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ユヅルと一緒に
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ユヅルがセルジュを朝食に誘うとセルジュは嬉しそうに中に入った。
リビングにセルジュを残し、私とユヅルはキッチンへと向かう。
冷蔵庫を開けてもいいかと尋ねる私に、家族なのだから伺いを立てる必要はないと言ってくれたユヅル。
ユヅルが私を家族だと認識してくれたことが嬉しくてたまらなかった。
冷蔵庫と冷凍庫を一通り見て、気になったのは冷凍庫に置いてあった白い塊。
それがいくつもある。
同じ大きさのそれは何かとユヅルに尋ねると、冷凍したご飯だという。
こうしておけばいつでも食べたい時にご飯が食べられるのだと教えてくれた。
なるほど。
アマネが炊いておいてくれたものか。
それならばこれを使って朝食を作るとしよう。
ユヅルは私が何を作るのか不思議に思っているようだが、それは出来上がってからのお楽しみだ。
アマネのスープも取り出し、ご飯を解凍し、準備を進めていくとユヅルが申し訳なさそうにしている。
ああ、そうだ。
ユヅルにも手伝ってもらわなければな。
私は急いで小さめのボウルに酢、塩胡椒、蜂蜜を入れ軽く混ぜた。
それにオリーブオイルを投入し、ユヅルに手渡した。
これを混ぜてドレッシングを作ってほしいとお願いすると、ユヅルは目を輝かせて喜んでくれた。
手伝いたいと言ってくれたユヅルの思いを裏切りたくなかった。
けれど、包丁を使わせて怪我をさせてしまっては嫌だし、火を使わせて火傷でもしたら大変だ。
混ぜてできるだけのドレッシングが一番安全だろう。
ユヅルが疲れてしまわないかだけ気をつけて見ながら、ユヅルがドレッシングを作ってくれている間に全ての料理を終わらせた。
ユヅルにドレッシングがどうなったかを尋ねると、嬉しそうにボウルを私に見せてくれた。
「ああ、いいな! ユヅル、とっても上手に混ぜられてるよ!」
そう言って誉めると、ユヅルは満更でもない顔で喜んでいた。
ふふっ。本当に愛らしいな。
ユヅルならどんなに小さなことでも褒めてあげたくなる。
ユヅルのドレッシングで料理が完成し、セルジュを呼ぶと
「エヴァンさまの料理なんて久しぶりですね。楽しみです」
なぜか久しぶりを強調したように言い、私を向いてニコリと笑った。
最初は意味がわからなかったが、隣にいるユヅルの一瞬の表情でセルジュの意図がわかった。
おそらく、ユヅルが嫉妬するようにわざと言ったのだろう。
私の料理をセルジュがよく食べているのだと。
その言葉にユヅルは一瞬、面白くなさそうな顔をした。
おそらく自分でもわかっていないはずだ。
それくらいの小さな変化だったが、私にはそれが嬉しかった。
今日の朝食はリゾット。
チーズとキノコ、コンソメ、牛乳などを使ったシンプルなものだが、朝には食べやすくていいだろう。
ユヅルはリゾットを知らなかったようだが、西洋風のおじやだというと驚いていた。
本来リゾットは生米から作るものだが、炊いた米からでも美味しくできる。
それにかなりの時短になる。
アマネのおかげだなというとユヅルは嬉しそうに笑っていた。
リゾットをパクリと口に入れたユヅルはすごく美味しいと満面の笑みを見せてくれた後で、
「エヴァンさん……大好きです」
とほんのり頬を赤く染めながら私の顔をじっと見つめて言ってくれた。
まさかっ!
