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番外編
突然の連絡
しおりを挟む久しぶりの更新ですが、あちらの話と繋がる序章のお話です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
蛍とたっぷりと愛し合い、私たちはお互いに離れてはいけない存在だと確信した。
これからの人生を考えたときに、どうするのが一番良いかを大人として二人でしっかりと話し合いを重ね、蛍がしばらくは活動の拠点を日本に移すことになった。けれどこれはあくまでも一時的な話。なんせ、蛍の活動のメインはこれまでずっと海外であり、蛍の演奏を待っている人が世界中にいる。ずっと日本にいるわけにはいかないことはわかっている。
一時的に活動の拠点を移すことが可能だったのは、蛍が私と出会う前に母を亡くした不調によりこの先二年ほどの海外のオファーを全て断っていたからだろう。蛍にとっては辛いことだったが、それは幸いだったと蛍が言ってくれて嬉しかった。
ただし、日本にいる間でもミシェル・ロレーヌの仕事だけは絶対に断らないという約束付きだが、それはもちろん受けるべきだから問題はない。その時は私が一緒についていくことを決めた。
そして、私の方はといえば、これから段階的に仕事を離れ、父から継いだ会社は今、私の右腕となって働いてくれている従兄弟の浬に二年後を目処に譲るということで話はまとまった。
その後は蛍と海外に拠点を戻し、新しい人生を歩むつもりだ。
浬に話をした時にはかなり驚いていたが、私に愛する人ができたこと、そして、私が蛍の支えになりたいと思っていることを伝えると、その真剣さを理解してくれたようだ。安心して会社を任せられる浬のような存在がいて、本当に良かった。
その話がまとまるまでは少し時間もかかったが、ようやく生活も落ち着き、蛍の日本での生活も順調に進み始めた頃、ベッドで愛し合った後、甘い時間を過ごしていると、蛍のスマホにメッセージの着信を知らせる通知音がなった。
「誰だろう? こんな時間に」
「蛍、スマホを取ろうか?」
「でも今は……」
「気になって心ここに在らずな方が私は嫌だ」
「じゃあ、お願いします」
私たちの愛の時間を邪魔したのは誰だろう。そこは許せないところだが、蛍も私と同じように思ってくれているだけでいい。さっさとなんのメッセージかを確認して、二人の愛の時間に戻りたい。ただそれだけだ。
蛍にスマホを手渡すと、通知画面を見て、
「えっ! ミシェルだ!」
と声をあげた。
「ミシェル・ロレーヌ?」
「はい。もしかしたらコンサートの依頼かな? でもそれにしては珍しい時期だけど……」
そう言いつつ、蛍がメッセージを開くと
「ええーっ!!」
と先ほどよりもずっと大きな声をあげた。
「どうした? 何があった?」
何か困ったことでも起きたのかと慌てて蛍を抱きしめた。
「ごめんなさい、驚かせてしまって……」
「いや、それはいいがどうした?」
「あの、ミシェルがお正月に日本に来るそうなんです」
「えっ? お正月ってもう数日後だが、こんなに急に?」
そう。今はクリスマスも終わり、あと数日で新年を迎える。蛍と過ごすクリスマスは、今までの人生で一番幸せで愛に溢れていた。新年を迎えたら二人でのんびりと温泉にでも行こうかと話をしていたのだが、突然のミシェル・ロレーヌからの連絡にただただ驚きしかない。
「はい。急遽決まったみたいで……僕もびっくりしました。ほら、見てください」
蛍が見せてくれた画面には、間違いなくミシェル・ロレーヌの名前でメッセージが届いていて、
<突然だけど、お正月二日から日本に遊びに行くから都合が合えばケイに会いたいな! できればケイのこと日本のお友達にも紹介したいし、ケイの大切な人にも会わせてもらいたいな。連絡待ってるね>
と書かれていた。
「蛍……私の話をしてくれていたのか?」
「それはもちろん。ミシェルは僕にとって大事なお友達ですから一番に報告しました。匡さんにもいつかミシェルに紹介したいと話をしたでしょう?」
「ああ、だがこんなにも早く紹介してもらえるとは思ってなかったよ」
「困りますか?」
「そんなこと、あるわけないだろう。喜んで会いに行くよ」
「わぁ! 良かった」
だがその後、ミシェル・ロレーヌからの詳しい話がきて、ロレーヌ総帥と先日結婚を発表したばかりのパートナーも一緒に会うということで驚きを隠せなかった。
まさか今、話題の時の人に会うことになろうとは……。
だが、この出会いが私にとっても蛍にとっても大きな転機となったのだった。
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