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愛してくれたらそれでいい
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愛し合ったばかりのユヅルを一人でベッドに残して離れるのは心苦しい。
だがいくらジュールが相手だとはいえ、私にたっぷりと愛されたばかりの色気漂うユヅルの姿を見せるわけにはいかない。
すぐに戻ってくるからと声をかけ、髪にそっとキスをしてからガウンを羽織った。
寝室を出て、部屋の扉を開ければ目の前に心配そうな面持ちのジュールがいる。
『ユヅルさまのお加減はいかがですか?』
最初の一声がそれか。
まぁ、無理もない。
あれだけシーツを交換させているのだからな。
私が恐ろしいほどにユヅルを貪っているのだろうと心配しても仕方がないか。
『心配かけて悪いが、ユヅルは大丈夫だ。今、ジュールを呼んだのはユヅルが朝食にクロワッサンとホットチョコレートが欲しいと言ったからだよ』
『そうでございましたか。食欲がおありでしたら安心でございますね。クロワッサンならすぐに焼き上がるように準備しておりましたので15分ほどお時間を頂戴いたします。そのほかにご入用のものはございませんか?』
『朝食はそれで問題ないが、例の件を進めるようにセルジュに伝えておいてくれ』
『ユヅルさまの件でございますか?』
『ああ、そうだ。正式に夫夫となったのだ。国内外に発表して、ユヅルに手出しするような人間を誰でもどこでも排除できるようにしたい。ユヅルのあの親族とやらがもう二度と手出ししてこぬようにな』
『承知いたしました。ただ、セルジュさまも今は……その……』
『ああ、わかっている。セルジュから連絡が来てからでいい。それまでここから離れる予定もないからな』
『それならようございました。朝食はすぐにご用意いたします』
『ああ、ジュール。ありがとう。ジュールがいてくれて本当に助かるよ』
いつも以上に忙しい夜を過ごしただろうに、ユヅルのことも心配してくれて本当にジュールには感謝してもしきれない。
ジュールがいなければ、私はユヅルと愛し合うこともままならないのだからな。
『旦那さまとユヅルさまのお幸せなご様子を拝見できるだけで私は幸せにございます』
ジュールはそう頭を下げて厨房へ向かった。
ジュールにはいつも心配をかけたが、ユヅルと出会えたことで少しは恩返しができたのかもしれないな。
嬉しそうなジュールの表情を思い出しながら、私は扉を閉めた。
寝室に戻ると、
「ふふっ」
と嬉しそうなユヅルの声が漏れ聞こえた。
思わず声をかけると、ユヅルは私が戻っていることに気づいていなかったのか、驚きの声をあげた。
驚かせてしまったことに詫びつつ、ユヅルの隣に身体を滑り込ませると、
「嬉しそうにしていたのは、これをみていたからです」
と私が嵌めた左手の薬指を見せてくれる。
そうか、これを見ていたからあんなに嬉しそうな顔をしていたのか……。
嫉妬の相手はこれだったか。
己の狭量さを詫びながら、
「私はユヅルを夫にできて人生で最高に幸せだよ」
と伝えると、この上なく幸せそうな顔で返してくれる。
「ユヅルがロレーヌ一族の総帥である私の大事な夫となり、そしてロレーヌ一族の一員となったことを国内外に知らせておく必要がある。私の夫として今までより窮屈な思いをさせることがあるかもしれないが、わかってくれるか?」
ユヅルが私の夫となったことを正式に発表すると伝えると、ユヅルは自分が夫で賛成してもらえるかと少し不安そうにしていたが、そんな心配など杞憂だ。
私が選んだ相手を非難するということはこのロレーヌ一族を敵に回すということになる。
それは、この世界で生きることの全ての権利を放棄するのと同じことだ。
そんな状況に自分が陥るとわかっていて、非難したりするものなど存在するはずもない。
そもそもユヅルは私自身が伴侶に選んだ相手。
言うなれば、ロレーヌ一族で最も位の高い人間だということになるのだから誰にも文句など言わせない。
ユヅルは何も心配しなくていい。
ただ私を一生愛してくれればいいんだ。
そういうと、ユヅルは不安げな表情を一気に吹き飛ばし、私に美しい笑顔を見せてくれた。
それからしばらくしてジュールが焼きたてのクロワッサンと、甘い香り漂うホットチョコレートを運んできた。
もちろんユヅルの大好きなフルーツも用意されている。
それを寝室に運び、ベッドで朝食をとる。
嬉しそうにクロワッサンを頬張るユヅルの笑顔に癒される。
サクサクと美味しそうな音が寝室に響くが、私にとって何よりも美味しそうなものはユヅルでしかない。
目を輝かせて美味しそうにクロワッサンを食べ、ホットチョコレートに口をつけるユヅルを見つめていると、ユヅルの唇にクロワッサンのかけらとチョコレートが付いているのが見える。
それを私の舌で舐めとると、極上の味がする。
やはり私の好物はユヅルのようだな。
合間にフルーツを食べさせると、ユヅルからもお返しがやってくる。
そのお礼にキスを返して、またクロワッサンを食べる。
そんな甘い朝食を終え、ユヅルも私も満足したところで、
「ねぇ、エヴァンさん。僕……お庭にお散歩に行きたいな」
と可愛らしいおねだりがやってきた。
暖房は解除しているから、今から暖めても少し時間がかかる。
風邪を引かせたくないから心配したのだが、
「エヴァンさんが抱っこしてくれたら大丈夫です」
