶対に守ってみせる。
遥くんの顔がほんのり赤くなっている気がして、名前を呼びかけるとゆっくりと私を見上げようとする。
その瞬間、碧斗と琳くんが目が覚めたと遥くんを呼ぶ声が耳に飛び込んできた。
遥くんに僅かだが私を意識しているような節が見えたのだが、タイミングが悪い。
だが子どもが呼んでいるのを無視するわけにはいかないな。
「二人が呼んでる。行ってやって」
声をかけて遥くんを見送った。
サークルの中で三人の声が聞こえるのを微笑ましく思いながらも、ほんの少しの寂しさを感じつつ朝食に箸をつけた。
カーテンが開き、遥くんと子どもたちの可愛い会話がうっすらと聞こえてくる。
それにしても近づくと本当に良い匂いがする。
あのシーツについていたのと同じ匂い。
やはりあれが遥くんの体臭なのだろう。
同じ男とは思えないほどだ。
遥くんの匂いの余韻に浸っていると、
「だっこしてたー!」
「だっこしてたー!!」
朝から碧斗と琳くんの騒ぐ声が聞こえる。
何事かと思いつつ食事を終え、食器を流しに持っていくとお弁当が作りかけになっているのが見えた。
私が一緒に座って欲しいと言ったから作業が途中になっていたようだ。
私が子どもたちの世話をする間に弁当を仕上げてもらおうと三人に近づくと、遥くんがしゃがみ込んで絵本を眺めているのが見える。
「遥くん? どうした?」
私の問いかけに遥くんは飛び上がらん勢いで身体をびくりとさせ絵本を閉じた。
「い、いえ。何でもないです。すみません、昨日は運んでもらってしまって……」
なんだ、その話か。その間もずっと碧斗と琳くんが抱っこ、抱っこと騒いでいたからなんとなく察しがついた。
きっと寝てしまった遥くんを私が抱きかかえていたことを話したんだろう。
「ゆっくり休んでもらうつもりでマッサージをしたんだから気にしないでいい」
気遣わせないようにそう言ったのだが、遥くんはじっと私の顔を意味深に見つめてくる。
遥くんにそんなに見つめられるとドキドキしてしまう。
気になって声をかければ、誤魔化すように碧斗たちをトイレに連れて行こうとする。
一体、私が聞いていなかった間に何があったんだろう?
後で会社でこの辺りの様子を映像で確認しておくか。
そろそろ仕事に出かけなければいけない。
遥くんには弁当を仕上げてもらうことにして、私は二人をトイレに連れて行くことにした。
二人で子育ての時間なのだから気にすることはない。
二人を順番にトイレをさせて、碧斗の選んだ通りに二人分の着替えをさせるともう出勤の時間になっていた。
「ぱぱー、いってらっしゃいするー!!」
「りんも、ぱぱにいってらっしゃいするー!! はるかちゃんもはやくー!!」
琳くんが遥くんを誘ってくれて、みんなに見送りされる。
それがたまらなく嬉しい
遥くんがブラシをかけたジャケットを羽織らせてくれる。それもまるで新婚のように感じられて楽しい。
手作りのお弁当をもらっていると、碧斗が興味津々な様子で尋ねてきた。
これが遥くんの手作り弁当だと告げると即座に羨ましそうな声をあげ、遥くんにおねだりをする。
子どもというのは素直にお願い事ができて本当に羨ましい。
碧斗は遥くんとの弁当の約束を取り付けるとさっさと琳くんの手を取ってリビングに戻ってしまった。
「見送りも遥くんのお弁当には負けるな」
言葉ではそう言いつつも、遥くんと二人っきりになれるのは嬉しくて仕方がない。
笑顔で行ってくると告げると、この上ない笑顔を向けられる。
「行ってらっしゃい。気をつけて」
夫夫の見送りのようなそれに喜びつつ、私は仕事に向かった。
その言葉に遥くんは一気に表情を変え狼狽した。
琳くんを奪われることに心から恐怖を感じているのだろう。
不安な声をあげる遥くんの背中を優しく摩り落ち着かせた。
本当はこのことを話そうかどうか迷っていた。
奴が琳くんを狙う理由を遥くんに知らせて怖がらせたくないという気持ちもあった。
今のように不安にさせてしまうのがわかっていたからだ。
だが、奴の意図を知らずにもし遥くんが子どもたちを連れて外に出るような事態に陥ったら?
