俺の天使に触れないで  〜隆之と晴の物語〜

波木真帆

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オーナーの反応は? <side晴>

今日は日曜日。
久しぶりに予定のない休日だ。
朝からウキウキしてしまってお休みの日なのにいつもと変わらない時間に目が覚めてしまった。

隆之さんはどこかへ行こうと言うだろうか?
僕はお出かけでも家で過ごすのでも隆之さんと一緒の時間を過ごせるならそれが良いんだ。

『うーん』

僕がじっと見つめていたからか、隆之さんが目を覚ましたみたい。

パチリと目を開けると、僕が朝の挨拶をするよりも早く、長い腕で捕らえられた。

「捕まえた。晴、おはよう」

朝起きたばかりとは思えないほど爽やかな笑顔に照れてしまう。

「隆之さん、おはようございます」

朝の挨拶を交わす、ただそれだけのことが幸せに感じられる。
こういうのって良いな。

「早起きなんだな。どこか行きたいところでもあるか?」

「ううん。久しぶりに何の予定もなく隆之さんと居られるんだと思ったら、嬉しくてつい目が覚めちゃったんです。ふふっ」

「朝から嬉しいことを言ってくれるんだな。俺も晴と一緒で嬉しいよ」

僕たちはベッドに横たわりながら、とりとめのないことを話したり、身体に触れ合ったりただただのんびりと幸せな時間を過ごした。


そんな楽しい時間を打ち消すように僕のお腹がなってしまい……隆之さんに笑われながら朝食を食べることになった。

昨日神楽百貨店のデパ地下で買っておいたパンとフルーツを用意している間に隆之さんが珈琲を淹れてくれて、ダイニング中にいい香りが広がっていく。

バターたっぷりのクロワッサンに合いそうな濃いめの珈琲が美味しそうだ。

食事と片付けを終え、ソファーに座ると隆之さんは後ろから僕を抱きしめるように座り、ソファーの前に置いてある机にノートパソコンを開いて見せた。

「これ、昨日の温泉付きコテージのHPなんだけど、ここ本当に良いところだよ」

見ると、コテージの中には3種類の温泉がある。
2つの広い客室にそれぞれ広い露天風呂と、そして、2階建てのコテージの屋上にある岩風呂。
この岩風呂がこのコテージの一番の売りであり、もちろん外からは見えない設計になっている。

食事は基本的には材料のみが付いていて、それぞれコテージにあるテラスでバーベキューを楽しんだり、最新設備のキッチンで料理もできる。
そして、あの洋食屋の悠さんが言っていたように前もって頼めば調理をしてもらうことも可能だそうだ。

材料はステーキ肉や伊勢海老、鮑などの魚介類などもう至れり尽くせりのラインナップだ。

「すごーい! ほんとうにこんな凄い旅行券貰ってよかったのかなぁ……」

「まぁ、主催者側が良いって言ってたんだから素直に貰っておいたほうが良いさ。それよりも、これで楽しんであげたほうが喜んでくれるよ」

「そうですね。でも、見れば見るほど2人で行くのはもったいないですね。せっかくだからやっぱり理玖とオーナーも誘いましょう」

理玖と旅行なんてこれから先もうないかもしれないし、卒業前の良い思い出になりそう。

「そうだな。まぁ、2人に無理強いはしないが、こんなにじっくりと喋る機会は滅多にないからな。4人で行けたら楽しそうだな」

うん、うん。
理玖とオーナーが付き合うきっかけとか聞いてみたいな。理玖の恋人の話とか聞いたことないからなー。
僕も隆之さんの話とかできる人いないし、いろいろと聞いて欲しい。
こういうのって、なんだかドキドキしちゃうな。

「今日は日曜日だし、アルは店を開けてるんじゃないか?」

「あっ、そうかも。僕、理玖に連絡してみる」

邪魔になったらいけないから、最初はメッセージにしとこうかな。

メッセージアプリで理玖に

〈ちょっと話したいことがあるから、時間できたらメッセージか電話ください〉

と送ってみると、ものの数分でメッセージが返ってきた。

〈どうした? なんかあった?〉

〈今日はアルバイトある?〉

〈いや、俺は休みだけど店は開いてるよ。食べに行くのか?〉

「隆之さん、お店開いてるって! 理玖はバイト休みだって言うから、お店にみんなで行ってみますか? そしたらオーナーにも話せるし」

「ああ、そうだな。理玖が行けそうならな」

???