ここでユヅルに告白されるとは思っても見なかった。
だが、思いが通じたのだ。
驚きつつも途轍もない幸せに歓喜の声を上げようとした瞬間、
「このリゾット、大好きです。これから僕の大好物になりそうです」
と微笑みをくれた。
あ、ああ……。
リゾット、だったか……。
いや、私の料理を好きだと言ってくれたのだ。
ある意味、私を好きだと言っているようなものじゃないか。
そうだ、そういうことにしておこう。
気持ちを切り替えてユヅルに気に入ってくれてよかったと返すと、目の前で見ていたセルジュは私の一喜一憂に気付き笑っていた。
気持ちを切り替え、
「ユヅル、このドレッシング本当にいい出来だ。ここまで綺麗に混ざり合うのは至難の業なのだぞ。本当に美味しくできている」
と誉めると、セルジュも
「こちらのドレッシングはユヅルさまの手作りですか? 素晴らしいですね、とても美味しいですよ」
と褒め称え、ユヅルは照れながらも嬉しそうに笑っていた。
ああ、やはりユヅルは愛おしいな。
食事の後、ユヅルとセルジュがそれぞれ片付けをすると言い張ったので、3人でさっさと終わらせることにした。
ユヅルが鍋とボウルを綺麗に拭いてくれている間に、全ての皿を片付け終わりユヅルに大事な話があると言って、リビングに移動した。
セルジュが取り出した資料に書いてあったアマネの葬儀のスケジュールを確認すると、ユヅルは私とセルジュに礼の言葉を述べたが、私たちの間に礼などいらない。
家族であるアマネが亡くなったのだ。
悲しみに暮れるユヅルのそばにいる私。
その間に手続きを終わらせるセルジュ。
それぞれの役割があるのだから、それでいいのだ。
それからここからはユヅルに決めてもらわなければいけないことがある。
アマネの遺骨だ。
私もセルジュもアマネの遺骨はニコラの墓に一緒に埋葬してやりたいと思っている。
死してようやく一緒になれるのだ。
あれほど思いあっていた二人を一緒にさせてやりたい。
その気持ちでユヅルにアマネの遺骨をフランスに連れて帰ることを提案した。
ユヅルはなんと答えるだろうかと思っていたが、私たちの思いを汲んでフランスへと連れて帰ることを了承してくれた。
ならば、本題はここからだ。
「ユヅル、君も一緒にフランスに行かないか?」
遺骨を送り届けるだけでなく、これから一緒に生活してほしい……そう話すと、ユヅルは一瞬戸惑いの表情を見せた。
断られるか、それともついてきてくれるか……緊張しながら見つめた私の耳に飛び込んできたのは
「エヴァンさん! 僕を……僕をフランスに連れて行ってください。エヴァンさんと離れるのは嫌です」
まるでユヅルからのプロポーズにも思えるような、嬉しい言葉だった。
私たちの家に帰ろう。
そして新しい生活を始めよう。
ユヅルを抱きしめながらそう返すと、ユヅルは涙を流しながら喜んでくれた。
リビングにセルジュを残し、私とユヅルはキッチンへと向かう。
冷蔵庫を開けてもいいかと尋ねる私に、家族なのだから伺いを立てる必要はないと言ってくれたユヅル。
ユヅルが私を家族だと認識してくれたことが嬉しくてたまらなかった。
冷蔵庫と冷凍庫を一通り見て、気になったのは冷凍庫に置いてあった白い塊。
それがいくつもある。
同じ大きさのそれは何かとユヅルに尋ねると、冷凍したご飯だという。
こうしておけばいつでも食べたい時にご飯が食べられるのだと教えてくれた。
なるほど。
アマネが炊いておいてくれたものか。
それならばこれを使って朝食を作るとしよう。
ユヅルは私が何を作るのか不思議に思っているようだが、それは出来上がってからのお楽しみだ。
アマネのスープも取り出し、ご飯を解凍し、準備を進めていくとユヅルが申し訳なさそうにしている。
ああ、そうだ。
ユヅルにも手伝ってもらわなければな。
私は急いで小さめのボウルに酢、塩胡椒、蜂蜜を入れ軽く混ぜた。
それにオリーブオイルを投入し、ユヅルに手渡した。
これを混ぜてドレッシングを作ってほしいとお願いすると、ユヅルは目を輝かせて喜んでくれた。
手伝いたいと言ってくれたユヅルの思いを裏切りたくなかった。
けれど、包丁を使わせて怪我をさせてしまっては嫌だし、火を使わせて火傷でもしたら大変だ。
混ぜてできるだけのドレッシングが一番安全だろう。
ユヅルが疲れてしまわないかだけ気をつけて見ながら、ユヅルがドレッシングを作ってくれている間に全ての料理を終わらせた。
ユヅルにドレッシングがどうなったかを尋ねると、嬉しそうにボウルを私に見せてくれた。
