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助手席にいてほしい

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「このコテージに4人泊まれるんだ。だから、俺たちとアルと理玖と4人で行けたら楽しいだろうと思ってさ」

Wunderbar素晴らしいな! 是非一緒に行かせてくれ! きっとリクも行きたいっていうはずだよ!」

やっぱりな。アルなら行きたいって言ってくれると思った。
何せ、理玖がこういうところ好きそうだからな。

「じゃあ4人で行こう! 日程だけ先に決めて予約しておかないといけないから再来週までに予定決められるか? 出来たら、そうだな……都合の良い日を3パターンくらい用意してもらえると助かるな。それに合わせて俺たちも予定を組むよ。できれば週末の方が有難いが、早めに言えば平日も有休取れるから大丈夫だ」

「ああ、わかったよ。リクも喜ぶだろうな。あっ、リクは知っているのかい?」

アルとしてはサプライズにしたかったのかもしれないな。申し訳ない。

「悪い……先に話してしまった」

「ああ、良いんだ。それなら、今日帰ってからすぐ話が進められるよ」

晴はデザートを食べながら、アルが旅行に乗り気になってくれている様子に大満足のようだ。

「ハル、君はくじ運強いんだな。きっと日頃の行いがいいんだろうな」

「ふふっ。ありがとうございます。このコテージ、近くにテーマパークもあるんですよ。行きか帰りに寄ってみませんか?」

「ああ、それも楽しそうだな。日程が決まったら、旅行のスケジュールを決めよう。みんなで食事でもしながら」

アルはすっかり上機嫌だ。
もしかしたら日本に来てから温泉旅行にいくのは初めてなのかもしれないな。
初めてがあんなすごいコテージだと、もう他所のところは物足りなくなるかもしれないが……。
まぁ、理玖と一緒ならどんなところでも幸せなんだろうな、アルは。

「そういえば……オーナー。お誕生日おめでとうございます」

「ああ、ありがとう」

「理玖から何を貰ったんですか?」

「ふふっ。それはいくらハルでも教えられないな。私とリクのヒミツだからな」

いたずらっ子のような笑顔を見せながら、パチンとウインクをして見せるアルはきっと素敵な誕生日を過ごしたことだろう。

あの時の誤解も無事に解けたようだな。
本当に良かった。

「そういえば、今日本当は理玖もここに誘ったんですよ。ここで旅行の話出来たらいいなって。でも、ちょっと無理そうだって言ってて……オーナー、何か知ってます?」

「えっ?」

「いや、昨日一緒だったから、理玖が今日来れなかった理由、知ってるのかなと思って……」

無垢な晴はきっと分からないんだろう。
アルの誕生日に理玖が心を込めたお祝いをしてくれたなら、どんな夜を過ごしたかなんて……。
だから、今日理玖が来れなかったなんて……。

アルが困るのもわかるな。
うーん、なんと説明するべきか悩むところだ。

「昨日、実はワインを飲ませすぎちゃってね、うちで寝かせてるんだ」

アルは悩んでいた様子だったが、結局二日酔いということにしたみたいだ。

「ああ、そうなんですか。たしかに横になってるような声でした」

「だろう。リクは強いんだが、昨日は2人で5本くらい空けてしまったからな。さすがに酔ったみたいだったよ。みんなで旅行に行った時は飲ませすぎないようにするから安心してくれ」

「昨日はオーナーの誕生日だったからはしゃいじゃったんですね。理玖も意外と子どもだなぁ。ふふっ」

子どもなのはハルの方だろうと言いたげな目つきをしているアルを見ながら、俺は旅行の話題に戻すことにした。

「車はどうする? それぞれで現地集合にするか一台で行くか。一台で行くならレンタカー借りた方がいいな」

「せっかくみんなで行くんだから同じ車が良いだろう。ああ、車なら任せてくれ。山道なんかを走るのにぴったりなやつがあるんだ」

「じゃあ、車はアルに任せるか。途中で交代も出来るからな」

「ああ、その時は頼むよ」

車で行く旅行は初めてだな。
なんだか俺までウキウキしてきた。

「僕も理玖も免許持ってるんでみんなで交代していけますね」

晴が嬉しそうにそう言っていたが、悪い……晴と理玖には運転させるつもりはないんだ。
きっとアルも同じ気持ちだろうと思うんだが、俺たちが運転するときには晴と理玖には助手席にいて欲しいんだ。

俺にとって車の助手席は聖域と言ってもいい。
今まで恋人はいたことはあったが、助手席に座らせたのは晴が初めてだ。
晴が助手席に座っているだけで幸せなんだよな。

「ハルとリクは長距離を走ったことはないだろう? 慣れない人が突然高速なんかは難しいんじゃないかな。だからハルとリクには道案内をして欲しいな」

「たしかに考えてみたら免許とってから何度かしか乗ってないです……。それで高速は厳しいですよね。わかりました! 僕、道案内に徹します!」

良かった。アルの機転のおかげで楽しいドライブになりそうだ。

旅行の話も終わったところで、タイミングよくアルのスマホに着信が入った。

「おっ、リクだ。ちょっと失礼するよ」

そそくさと部屋を出て行くアルを見て、きっと愛しの理玖に愛の言葉でも囁くんだろうなと思った。

今日動けなくなるほどに愛し合った恋人をベッドに残して今日の仕事に来るのは後ろ髪を引かれる思いだったろうな。

「オーナー、今ごろ理玖に旅行の話をしてるでしょうね。理玖も行きたがってたからきっと喜ぶだろうな。ふふっ」

「そうだな。2人の邪魔するのも申し訳ないし、そろそろ帰るか。アルも早く理玖のところに帰りたいだろうし」

「ああ、そっか、そうですね」

帰り支度をしていると、電話を終えたアルが戻ってきた。

「遅くなったな……って、もう帰るのかい?」

「ああ、今日は旅行の話ができて良かったよ。都合が良い日が決まったら連絡してくれ」

「ああ、わかった。ハル、ユキ、素敵な知らせをありがとう」

嬉しそうに笑うアルを見て、きっと電話で理玖と甘い会話を交わしたんだろうと思いながら、俺たちは家へと帰った。
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