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少しずつ家族に 7
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磯山と村山が来るのは前回と同じく十二時。
食事を摂る暇がないというからうちで昼食を一緒に摂ることにした。
私の分は遥くんが作ってくれた弁当がある。
磯山たちの昼食は何か弁当でもとっておこうかと前もって尋ねておいたが、磯山も村山も私と同じく愛しい人からのお弁当を持参するらしい。
三人で昼食に手作りの弁当を食べるなんて高校時代のようなことを、三十歳にもなってすることになるとは夢にも思っていなかったが、それも意外と楽しいかもしれない。
久瀬くんに磯山たちが来たらコーヒーではなく、お茶を出してくれるように頼み、私は彼らが来るまで仕事に没頭した。
週末には遥くんと映画デート。
それが私のやる気を奮い立たせていた。
そしてあっという間に約束の十二時がやってきた。
時間通りにやってきた二人を部屋に招き入れると、すぐに久瀬くんがお茶を出してくれた。
この後はこの部屋には近づかないように指示を出し、三人でソファーに座る。
「まずは腹ごしらえからだな」
村山がいの一番に鞄から弁当を取り出す。
カールが作った弁当だと思うと少し興味がある。
続いて磯山も弁当を取り出した。
その表情がこの上なく笑顔で思わず笑ってしまう。
「なんだよ」
「いや、直くんのことを心から好きなんだなって思っただけだよ」
私の言葉に磯山と村山が驚きの表情を向ける。
「どうした?」
「西条の口から好きとか出たからびっくりしたんだよ。どうだ? 意識させて少しは進展したか?」
その質問に私は待ってましたとばかりに得意げな表情を向けると、村山は笑顔でこっちをみた。
「もしかして、もうアレを使ったのか?」
「いや。実は、週末に映画デートに誘ったんだ」
「「はっ?」」
さすがに驚いているな。私もやる気になればできるんだってところを見せられたようだ。
「それは……子どもたちも一緒に、か?」
「もちろんだ。マンション内の施設にモニタールームがあるから、そこで四人で楽しもうと思っているよ」
計画を告げると、二人は顔を見合わせて大きなため息を吐いた。
「なんだ?」
「いや、あの表情を見たらてっきり想いが通じ合ったとばかり思ったから。まだそこか」
まだ……って。ここに来るまで結構大変だったんだぞ。
「何度か想いは伝えようとしたんだが、うまくいかなかったんだ。恋人というより専属で引き抜かれたと勘違いされたし」
「専属で、ってどういうことだ?」
磯山が目の前の弁当に箸をつけながら尋ねてくるから、正直にこの前のことを話してみた。
「――、それで言ったんだよ。『これからもずっと遥くんが作ってくれた食事を食べさせてほしい』って。そしたら、いつもの笑顔で――」
「僕の食事でよければ、とでも言われたか?」
「えっ? なんでわかった?」
「いや、その流れで専属で引き抜かれたなんて聞いてたら想像つくだろう。だいたい、西条……お前、家事を生業にしている人に、これからも食事を作ってほしいなんて言われたら、仕事の話だと勘違いされてもおかしくないぞ。話を聞く限りかなり鈍そうだし、そういう相手には真正面からはっきりと言ったほうがいい」
磯山の力説っぷりに驚きつつも、言われてみればそうかと思ってしまう。
確かに元々家事育児をやってもらうということで家に居てもらっているんだ。
食事を食べさせてほしいと言われても勘違いしてもおかしくない。
私の言葉のチョイスが悪かったようだ。
「まぁ、とりあえずは例の件を解決してからだな。早く弁当を食べてその話をしよう」
そう言いつつも磯山も村山も愛しい人が作ってくれた弁当を一口一口味わって食べていた。
こんなにも丁寧に作られている弁当だ。味わって食べないと罰が当たるな。
そのあとはしばらく磯山と村山の惚気を聞きながら、弁当を終えた。
「それで火曜日の計画の件だが――」
例のショッピングモールに奴を誘い出し、ほんの少しの隙を作り、遥くんと琳くんに接触させる。
あの用意周到さを見ると、奴は必ずその場に凶器を持ってくる。
そして襲い掛かろうとしたところで現行犯逮捕というわけだ。
「二人に危険は絶対にないか?」
「大丈夫。周りも全て私服警官に固めてもらうことになっているし、そのタイミングで西条を戻らせる。二人を守るのはお前の役目だ」
「わかった」
西条グループの後継として生まれ育ったこともあり、万が一の襲撃にも備えて幼い頃から武道を嗜んでいる。
悠久がからっきしだったこともあって、いつも私が守れるように日々訓練していた。
幼少期からの訓練の日々は大変なこともあったが、それが愛しい人を守れる術になるのならこれまでやっておいて良かったと心から思う。
「俺と村山も当日、その場に行くから安心してくれ」
「ありがとう、助かるよ」
磯山と村山だけでも心強いが、周りを私服警官に固めてもらうならそれ以上の安心感はない。
それにしてもこの計画にそんな人たちまで動かせるなんてな。
二人の結婚式でも思ったが、磯山と村山の人脈の広さには相変わらず驚かされるばかりだ。
そこからは、ショッピングモールの地図を広げて、綿密なシミュレーションを行った。