「ああ、いいな! ユヅル、とっても上手に混ぜられてるよ!」
そう言って誉めると、ユヅルは満更でもない顔で喜んでいた。
ふふっ。本当に愛らしいな。
ユヅルならどんなに小さなことでも褒めてあげたくなる。
ユヅルのドレッシングで料理が完成し、セルジュを呼ぶと
「エヴァンさまの料理なんて久しぶりですね。楽しみです」
なぜか久しぶりを強調したように言い、私を向いてニコリと笑った。
最初は意味がわからなかったが、隣にいるユヅルの一瞬の表情でセルジュの意図がわかった。
おそらく、ユヅルが嫉妬するようにわざと言ったのだろう。
私の料理をセルジュがよく食べているのだと。
その言葉にユヅルは一瞬、面白くなさそうな顔をした。
おそらく自分でもわかっていないはずだ。
それくらいの小さな変化だったが、私にはそれが嬉しかった。
今日の朝食はリゾット。
チーズとキノコ、コンソメ、牛乳などを使ったシンプルなものだが、朝には食べやすくていいだろう。
ユヅルはリゾットを知らなかったようだが、西洋風のおじやだというと驚いていた。
本来リゾットは生米から作るものだが、炊いた米からでも美味しくできる。
それにかなりの時短になる。
アマネのおかげだなというとユヅルは嬉しそうに笑っていた。
リゾットをパクリと口に入れたユヅルはすごく美味しいと満面の笑みを見せてくれた後で、
「エヴァンさん……大好きです」
とほんのり頬を赤く染めながら私の顔をじっと見つめて言ってくれた。
まさかっ!
ここでユヅルに告白されるとは思っても見なかった。
だが、思いが通じたのだ。
驚きつつも途轍もない幸せに歓喜の声を上げようとした瞬間、
「このリゾット、大好きです。これから僕の大好物になりそうです」
と微笑みをくれた。
あ、ああ……。
リゾット、だったか……。
いや、私の料理を好きだと言ってくれたのだ。
ある意味、私を好きだと言っているようなものじゃないか。
そうだ、そういうことにしておこう。
気持ちを切り替えてユヅルに気に入ってくれてよかったと返すと、目の前で見ていたセルジュは私の一喜一憂に気付き笑っていた。
気持ちを切り替え、
「ユヅル、このドレッシング本当にいい出来だ。ここまで綺麗に混ざり合うのは至難の業なのだぞ。本当に美味しくできている」
と誉めると、セルジュも
「こちらのドレッシングはユヅルさまの手作りですか? 素晴らしいですね、とても美味しいですよ」
と褒め称え、ユヅルは照れながらも嬉しそうに笑っていた。
ああ、やはりユヅルは愛おしいな。
食事の後、ユヅルとセルジュがそれぞれ片付けをすると言い張ったので、3人でさっさと終わらせることにした。
ユヅルが鍋とボウルを綺麗に拭いてくれている間に、全ての皿を片付け終わりユヅルに大事な話があると言って、リビングに移動した。
セルジュが取り出した資料に書いてあったアマネの葬儀のスケジュールを確認すると、ユヅルは私とセルジュに礼の言葉を述べたが、私たちの間に礼などいらない。
家族であるアマネが亡くなったのだ。
悲しみに暮れるユヅルのそばにいる私。
その間に手続きを終わらせるセルジュ。
それぞれの役割があるのだから、それでいいのだ。
それからここからはユヅルに決めてもらわなければいけないことがある。
アマネの遺骨だ。
私もセルジュもアマネの遺骨はニコラの墓に一緒に埋葬してやりたいと思っている。
死してようやく一緒になれるのだ。
あれほど思いあっていた二人を一緒にさせてやりたい。
その気持ちでユヅルにアマネの遺骨をフランスに連れて帰ることを提案した。
ユヅルはなんと答えるだろうかと思っていたが、私たちの思いを汲んでフランスへと連れて帰ることを了承してくれた。
ならば、本題はここからだ。
「ユヅル、君も一緒にフランスに行かないか?」
遺骨を送り届けるだけでなく、これから一緒に生活してほしい……そう話すと、ユヅルは一瞬戸惑いの表情を見せた。
断られるか、それともついてきてくれるか……緊張しながら見つめた私の耳に飛び込んできたのは
「エヴァンさん! 僕を……僕をフランスに連れて行ってください。エヴァンさんと離れるのは嫌です」
まるでユヅルからのプロポーズにも思えるような、嬉しい言葉だった。
私たちの家に帰ろう。
そして新しい生活を始めよう。
ユヅルを抱きしめながらそう返すと、ユヅルは涙を流しながら喜んでくれた。
応援ありがとうございます!
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