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心まで麗しい人 〜ランハートside

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翌朝、彼が朝食を終えたであろう時間を見計らって屋敷へと戻った。
途中でレニーの店に寄り、昨日見た彼の身体を思い出しながらそのサイズに合う服を選んだ。
彼に早く会いたくてとりあえず選んだものだったが、まぁいい。
レニーには後で大切な人を連れてもう一度服を買いにくることを伝え、その彼の前では私を『ランハート』と呼ぶようにと指示して急いで屋敷へと向かった。

昨夜は眠ったままの姿だったが、初めて歩いている姿を見て心がときめくのがわかった。
ああ、やはり彼は私の運命の人……。

その美しい運命の人はヒジリと名乗った。
22歳だというのはどうにも信じられない思いだったが、ヒジリがそういうのなら確かなのだろう。

私が昨夜着替えさせたままの夜着を身につけているヒジリに、私がさっき買ってきた服をグレイグがここの主人が昔着ていた服だと言って手渡した。
なぜ私がヒジリのために買ったものだと言わないのだと一瞬怒りを覚えたが、グレイグのことだ。
何か考えがあるのだろう。
その場ではグッと気持ちを押し殺し、着替えのためにヒジリが寝室に入るのを待ってグレイグに話しかけた。

「なぜ私が買ったものだと言って渡さなかったんだ?」

「恐れながら、ヒジリさまは人から無償でいただくことをお気になさるようでございます。
ですので、旦那さまがお買いになったものだとお伝えすれば遠慮されます。
新品ではないとお分かりになれば、しかもそれがここの旦那さまがお召しになっていた物だとお伝えすればヒジリさまもお受け取りになると考えたのでございます」

「なるほど。そうか。さすがだな、グレイグ」

「いいえ、滅相もございません」

グレイグの深い考えに大いに納得していると、着替え終わったヒジリが声をかけてきた。

その声に振り向くと、なんということだろう。
この世のものとは思えないほど可愛らしく、そしてよく似合っていた。

ヒジリはもしかしたら彼のいた世界では上流階級の人間だったのかもしれないとさえ思わせるほど美しく着こなしていた。
あまりにもよく似合っていて私は思わずヒジリを抱きしめてしまった。

その身体のなんと気持ちの良いことだろう。
運命の相手だと証明するかのように私にピッタリと寄り添うその感覚。

ああ、早くヒジリにも私が運命の相手だと告げたいくらいだ。
だが、ここで話をして私のことを怖がり逃げられでもしたら大変だ。

もう少し待たなければ。
私は必死に自分の欲望を抑えながらヒジリの身体を離した。

ヒジリに合う服を揃えてやるためにレニーの店へと連れて行くことにしていたが、足を怪我していることだし、私が抱きかかえて連れて行くつもりでわざと靴は買ってこなかった。

さっとヒジリを抱き上げるとヒジリは最初こそ驚いていたものの、理由を告げると大人しくなり私の腕に抱かれた。

そうやって身体を委ねてくれることを私がどれほど幸せに感じているかわかっていないのだろうな。

私はヒジリの柔らかな身体と心地良い匂いに満ち足りた気分で抱きかかえながらレニーの店へと連れていった。

レニーには先ほど私のことは『ランハート』と呼ぶようにと伝えておいた。
いつもなら私のことを『シェーベリー公爵さま』とよぶレニーはかなり言いにくそうにしていたがそれでいい。

レニーは私の運命の人であるヒジリに心を惹かれている様子だったが、思いっきり念を押すとようやく自分の立場を理解したようで急いでヒジリのサイズを測っていた。

ヒジリのサイズに合う服をいくつか揃え、それとは別に上着から下着まで全てを揃えた。

ヒジリはこんなにたくさんと恐縮しているようだったが、こんな服どれだけ買ってもわがシェーベリー家にとっては痛くも痒くもない。
皆、隙あらば私から買ってもらおうとするものばかりだというのにヒジリには驚かされる。

私が選んだ服に身を包み試着室から出てきたヒジリはあまりにも美しく、誰にも見せたくないとまで思ってしまった。
それと同時にこんなに麗しい人が私の運命の人なのかと幸せに浸らずにはいられなかった。

レニーの店で靴まで買ってしまったのは失敗だった。
ヒジリが私の腕から下りて、自分で歩くと言い出したからだ。
まだ踵の傷も治っていないというのに。
痛くなったらすぐに言うように! と念を押して、ヒジリに紹介する家へと向かった。


読んでいただきありがとうございます!
たくさんの方に読んでいただけて喜びで震えております!!
早く続きを読んでいただきたくて推敲が終わるごとにちまちまと更新しておりますので読みにくいかもしれませんが楽しんでいただけれると嬉しいです♡
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