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初めて尽くし
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『いけーーっ!!』
『やったっ! イエーイっ、タイムリーヒット! 1点追加っ!!』
今回チケットを譲ってもらった席は3塁ベースのすぐそばにあり、選手が目の前を走っていく。
少年野球をやっていたという田辺くんは、かなり興奮した様子で本場の野球を楽しんでいるようだった。
点数が入るだけでなく、ヒットを打つたびに俺だけでなく、隣にいるアメリカ人とも楽しそうにハイタッチをしている。
興奮しているからか、英語も日本語も混ざったような感じになっているのに気づいてなさそうだ。
ふふっ。あんなに頼もしいのに、ここでは子どもみたいだ。
そんなギャップも彼の魅力の一つだろう。
こんなに楽しんでくれるなら、野球観戦に誘った甲斐があったというものだ。
勧めてもらっていたポップコーンとピーナッツを手に、久しぶりに心から楽しめる時間を過ごした。
ああ、こんな充実した休日、いつぶりだろう。
宏樹とはここ半年くらいはほとんど家の中にいることが多かった。
お互い仕事で疲れていたということもあるけれど、今思えば、俺と一緒にいるところをあんまり見られたくなかったのかもしれないな。
「あーっ。今日の試合、最高でしたね」
「ああ。あれだけ接戦だとずっと興奮できて楽しかったな。久しぶりにあんな大声出したよ」
「大智さん、今日は誘ってくれてありがとうございました。あんないい席でメジャーの試合観られるなんて、一生に一度あるかないかの幸運ですよ」
「ふふっ。大袈裟だな。でも、元々貰い物だし、それに助けてくれたお礼だから気にしないでいいよ」
「次の休みはどこに行きましょうか?」
「えっ? ああ、そうだな……」
そういえば、田辺くんがここにいる間、いろいろ付き合うって話だったっけ。
それにしても話を持っていくのが上手いな。
本当に優秀な営業マンなんだろうな。
「一人じゃ行きにくい場所なら……そうだな。遊園地とか?」
「えっ? 遊園地、ですか?」
あっ、流石に男二人じゃ行かないか。
失敗した。
「あっ、じょうだ――」
「いいですね!! 私、本場のところに行きたかったんですよ。流石に一人であそこは行きにくいですからね。大智さん、次のお休みはいつですか?」
「一応暦通りに休みだけど……」
「よかったです。じゃあ、今度のお休みは遊園地に行きましょう。社宅も同じ場所なら、相談もしやすいですね」
今日知り合ったばかりの相手を遊園地に誘うなんて、いつもの俺ならありえないのに。
アメリカという環境が俺を変えてくれているのかもしれないな。
「あっ、車。こっちです」
「へぇ、結構いい車だな」
「あの社宅で借りれるんですよ」
「そうなのか、俺は免許持ってないから」
「ああ、そうなんですね。私は、大学の時に免許とって、入社して海外出張に行かせてもらえるようになったので、国外運転免許を申請したんですよ。せっかく海外に来たなら、いろんなところに行ってみたいですからね」
「やっぱり若いって、行動的だな」
「何言ってるんですか、大智さんもまだまだ若いですよ」
「大学生に見えるし?」
「あ、いや。それは……」
「ふふっ。冗談だよ」
「もう、大智さん! 驚かさないでくださいよ」
「ははっ」
こんなふうに揶揄って、大口開けて笑える相手ができるなんて思わなかったな。
「大智さん、眠くなったら寝てていいですよ」
「何言ってるんだ。運転させて隣で寝るなんてそんなことしないよ」
「ふふっ。優しいんですね」
「そんなことはないよ」
そう言ったけれど、田辺くんはそんなことありますよと笑ってくれた。
「ああ、大智さん。明日の予定は何かありますか?」
「いや、今日は出かけたからゆっくり過ごそうかと思っているけど、何かあるのか?」
「いえ。せっかく同じ社宅だから、一緒に朝食でもどうかなと思いまして」
「朝食?」
「はい。こっちに来て三週間になるんですが、いい加減和食が食べたくなってきて、日本から食材を送ってもらったのがちょうど昨日届いたんですよ。よかったら一緒に食べませんか?」
「えっ? 田辺くんが作るってこと?」
「はい。こう見えて料理は得意なので任せてください。土鍋で炊くご飯は最高ですよ」
「土鍋炊きご飯……っ」
ここに来てまだそんなに経っていないのに、もうすでに美味しいご飯が恋しいと思っていたところだ。
「ふふっ。ぜひ食べに来てください」
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「はい。あ、あと……田辺くんじゃなくて、名前で呼んでください」
「えっ? 名前でって……透也、くん……?」
「呼び捨てで構わないですよ」
「いや、まだ流石にそれは……」
「じゃあ、とりあえず透也くんでいいです。それで呼んでください」