あれだけ跡取りに執着している奴だ。もしかしたら、どこかからか嗅ぎつけて遥くんと琳くんを襲うかもしれない。
子ども二人連れていたら逃げるのも難しいだろうし、遥くんのことだ。
碧斗と琳くんを必死に守ろうとして自分が犠牲になるのを厭わないだろう。
そんなことは絶対にさせられない。
この家の中にいれば絶対に安心なのだから、奴が狙う理由を教えてでもここから出したくない。
自分の子どもを持つことが叶わなくなった奴に優しい遥くんが決して同情したりしないように、私は言葉を選びながら理由を告げた。
奴が病気を患い、子どもを持てない身体になったこと。
再婚した相手が産んだ子どもは奴の子どもではなかったこと。
そしてそれに伴い、あの家の、あの男の血を受け継ぐ子どもが琳くんだけになったこと。
それを話すと、遥くんはみるみるうちに怒りの表情を見せた。
無理もない。
妹さんは不貞を疑われ検査をうけさせられ、琳くんが奴の実子だと結果が出たにも関わらず、家柄が釣り合わないという理由だけでボロ雑巾のように捨てられたのだから。そんなことをしておきながら、今更琳くんが欲しいだなんて自己中心的にも程がある。
怒りに震えながら子どもたちを起こさないように我慢している遥くんの手が震えている。
その手にそっと自分の手を重ね、大丈夫だと声をかけた。
弁護士に動いてもらっているから安心して欲しいと告げると遥くんは小さく頷いた。
そして一番守って欲しいことをはっきりと伝えた。
「人間追い詰められたら何をしでかすかわからない。だから琳くんの病院に行く日までは絶対に外に出ないでくれ。それだけを約束してほしい」
これだけが心配なんだ。
遥くんが私を信頼して頷いてくれるのがたまらなく嬉しくて、彼の頭をそっと撫でた。
不安な気持ちを少しでも楽にしたくて、彼をそっと抱き寄せた。
「遥くんと琳くんは私が必ず守るから」
これは私の誓いだ。これからの私たち家族のためにもこの誓いは絶対に守ってみせる。
遥くんの顔がほんのり赤くなっている気がして、名前を呼びかけるとゆっくりと私を見上げようとする。
その瞬間、碧斗と琳くんが目が覚めたと遥くんを呼ぶ声が耳に飛び込んできた。
遥くんに僅かだが私を意識しているような節が見えたのだが、タイミングが悪い。
だが子どもが呼んでいるのを無視するわけにはいかないな。
「二人が呼んでる。行ってやって」
声をかけて遥くんを見送った。
サークルの中で三人の声が聞こえるのを微笑ましく思いながらも、ほんの少しの寂しさを感じつつ朝食に箸をつけた。
カーテンが開き、遥くんと子どもたちの可愛い会話がうっすらと聞こえてくる。
それにしても近づくと本当に良い匂いがする。
あのシーツについていたのと同じ匂い。
やはりあれが遥くんの体臭なのだろう。
同じ男とは思えないほどだ。
遥くんの匂いの余韻に浸っていると、
「だっこしてたー!」
「だっこしてたー!!」
朝から碧斗と琳くんの騒ぐ声が聞こえる。
何事かと思いつつ食事を終え、食器を流しに持っていくとお弁当が作りかけになっているのが見えた。
私が一緒に座って欲しいと言ったから作業が途中になっていたようだ。
私が子どもたちの世話をする間に弁当を仕上げてもらおうと三人に近づくと、遥くんがしゃがみ込んで絵本を眺めているのが見える。
「遥くん? どうした?」
私の問いかけに遥くんは飛び上がらん勢いで身体をびくりとさせ絵本を閉じた。
「い、いえ。何でもないです。すみません、昨日は運んでもらってしまって……」
なんだ、その話か。その間もずっと碧斗と琳くんが抱っこ、抱っこと騒いでいたからなんとなく察しがついた。
きっと寝てしまった遥くんを私が抱きかかえていたことを話したんだろう。
「ゆっくり休んでもらうつもりでマッサージをしたんだから気にしないでいい」
気遣わせないようにそう言ったのだが、遥くんはじっと私の顔を意味深に見つめてくる。
遥くんにそんなに見つめられるとドキドキしてしまう。
気になって声をかければ、誤魔化すように碧斗たちをトイレに連れて行こうとする。
一体、私が聞いていなかった間に何があったんだろう?
後で会社でこの辺りの様子を映像で確認しておくか。
そろそろ仕事に出かけなければいけない。
遥くんには弁当を仕上げてもらうことにして、私は二人をトイレに連れて行くことにした。
二人で子育ての時間なのだから気にすることはない。
二人を順番にトイレをさせて、碧斗の選んだ通りに二人分の着替えをさせるともう出勤の時間になっていた。
「ぱぱー、いってらっしゃいするー!!」
「りんも、ぱぱにいってらっしゃいするー!! はるかちゃんもはやくー!!」
琳くんが遥くんを誘ってくれて、みんなに見送りされる。
それがたまらなく嬉しい
遥くんがブラシをかけたジャケットを羽織らせてくれる。それもまるで新婚のように感じられて楽しい。
手作りのお弁当をもらっていると、碧斗が興味津々な様子で尋ねてきた。
これが遥くんの手作り弁当だと告げると即座に羨ましそうな声をあげ、遥くんにおねだりをする。
子どもというのは素直にお願い事ができて本当に羨ましい。
碧斗は遥くんとの弁当の約束を取り付けるとさっさと琳くんの手を取ってリビングに戻ってしまった。
「見送りも遥くんのお弁当には負けるな」
言葉ではそう言いつつも、遥くんと二人っきりになれるのは嬉しくて仕方がない。
笑顔で行ってくると告げると、この上ない笑顔を向けられる。
「行ってらっしゃい。気をつけて」
夫夫の見送りのようなそれに喜びつつ、私は仕事に向かった。
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