大富豪ロレーヌ総帥の初恋

波木真帆

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観光に出かけよう

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四人で話をしていると扉が開き、入ってきたのはユウキとソラ。

ミヅキは驚いているようだが、私はわかっていた。
今日は絶対に遅れないだろうということは。

ソラが観光を楽しみにしていたからな。
少し眠そうにしているのは、きっと興奮して寝付けなかったのだろう。
ユウキが寝かしつけてやったか?
ふふっ。こちらも仲睦まじいようだな。

その後、集合時間までに次々と集まってきて、一番最後に現れたのはアヤシロとケイト。
とはいえ、ちょうど集合時間ぴったりだ。

さすが日本人。
約束の時間に遅れることはないな。

それでも最後だったことにがっかりしているアヤシロだったが、まぁそれもいい思い出だろう。

空港から我が家に来たときは三台の車に分かれて乗ったが、今回は観光地に行くから車は少ないほうがいい。
また、警備の都合もあるから、少し狭くなるが二台の車で観光に向かうことにした。

警察関係者であるジョルジュとスオウを別の車に乗せておけば、万が一何かが起こっても安心だろう。

ミヅキとリオを我々と同じ車にしたのは、この観光を一番楽しみにしてくれていたからだ。
リオのために今回の観光を決めたと言っても過言ではないからな。
リオが喜ぶ顔をユヅルに見せてやりたいと思ったんだ。

車が動き出しただけで嬉しそうな表情を見せるリオにユヅルも嬉しそうだ。

お揃いのコートと手袋を持ってきたと話すユヅルにリオも嬉しそうにしている。

手袋の話題になり、ユヅルはリュカにリオが手袋の編み方を教えてくれるから一緒にと誘っていた。

リュカは自分も誘われるなんてと驚いているようだったが、隣にいるジョルジュはあからさまに嬉しそうな表情を見せた。
きっと……いや、絶対にリュカが習って編んだ手袋をプレゼントするなら、ジョルジュのものに間違いないからな。
私に視線に気づき、慌てて表情を整えているようだったがもう遅い。
そんなジョルジュの表情を見られるのも楽しいな。

ミヅキはそのビデオ通話でリュカからフランス語を習えばいいと提案したが、これはあの意味だと考えていいのだろうか?
あの意味とは、こちらに移住するという私の提案を受け入れるということだ。

本当に二人がこちらに住んでくれれば、いうことなしなのだがな。
決して無理強いをするつもりはないが、いい方向に向かえばいいと望んでいる。

そんな話をしているうちに車は凱旋門のすぐ近くまでやってきた。
フランスの寒さに慣れていないユヅルたちに急いでコートと手袋をつけさせて、まずはジョルジュとリュカが車を降りる。
安全を確認してから、ミヅキがリオを抱きかかえて降りていく。

車を降りる前にユヅルにもう一度だけ、絶対に私から離れるなと言い含めると

「大丈夫。エヴァンさんにくっついてます」

と言ってくれて安心した。

本当なら、観光前に公表しておきたかったところだが、公表した後で初めて公の場所にユヅルとともに出るとなれば、今日の比でないくらいに人が押し寄せてくるだろう。
注目を浴びすぎてミヅキたちを危険に晒すような真似はしたくないからな。
ここは私がユヅルを守るだけだ。

車から降りた途端、夥しい視線を感じる。
きっとミヅキも感じているだろう。
彼らだけの観光ならば、ここまで目立つこともなかったろうが、自分で言うのもなんだが、私はフランスではほとんど知らぬ者がいないほど顔が知られている。

「うわー、寒いっ!」

フランスの寒さに身体を震わせるユヅルを見て、これ幸いとユヅルを自分のコートの中に入れる。
これならユヅルを守りつつ、ユヅルを温めることができる。

そんな私たちの姿に、ミヅキも、後ろの車から出てきたユウキも、アヤシロも同じように自分の愛しい伴侶をコートの中に入れてしまう。

注目は浴びるだろうが、手出しはさせないからいい考えだろう。

そんな我々の姿を見て羨ましくなったのか、ミシェルもまたセルジュのコートに入っている。

私に次いで知名度のあるミシェルだが、ああやっていると誰も無闇に近づけないだろうからセルジュにとっても安心だろうな。

周りはしっかりと警備隊に固めてもらっているし、今のところ問題はなさそうだ。
地下歩道に入り、一路凱旋門を目指すことにした。
リュカがチケットを買ってきて、私たちに一枚ずつ手渡してくれる。

そういえば、チケットを手にしたのはいつぶりだろうか。

大抵は招待されていくものばかりだから、美術館もオペラ劇場もどこも顔パスだ。
ユヅルもリオもチケットを手に興奮しているようだが、私も変わらないかもしれないな。

凱旋門の展望エリアに上がるためには螺旋階段を上がる必要がある。
その階段に続く入り口の前にいるスタッフにチケットを渡すと、

『Amusez-vous b楽しんできてien!』

と声がかかる。

ユヅルは初めて聞く言葉が気になったのか、私になんと言ったか尋ねてきたから教えてやると、そのスタッフに満面の笑みを見せながら、可愛らしく

『Merci!』

と言葉を返した。

スタッフはまさか返事が返ってくると思っていなかったのだろう。
顔を真っ赤にして返事の代わりに手を振ってきた。

これ以上、ユヅルにあのスタッフの顔を覚えさせたくなくて、目の前の螺旋階段に意識を向けさせる。

ユヅルは初めてみる螺旋階段にさっきのスタッフのことは忘れたようだ。
これでいい。
ユヅルの記憶に私以外に男の記憶など必要ないのだからな。
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