大富豪ロレーヌ総帥の初恋

波木真帆

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素晴らしい思い出

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Joyeメリーux Noëlクリスマス !』

ふふっ。ジュール。
すっかりPère Noëlになりきってるな。

声色も随分と変えているし、これならユヅルたちに気づかれることはないだろう。

リオはジュールの言ったことがわからず、ユヅルに聞いているようだが、ユヅルもあまりの興奮にフランス語を忘れてしまっているようだ。

Joyeメリーux Noëlクリスマスはとっくに覚えていたはずだから、それくらい目の前のジュールサンタに興奮と驚きを隠せないのだろう。

さっとシュウゴがユヅルたちの隣にやってきて、意味を教えてやっている。
そのシュウゴも少し頬が赤い。
正体は薄々わかっているようだが、シュウゴも少しは興奮してくれているのだろう。

『じょ、ジョワいゆ、のえる』
『ジョワイユ、ノエル』

シュウゴから意味を聞いた二人が一生懸命挨拶を返す。

その辿々しい発音に思わず笑みが溢れる。
二人だけは本当に目の前のPère Noëlが本物だと思ってくれているのだろうな。
いや、ソラもか。

ソラも興奮しきった様子でジュールを、いや、Père Noëlを見ている。
ふふっ。
やはり皆、純粋で可愛らしい。

『お利口な君たちには、これをあげよう。cadeau クリスマスde Noëlプレゼントだよ

いつもなら、ユヅルが理解できるようにゆっくりと発音するジュールだが、今日は滑らかな発音でスッと言い切った。
それも自分だとバレないようにする工夫なのだろう。

それでもユヅルは『cadeau de Noël』だけはちゃんと聞き取れたようだ。
手を震わせながら、差し出されたプレゼントを受け取りながら、

merciありがと père noëlう、サンタさん

と笑顔を浮かべるユヅルの姿はもちろん、録画済みだ。
これは一生の宝物になるだろう。

ジュールは優しくユヅルの頭を撫でると、同じようにリオにも挨拶の声をかけ、同じようにプレゼントを贈った。

『め、めるしぃ』「サンタさん」

必死に喜びの涙を抑えながら、フランス語と日本語が入り混じった挨拶を返すリオの様子に、私の隣でミヅキは

『ロレーヌ総帥、リオの願いを叶えてくださってありがとうございます』

と何度も繰り返した。

『何を言っているんだ。ミヅキ。君とリオのおかげで私もユヅルに素晴らしい思い出を作ることができたのだ。お礼を言いたいのはこちらの方だよ』

肩をポンと叩き、

『これからもユヅル共々頼むよ』

と言うと

『はい。よろしくお願いします』

と少し潤んだ瞳でしっかりと言ってくれた。

ジュールサンタはそれから皆に同じようにプレゼントを配り、

Joyeメリーux Noëlクリスマス et bonneそして、良い année新年を !』

と声を張り上げた。
と同時に私の合図でふっと大広間の電気が消えた。

前もって、私やミヅキたち、そしてジュールにも渡しておいた暗闇でも見える特殊メガネを着け、急いでユヅルの元に向かった。
暗闇で動いて怪我でもしたら大変だからな。

後ろからギュッと抱きしめると一瞬驚いた様子だったが、暗闇でもすぐに私だと気付いたようで、前に回した私の腕を掴んでくれた。

周りを見回すと、ミヅキたちもそれぞれ自分の伴侶をちゃんと捕まえられたようだ。
ジュールはこの暗闇の間にさっと大広間から出ていった。

この間に庭も全て片付いているようだな。

よし、もういいだろう。
私の合図に大広間が再び明るさを取り戻した。

電気がつくとすぐに、ユヅルとリオは

「あっ、サンタさんは?」

とキョロキョロ見回した。
その可愛い姿に私もミヅキも微笑んでしまう。

抱きしめていた腕を緩めてやると、二人して庭が見える大きな窓に駆けていった。
さっきまであったはずの橇もトナカイもいない庭に寂寥感のようなものが漂っていて、リオはガックリと肩を落としていたが、

「サンタさんは大忙しだもん。僕たちみたいにサンタさんに会いたがっている人のところに行かないとね」

というユヅルの言葉にすぐに納得した。
本当に素直で純粋な子だ。

嬉しそうに、もらったプレゼントを胸に抱きしめる姿は見ているだけで微笑ましい。


「ねぇ、弓弦くん! 理央くん! サンタさんからもらったプレゼント、開けてみようよ!!」

そういって駆けてきたソラの屈託のない笑顔に、ユヅルもリオも嬉しそうな笑顔を見せた。

暖炉のそばに戻ったユヅルたちと一緒に、私たちも一緒にプレゼントが見たいといって暖炉の近くに向かった。
コートを脱がせ、後ろから抱きしめるように座らせると、アヤシロたちも同じように後ろから抱きしめていた。

セルジュやジョルジュまで同じように抱きしめているのを見ると思わず笑ってしまう。
きっと二人も可愛い伴侶を抱きしめたくてたまらなかったのだろうな。
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