これならスムーズにその場所に誘導できるだろう。
決行の日はもうすぐだ。
食事を摂る暇がないというからうちで昼食を一緒に摂ることにした。
私の分は遥くんが作ってくれた弁当がある。
磯山たちの昼食は何か弁当でもとっておこうかと前もって尋ねておいたが、磯山も村山も私と同じく愛しい人からのお弁当を持参するらしい。
三人で昼食に手作りの弁当を食べるなんて高校時代のようなことを、三十歳にもなってすることになるとは夢にも思っていなかったが、それも意外と楽しいかもしれない。
久瀬くんに磯山たちが来たらコーヒーではなく、お茶を出してくれるように頼み、私は彼らが来るまで仕事に没頭した。
週末には遥くんと映画デート。
それが私のやる気を奮い立たせていた。
そしてあっという間に約束の十二時がやってきた。
時間通りにやってきた二人を部屋に招き入れると、すぐに久瀬くんがお茶を出してくれた。
この後はこの部屋には近づかないように指示を出し、三人でソファーに座る。
「まずは腹ごしらえからだな」
村山がいの一番に鞄から弁当を取り出す。
カールが作った弁当だと思うと少し興味がある。
続いて磯山も弁当を取り出した。
その表情がこの上なく笑顔で思わず笑ってしまう。
「なんだよ」
「いや、直くんのことを心から好きなんだなって思っただけだよ」
私の言葉に磯山と村山が驚きの表情を向ける。
「どうした?」
「西条の口から好きとか出たからびっくりしたんだよ。どうだ? 意識させて少しは進展したか?」
その質問に私は待ってましたとばかりに得意げな表情を向けると、村山は笑顔でこっちをみた。
「もしかして、もうアレを使ったのか?」
「いや。実は、週末に映画デートに誘ったんだ」
「「はっ?」」
さすがに驚いているな。私もやる気になればできるんだってところを見せられたようだ。
「それは……子どもたちも一緒に、か?」
「もちろんだ。マンション内の施設にモニタールームがあるから、そこで四人で楽しもうと思っているよ」
計画を告げると、二人は顔を見合わせて大きなため息を吐いた。
「なんだ?」
「いや、あの表情を見たらてっきり想いが通じ合ったとばかり思ったから。まだそこか」
まだ……って。ここに来るまで結構大変だったんだぞ。
「何度か想いは伝えようとしたんだが、うまくいかなかったんだ。恋人というより専属で引き抜かれたと勘違いされたし」
「専属で、ってどういうことだ?」
磯山が目の前の弁当に箸をつけながら尋ねてくるから、正直にこの前のことを話してみた。
「――、それで言ったんだよ。『これからもずっと遥くんが作ってくれた食事を食べさせてほしい』って。そしたら、いつもの笑顔で――」
「僕の食事でよければ、とでも言われたか?」
「えっ? なんでわかった?」
「いや、その流れで専属で引き抜かれたなんて聞いてたら想像つくだろう。だいたい、西条……お前、家事を生業にしている人に、これからも食事を作ってほしいなんて言われたら、仕事の話だと勘違いされてもおかしくないぞ。話を聞く限りかなり鈍そうだし、そういう相手には真正面からはっきりと言ったほうがいい」
磯山の力説っぷりに驚きつつも、言われてみればそうかと思ってしまう。
確かに元々家事育児をやってもらうということで家に居てもらっているんだ。
食事を食べさせてほしいと言われても勘違いしてもおかしくない。
私の言葉のチョイスが悪かったようだ。
「まぁ、とりあえずは例の件を解決してからだな。早く弁当を食べてその話をしよう」
そう言いつつも磯山も村山も愛しい人が作ってくれた弁当を一口一口味わって食べていた。
こんなにも丁寧に作られている弁当だ。味わって食べないと罰が当たるな。
そのあとはしばらく磯山と村山の惚気を聞きながら、弁当を終えた。
「それで火曜日の計画の件だが――」
例のショッピングモールに奴を誘い出し、ほんの少しの隙を作り、遥くんと琳くんに接触させる。
あの用意周到さを見ると、奴は必ずその場に凶器を持ってくる。
そして襲い掛かろうとしたところで現行犯逮捕というわけだ。
「二人に危険は絶対にないか?」
「大丈夫。周りも全て私服警官に固めてもらうことになっているし、そのタイミングで西条を戻らせる。二人を守るのはお前の役目だ」
「わかった」
西条グループの後継として生まれ育ったこともあり、万が一の襲撃にも備えて幼い頃から武道を嗜んでいる。
悠久がからっきしだったこともあって、いつも私が守れるように日々訓練していた。
幼少期からの訓練の日々は大変なこともあったが、それが愛しい人を守れる術になるのならこれまでやっておいて良かったと心から思う。
「俺と村山も当日、その場に行くから安心してくれ」
「ありがとう、助かるよ」
磯山と村山だけでも心強いが、周りを私服警官に固めてもらうならそれ以上の安心感はない。
それにしてもこの計画にそんな人たちまで動かせるなんてな。
二人の結婚式でも思ったが、磯山と村山の人脈の広さには相変わらず驚かされるばかりだ。
そこからは、ショッピングモールの地図を広げて、綿密なシミュレーションを行った。
これならスムーズにその場所に誘導できるだろう。
決行の日はもうすぐだ。
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