会った初日に名前呼び合うことになるなんて……。
こんなの初めてだ。
『やったっ! イエーイっ、タイムリーヒット! 1点追加っ!!』
今回チケットを譲ってもらった席は3塁ベースのすぐそばにあり、選手が目の前を走っていく。
少年野球をやっていたという田辺くんは、かなり興奮した様子で本場の野球を楽しんでいるようだった。
点数が入るだけでなく、ヒットを打つたびに俺だけでなく、隣にいるアメリカ人とも楽しそうにハイタッチをしている。
興奮しているからか、英語も日本語も混ざったような感じになっているのに気づいてなさそうだ。
ふふっ。あんなに頼もしいのに、ここでは子どもみたいだ。
そんなギャップも彼の魅力の一つだろう。
こんなに楽しんでくれるなら、野球観戦に誘った甲斐があったというものだ。
勧めてもらっていたポップコーンとピーナッツを手に、久しぶりに心から楽しめる時間を過ごした。
ああ、こんな充実した休日、いつぶりだろう。
宏樹とはここ半年くらいはほとんど家の中にいることが多かった。
お互い仕事で疲れていたということもあるけれど、今思えば、俺と一緒にいるところをあんまり見られたくなかったのかもしれないな。
「あーっ。今日の試合、最高でしたね」
「ああ。あれだけ接戦だとずっと興奮できて楽しかったな。久しぶりにあんな大声出したよ」
「大智さん、今日は誘ってくれてありがとうございました。あんないい席でメジャーの試合観られるなんて、一生に一度あるかないかの幸運ですよ」
「ふふっ。大袈裟だな。でも、元々貰い物だし、それに助けてくれたお礼だから気にしないでいいよ」
「次の休みはどこに行きましょうか?」
「えっ? ああ、そうだな……」
そういえば、田辺くんがここにいる間、いろいろ付き合うって話だったっけ。
それにしても話を持っていくのが上手いな。
本当に優秀な営業マンなんだろうな。
「一人じゃ行きにくい場所なら……そうだな。遊園地とか?」
「えっ? 遊園地、ですか?」
あっ、流石に男二人じゃ行かないか。
失敗した。
「あっ、じょうだ――」
「いいですね!! 私、本場のところに行きたかったんですよ。流石に一人であそこは行きにくいですからね。大智さん、次のお休みはいつですか?」
「一応暦通りに休みだけど……」
「よかったです。じゃあ、今度のお休みは遊園地に行きましょう。社宅も同じ場所なら、相談もしやすいですね」
今日知り合ったばかりの相手を遊園地に誘うなんて、いつもの俺ならありえないのに。
アメリカという環境が俺を変えてくれているのかもしれないな。
「あっ、車。こっちです」
「へぇ、結構いい車だな」
「あの社宅で借りれるんですよ」
「そうなのか、俺は免許持ってないから」
「ああ、そうなんですね。私は、大学の時に免許とって、入社して海外出張に行かせてもらえるようになったので、国外運転免許を申請したんですよ。せっかく海外に来たなら、いろんなところに行ってみたいですからね」
「やっぱり若いって、行動的だな」
「何言ってるんですか、大智さんもまだまだ若いですよ」
「大学生に見えるし?」
「あ、いや。それは……」
「ふふっ。冗談だよ」
「もう、大智さん! 驚かさないでくださいよ」
「ははっ」
こんなふうに揶揄って、大口開けて笑える相手ができるなんて思わなかったな。
「大智さん、眠くなったら寝てていいですよ」
「何言ってるんだ。運転させて隣で寝るなんてそんなことしないよ」
「ふふっ。優しいんですね」
「そんなことはないよ」
そう言ったけれど、田辺くんはそんなことありますよと笑ってくれた。
「ああ、大智さん。明日の予定は何かありますか?」
「いや、今日は出かけたからゆっくり過ごそうかと思っているけど、何かあるのか?」
「いえ。せっかく同じ社宅だから、一緒に朝食でもどうかなと思いまして」
「朝食?」
「はい。こっちに来て三週間になるんですが、いい加減和食が食べたくなってきて、日本から食材を送ってもらったのがちょうど昨日届いたんですよ。よかったら一緒に食べませんか?」
「えっ? 田辺くんが作るってこと?」
「はい。こう見えて料理は得意なので任せてください。土鍋で炊くご飯は最高ですよ」
「土鍋炊きご飯……っ」
ここに来てまだそんなに経っていないのに、もうすでに美味しいご飯が恋しいと思っていたところだ。
「ふふっ。ぜひ食べに来てください」
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「はい。あ、あと……田辺くんじゃなくて、名前で呼んでください」
「えっ? 名前でって……透也、くん……?」
「呼び捨てで構わないですよ」
「いや、まだ流石にそれは……」
「じゃあ、とりあえず透也くんでいいです。それで呼んでください」
会った初日に名前呼び合うことになるなんて……。
こんなの初めてだ。
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