運命の出会いは空港で 〜クールなイケメン社長は無自覚煽りの可愛い子ちゃんに我慢できない

波木真帆

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閑話 新川&盛山 <罠を仕掛けよう>

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俺は倉橋さんとの電話を切って、隣にいたりつに声をかけた。
彼は盛山もりやまりつ。俺と同じ焼肉屋の副店長でもあり、大切な恋人だ。

「律。話、聞いてただろ? すぐに出かける準備しようぜ」

「ああ。イリゼ、狙ってたんならあの辺いけばすぐ見つかるんじゃね?」

律が言っているあの辺とは、俺たちの勤めてる焼肉屋のすぐ近くにある、高級リゾートホテルがいくつか並んでいる場所のことだ。

成功することしか考えてない俺たちは急いで泊まり用に簡単に荷物まとめていると、スマホがブルブルと震えた。

「ちょっと待って。今、情報が送られてきたから。やっぱり律の読み通り、そいつらその辺にいるみたいだぜ。写真も一緒にきたっ! うわっ、ケバっ。こんなんと並んで歩きたくないなぁ……」

「まぁいいじゃん、さっさと罠にかけてホテルでゆっくり贅沢させてもらおうよ」

「そうだな。じゃあ行こうか」

俺たちは時々スマホに送られてくる奴らの情報をチェックしながら車を走らせていると、石垣でも屈指のリゾートホテルの前をうろちょろとしているターゲットの女たちを見つけた。
うわっ、写真より実物の方がかなりヤバいな。

颯斗はやと、いたぞ」

倉橋さんの話では茶色の車に乗っているということだったが、さすがに事故車では男が捕まらないと思ったんだろう。修理代なんて払いそうにもないし、おそらくどこかに乗り捨てて、大きな荷物を引きずり同情でも誘う作戦にでもシフトチェンジしたんだろうな。

「仕方ない、やりますか」

律とアイコンタクトを交わすと、律はあの女たちに車を近づけた。

沖縄ナンバーだと警戒されるかもしれないとBMWのレンタカーを急いで借りたのは正解だったみたいだ。
俺たちの車を見ていいカモを見つけたとばかりに目を輝かせている。

「ねぇ、君たち。どうしたの?」

優しく微笑む律はまるでどこぞの王子さまのような雰囲気だ。
奴らが律を見て顔を真っ赤にするのを見て、俺はもうすでに作戦の成功を感じていた。

「あの、わたしたちぃ……ホテルの手違いで予約されてなくてぇ、今日泊まるところなくて困ってたんですぅ」

目を潤ませ、上目遣いにそう話してくる女に正直吐きそうだったが、律はそんな様子を微塵も見せない。

「そうなんだ、大変だね。こんなところにずっといて熱中症になったら危ないし、よかったら俺たちの部屋に一緒に泊まる?」

これまた爽やかに誘う律に女たちはもうメロメロになっている。

律は本当演技上手いよな。
大学時代演劇やってた頃から浅香さんにスカウトされてるだけのことはある……ってか、浅香さんは本当に見る目があるよな。石垣から離れたくないからって絶対に首を縦には振らないけど。
多分、俺と離れたくないっていうのが大きな理由だろう。
そう思ってしまうくらいには律に愛されてる自信がある。

「えーっ、でもいいんですかぁ?」

遠慮しながらもすでに泊まる気満々の様子で助手席に座る俺の方を見ながらそう言ってくるから、俺も腹を括った。

「いいよ。大人数の方が楽しいし、なっ」

律に同意を求めると、律はにこやかな笑顔でさっと車を降りた。
女たちの荷物をトランクに入れ、後部座席に座らせホテルへ車をすすめた。

「あの、お二人はどちらから来られたんですかぁ?」

「東京だよ。仕事で来てるんだけど、早めに終わってこれからホテルでゆっくりしようと思っていたところだったんだ」

「そうなんですね~。よかったぁ」

不気味なくらいのぶりっ子声にイライラながらもホテルまで連れて行った。

フロントへ行き、予約していた倉橋・・ですというとすぐに理解してくれたらしい。

「お部屋のご準備をしておりますのでしばらくお待ちください」

今の間にカメラ設置してるんだろうな。

数分後、「お部屋のご準備が整いましたのでお部屋にご案内いたします」と従業員に連れられて最上階のスイートルームへ案内された。

やったっ! 今日はスイートに宿泊だ。さっさとこいつら尻尾出してくんねぇかなぁ……。

「ゆっくり律とのんびりしたい」

思わずポツリと本音を漏らしたが、エレベーターで浮かれまくっている奴らには全く聞こえてなかったみたいだ。よかった。

律に目を向けると、少し顔が赤くなっていたから多分律には聞こえてたんだろう。
こんなことで顔赤くするなんてほんと、可愛いんだよな。こいつ。

「こちらでございます」

案内された部屋はおそらくこのホテルでも一番良い部屋。
俺も律もテンションが上がりそうになったが、ここはクールに決めとかないとな。
さも慣れているかのようにスマートにお礼を言い、部屋に入ると、女たちは俺たち以上にテンションMAXでキャーキャー言いながら部屋の中を駆け回っている。