良くわからないけど、まぁ良いや。
理玖に行けるか聞いてみよう。

〈ちょっとオーナーと理玖に話したいことがあるから夕方お店に食べに行こうかなって……理玖は夕方シュパースに行けそう?〉

〈うーん、どうかな。もう少し様子見てから返事しても良いか?〉

「隆之さん! 理玖、すぐに返事は出来そうにないって」

「まぁ、そうだろうな……。とりあえず、理玖には電話で話しておいて、詳しい話はアルにしておくということにしたらどうだ?」

隆之さんは理玖が行けそうにない理由を知ってるみたいだけど、なにかあったんだろう?
まぁ、コテージ行けたらその時聞けばいいか。

「わかりました。理玖に聞いてみます」

〈無理そうなら無理しなくていいよ。少し電話で話せるかな?〉

そう送ると、僕のスマホに理玖からの着信があった。

ーどうしたんだ? そんなに急ぎの用事でもあったか?

ーうん。あのね、実は――――――でね、
理玖とオーナーも一緒に行けるかなって。

ーえーーっ! すげぇじゃん!俺は行きたいけど、ア……オーナーはどうかな? 仕事休めたら行けるかもな。

ーだから、名前でいいってば。ふふっ。じゃあ理玖はOKってことでいい?

ーああ。オーナーが行けるならな。オーナーが無理なら、香月たちの邪魔はできないからやめとくよ。

ー邪魔ってそんなこと気にしなくていいのに。

ーいや、気にするだろ。

ーとにかく、じゃあ詳しい話をしに夕方行ってくるね。もし、来れそうならオーナーに連絡して。あっ! さっきの話はまだ内緒でね

ーああ、わかったよ。じゃあな。

僕は電話を切って、隆之さんに今のやりとりを教えたけれど、大体聞こえてたみたい。

「理玖が行きたいって言ってるなら、アルはOK出しそうだな。あとは日程の問題か。俺たちとアルの店の都合を合わせて、そうだな9月か10月くらいに行けたらいいな」

「そうですね。じゃあ出かける準備しなくちゃ! なんだか楽しくなってきましたね」

「ああ、旅行は計画を考えるのが楽しみでもあるからな」

僕たちはお互いに服を選ぶと、あっという間に用意を終えて家を出た。

シュパースに着くと、昨日休みだったせいか今日は大賑わいだ。

「席、空いてるかな……」

ポツリとそう呟くと、隆之さんには聞こえていたようで、

「大丈夫だよ、アルに行くって連絡しておいたから……奥の個室空けておいてくれてるそうだ」

と教えてくれた。

そうなんだ、良かった。

ホッと安心してシュパースの扉を開けると、僕たちを待ち構えていたようにオーナーが出てきた。

「ハル、来てくれてありがとう! 今日は残念ながらリクは休みなんだが楽しんでいってくれ」

オーナーにお礼を言って、奥の個室へと入りとりあえずは食事を注文してひさびさのシュパースの料理を楽しむことにした。

「ああ、やっぱりここの料理美味しいなぁ……」

バイトに入っていた時は賄いでいろいろと食べさせてもらってたけれど、今はバイトを休んでいるからなかなか食べる機会にありつけない。
しかも、賄いはメニューにないものも作ってもらえてたからな。賄いを食べられるのが楽しみだったんだよね……なんて思いながら、噛み締めるように料理を味わった。

食後にデザートを頼もうかなんて話していた時に、ようやくオーナーが部屋にやってきた。

「待たせて悪かったね。今日はずっとお客さまが途切れなくて……」

「いや、繁盛してるようで何よりだよ。それより、少しはゆっくり話せるか?」

「ああ、しばらくは大丈夫だ。どうした、何かあったのかい?」

「その前に晴のデザートと飲み物を注文させてくれ」

隆之さんがそう言ってくれたので、話の前に《アプフェルシュトルーデル》と《アプフェルショーレ》をお願いした。

《アプフェルシュトルーデル》は、林檎をパイ生地のようなピザ生地のような食感の生地で包んだものに生クリームやバニラアイスなどを添えて食べるもので、イメージとしてはアップルパイに近いかもしれない。

「ははっ。ハルは本当にApfelリンゴが好きだな」

「ここのアプフェルショーレ飲んでから、林檎大好きになったんですよ。ここのは格別ですもんね」

すぐに頼んだデザートを持ってきてもらって、やっとあの話に入った。

「アル、一緒に旅行に行かないか?」

「旅行? ユキ、突然一体なんだ?」

「実は晴が凄い旅行券を手に入れてな……」

隆之さんがあのパンフレットを見せながら、オーナーに説明を始めると、オーナーの目が輝き始めた。
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