と笑顔で言われたら、いかないわけにはいかない。
私は急いで庭に行く準備を始めた。
だがいくらジュールが相手だとはいえ、私にたっぷりと愛されたばかりの色気漂うユヅルの姿を見せるわけにはいかない。
すぐに戻ってくるからと声をかけ、髪にそっとキスをしてからガウンを羽織った。
寝室を出て、部屋の扉を開ければ目の前に心配そうな面持ちのジュールがいる。
『ユヅルさまのお加減はいかがですか?』
最初の一声がそれか。
まぁ、無理もない。
あれだけシーツを交換させているのだからな。
私が恐ろしいほどにユヅルを貪っているのだろうと心配しても仕方がないか。
『心配かけて悪いが、ユヅルは大丈夫だ。今、ジュールを呼んだのはユヅルが朝食にクロワッサンとホットチョコレートが欲しいと言ったからだよ』
『そうでございましたか。食欲がおありでしたら安心でございますね。クロワッサンならすぐに焼き上がるように準備しておりましたので15分ほどお時間を頂戴いたします。そのほかにご入用のものはございませんか?』
『朝食はそれで問題ないが、例の件を進めるようにセルジュに伝えておいてくれ』
『ユヅルさまの件でございますか?』
『ああ、そうだ。正式に夫夫となったのだ。国内外に発表して、ユヅルに手出しするような人間を誰でもどこでも排除できるようにしたい。ユヅルのあの親族とやらがもう二度と手出ししてこぬようにな』
『承知いたしました。ただ、セルジュさまも今は……その……』
『ああ、わかっている。セルジュから連絡が来てからでいい。それまでここから離れる予定もないからな』
『それならようございました。朝食はすぐにご用意いたします』
『ああ、ジュール。ありがとう。ジュールがいてくれて本当に助かるよ』
いつも以上に忙しい夜を過ごしただろうに、ユヅルのことも心配してくれて本当にジュールには感謝してもしきれない。
ジュールがいなければ、私はユヅルと愛し合うこともままならないのだからな。
『旦那さまとユヅルさまのお幸せなご様子を拝見できるだけで私は幸せにございます』
ジュールはそう頭を下げて厨房へ向かった。
ジュールにはいつも心配をかけたが、ユヅルと出会えたことで少しは恩返しができたのかもしれないな。
嬉しそうなジュールの表情を思い出しながら、私は扉を閉めた。
寝室に戻ると、
「ふふっ」
と嬉しそうなユヅルの声が漏れ聞こえた。
思わず声をかけると、ユヅルは私が戻っていることに気づいていなかったのか、驚きの声をあげた。
驚かせてしまったことに詫びつつ、ユヅルの隣に身体を滑り込ませると、
「嬉しそうにしていたのは、これをみていたからです」
と私が嵌めた左手の薬指を見せてくれる。
そうか、これを見ていたからあんなに嬉しそうな顔をしていたのか……。
嫉妬の相手はこれだったか。
己の狭量さを詫びながら、
「私はユヅルを夫にできて人生で最高に幸せだよ」
と伝えると、この上なく幸せそうな顔で返してくれる。
「ユヅルがロレーヌ一族の総帥である私の大事な夫となり、そしてロレーヌ一族の一員となったことを国内外に知らせておく必要がある。私の夫として今までより窮屈な思いをさせることがあるかもしれないが、わかってくれるか?」
ユヅルが私の夫となったことを正式に発表すると伝えると、ユヅルは自分が夫で賛成してもらえるかと少し不安そうにしていたが、そんな心配など杞憂だ。
私が選んだ相手を非難するということはこのロレーヌ一族を敵に回すということになる。
それは、この世界で生きることの全ての権利を放棄するのと同じことだ。
そんな状況に自分が陥るとわかっていて、非難したりするものなど存在するはずもない。
そもそもユヅルは私自身が伴侶に選んだ相手。
言うなれば、ロレーヌ一族で最も位の高い人間だということになるのだから誰にも文句など言わせない。
ユヅルは何も心配しなくていい。
ただ私を一生愛してくれればいいんだ。
そういうと、ユヅルは不安げな表情を一気に吹き飛ばし、私に美しい笑顔を見せてくれた。
それからしばらくしてジュールが焼きたてのクロワッサンと、甘い香り漂うホットチョコレートを運んできた。
もちろんユヅルの大好きなフルーツも用意されている。
それを寝室に運び、ベッドで朝食をとる。
嬉しそうにクロワッサンを頬張るユヅルの笑顔に癒される。
サクサクと美味しそうな音が寝室に響くが、私にとって何よりも美味しそうなものはユヅルでしかない。
目を輝かせて美味しそうにクロワッサンを食べ、ホットチョコレートに口をつけるユヅルを見つめていると、ユヅルの唇にクロワッサンのかけらとチョコレートが付いているのが見える。
それを私の舌で舐めとると、極上の味がする。
やはり私の好物はユヅルのようだな。
合間にフルーツを食べさせると、ユヅルからもお返しがやってくる。
そのお礼にキスを返して、またクロワッサンを食べる。
そんな甘い朝食を終え、ユヅルも私も満足したところで、
「ねぇ、エヴァンさん。僕……お庭にお散歩に行きたいな」
と可愛らしいおねだりがやってきた。
暖房は解除しているから、今から暖めても少し時間がかかる。
風邪を引かせたくないから心配したのだが、
「エヴァンさんが抱っこしてくれたら大丈夫です」
と笑顔で言われたら、いかないわけにはいかない。
私は急いで庭に行く準備を始めた。
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