俺はその隙に従業員に防犯ブザーを手渡した。これは俺の持っているブザーと連携していて俺のボタンをを押すともう一つの方に知らせのブザーが鳴るというシステムになっている。
蓮見さんが俺たち従業員に何かあった時のためにと二人一組で持たせているものの片割れだ。
今回は俺とペアになっている律のものを渡しておくことにしたんだ。

奴らの決定的瞬間を見つけたらこのブザーで知らせて警察を呼んでもらう手筈になっている。
従業員はそれを大事に胸のポケットに入れ、部屋を出ていった。

「すっごぉ~いっ!! こんな部屋に泊まるの初めて~!!」

「ゆっくりして行って。部屋はあっちね。ベッド二台あるから二人で使ってくれていいよ」

「あのぉ、わたしたちちょっと汗かいちゃって、お風呂使わせてもらっても良いですかぁ?」

「じゃあお風呂入れてくるよ」

律がバスルームへと向かった途端、一人の女が律についていき、もう一人の女は俺の方に近づいてきた。

ふぅん、こっちのやつは俺狙いってことか。せいぜい今のうちだけこの部屋を楽しめばいいさ。

「部屋、案内してもらっても良いですかぁ?」

「こっちだよ」

部屋に案内すると、突然パタンと扉を閉めて俺に擦り寄ってきた。強い香水の匂いに鼻がおかしくなりそうだ。

「今日は助けていただいてありがとうございます。お礼をしたいんですけど、今日どうですか?」

腕に抱きつきながら胸を当ててくる。
正直ゲンナリしながらもここで怒らせて意味ないし、どうしようかと思っていると律が俺を呼ぶ声が聞こえた。
ふぅ助かった。

チッ! と軽く舌打ちする声を耳にしながら、俺は部屋を出て律の元へ戻った。

奴らと少し言葉を交わしながら、ちょっと部屋を片付けてくるからと二人でリビングを出た。
もちろん、財布やスマホをテーブルに置きっぱなしで。

これは餌だからな、罠にかからないと意味ないし。

俺たちの部屋にはリビングの全ての様子が見れるモニターが置かれている。
それを律と二人で見ていると、俺たちが部屋に入った途端奴らが俺たちの財布を物色する姿が綺麗に映っていた。

「面白いくらいに引っかかるな」

「だな」

あまりにも簡単にかかりすぎて笑いが出る。これは全部録画してあるからな。中身を懐に入れたらすぐブザーを押すぞ。

そう思っている間にも奴らは目を輝かせながら俺たちの財布から万札を取り服の中へと入れていた。

俺たちはそれぞれ五十万ほどの現金とブラックカードを入れていたが、流石にカードには手を出さないか。足がつくと困るもんな。

現金なら知らないでシラを切れるしな。今回は全部映ってるんで誤魔化せないけど。

俺はすぐにボタンを押すと、それから数分もしない間に部屋の扉が叩かれた。きっとスタンバってたんだろう。

きっと奴らは従業員でも訪ねてきたと思っただろう。だが、残念だな。これはお前たちを捕まえにきた警察官なんだよ。

部屋から出て、俺が扉を開けた瞬間、三人の警察官と二人の私服刑事が飛び込んできた。

「きゃーっ!!」

奴らは突然現れた刑事たちに驚き声をあげていたけれど、あまりにも手際よく自分たちの手に手錠が付けられて最初は何のことだかよくわかっていないみたいだった。

「お前たちを窃盗容疑で逮捕する」

「はっ? 窃盗? どういうこと??」

「シラを切っても無駄だぞ。お前たちが彼らの財布から金を抜き取っているのは監視カメラにばっちり映ってるからな」

「カメラ? はぁ? 何それ? あんたたち、わたしたちを嵌めたの?」

さっきまで擦り寄ってきていた奴らとは思えないほど恐ろしい形相で俺たちを睨みつけてきたが、手錠を付けられてる奴なんて何にも怖くない。

「お前たちには故意に車をぶつけて逃げた救護措置義務違反、報告義務違反と過失運転致死傷罪の容疑もかかっているからな、あとは詳しく署で話を聞かせてもらおうか」

ギャーギャー叫び続ける奴らを引き摺っていきながら、刑事たちは「ご協力ありがとうございます」と頭を下げ、部屋を出ていった。

入れ替わりに部屋にホテルの従業員が入ってきて、部屋に設置された監視カメラを全て取り外し、俺の渡したブザーを返していった。

「こちらのお部屋は明日の十時のチェックアウトまでお好きに使っていただくようにと承っております。お食事等も全て倉橋さまにおつけするようにと言付かっておりますので、どうぞごゆっくりお過ごしください」

「わぁっ、ありがとうございます!」

「いいえ、こちらこそ、あの方々には我々も同業のホテルも皆迷惑しておりましたので、今回ご協力いただきまして感謝しております。本当にありがとうございました」

従業員は深々と頭を下げ出て行った。
よっぽどあいつら好き放題やってたんだな。

颯斗はやと、もう良いだろ? せっかくこんな良い部屋に泊まらせてもらってるんだから楽しもうぜ」

「そうだな。チェックアウトギリギリまで愛し合うか」

「ばかっ」

頬を赤らめながらも嬉しそうな表情をする律の手をひき、俺は早速寝室へと連れて行った。
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