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番外編
愚か者たちの結末
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朝陽を苦しめた奴らのその後を書いてみました。
二年以上も経ってすっかり忘れ去られてるでしょうが(汗)
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side葛井幹太>
「南條朝陽、あいつを主役から引き摺り下ろしてくれたら、お前を次の作品のヒロインになれるように和泉監督に話をつけるよ」
「本当?」
「ああ、俺が嘘ついたことなんてないだろ」
「うん、わかった。幹太の言うとおりにする」
「いい子だ。たっぷりと可愛がってやるよ」
「ああっんっ!! そこ、きもちいいっ!!」
バカな女だ。
こんな尻軽女なんかヒロインになれるわけないだろうが。
和泉監督が好むのはこいつとは真反対の清純派の女優。
天地がひっくり返ったってこんな女をヒロインになんかするはずもないが、俺の目当てはあの忌々しい南條朝陽を引き摺り下ろすことだけ。
俺、葛井幹太は劇団桃花の社長を父にもつ、その事務所のトップ俳優。
舞台をメインに活躍するイケメンで長身な俺はいつだって主役をはってきた。
だが、ここ最近俺の地位を脅かす奴がいる。
顔はそこそこイけてるが、イケメンというよりは女顔の役者。
南條朝陽は俺の舞台で端役ばかりを務めていたが、正直演技力はなかなかのものだった。
それは俺だって認める。
だが、あくまでもそれは端役としての演技力だ。
まだまだ俺の足元にも及ばない存在だったはずなのに、なぜか突然和泉監督の目に留まり、同じ舞台に立つようになってきた。
最近では端役のくせに俺より存在感を出しやがって、同じ舞台に立っていても俺が霞むようになってきた。
本当にムカつくやろうだ。
あいつも腹の中じゃ俺のことバカにしてるんだろう。
そう思ったら言いたいことを抑えきれなくなった。
舞台休憩の合間にも共演の俳優たちと、あいつの話で盛り上がった。
「可愛い顔してると簡単に主役が貰えていいよな」
「知ってるか、あいつ。ああ見えて下の方はすごいらしいぞ」
「あいつはそれで仕事もらってるんだ。枕俳優やってんだよ」
「恋愛も何も知らない童貞みたいな顔しやがって、裏では共演の女たちを食い漁ってるって話だぞ」
「聞くところによると和泉監督もあいつの身体に陥落したらしいぜ」
「へぇー、役もらうために年増女まで食うとかプライドも何もないんだな」
どうやらあいつを疎ましく思っていたのは俺だけじゃなかったらしい。
ははっ。やっぱりな。
あんなやつ、さっさと辞めたらいいのに。
俺たちが流しまくった噂はかなり広まっていたけれど、南條朝陽は全く気にする様子もなく舞台に出続けていた。
それがさらに俺のイライラを募らせたんだ。
そんな時、突然ものすごいオファーがうちの劇団に舞い込んできた。
――南條くんを主役にして、舞台を作ることにしたの。彼ならきっとものすごいヒット作になるわ! 葛井くんには、彼のライバル役として頑張ってもらうからよろしくね。
和泉監督直々のオファーにもはや驚きしかない。
俺も出ているならと脚本に目を通しを見ると、今までなら俺が主役でやっていたはずのところに南條朝陽の名前が書かれ。最低最悪なクズ男に俺の名前が書かれていた。
「こんな役……っ、嫌に決まってんだろ!! なんで俺がこんな役なんだよ!」
苛立ちが止まらず、事務所の社長でもある父親に文句を言ったけれど、
「仕方がないだろう。和泉監督直々のオファーなんだ。私だって、本当はお前に主役をやってもらいたいと思っているよ。だが、これは南條朝陽を主役に当て書きで書かれた脚本だから、南條朝陽以外ではやれないというのだからどうしようもないんだ。わかってくれ!」
と言われてしまった。
今までならどんなことをしてでも、俺の役になるように尽力してくれていたのに……。
くそっ!
面白くない!
「あの、葛井さん。今までずっと葛井さんを目標に芝居を続けさせてもらっていました。今回、葛井さんとW主演のような形で出られることは本当に嬉しく思っています。ご迷惑をかけるかもしれませんが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」
舞台顔合わせの日、南條朝陽は俺の姿を見るや否や、笑顔で駆け寄ってきてまるで優等生のような挨拶をしてきた。
そんなこと一ミリも思ってないくせに!
本当にムカつく!
大体お前が主役はるなんて十年早いんだよ!
そう怒鳴りつけてやりたいのを必死に抑えて、そこは軽くスルーした。
調子乗っていられるのも今のうちだからな。
せいぜい主役になれると楽しんでいればいい。
その日、和泉監督の声掛けで、出演者みんな揃って食事会をすることになった。
ここであいつをハメてやる。
あいつへの信頼も全て失墜させてやるんだ。
それこそ和泉監督があいつへの期待を全て失うくらいに。
「恵那、しっかりやれよ」
「うん、わかってるって! 任せて!」
食事会が始まってしばらくして、店中に恵那の叫び声が響き渡った。
俺たちよりも速く店員たちがその部屋に突入し、どう見ても襲われたとしか思えない恵那の姿と二人っきりで個室にいた南條朝陽の姿を発見し、店員たちはすぐさま南條を羽交い締めにして警察を呼んだ。
南條は茫然自失の状態だったようだが、結局密室での行為ということで証拠不十分で釈放されたらしい。
だがこの狙いは逮捕されたかどうかの問題じゃない。
そんな騒ぎを起こしたかどうかだけ。
こんなスキャンダルを起こした俳優を主役にするわけがなく、スポンサーも一気に降りて和泉監督の舞台の話は消えてなくなった。
俺としては舞台の話が消えるのは予想外だったが、まぁいい。
結局あいつは事務所を首にしたと父が言っていた。
けれど、たっぷりと違約金でも払わせればよかったのに、和泉監督の方から違約金はいらないと言われたそうで首にしただけで終わったそうだ。
そこまで和泉監督が南條に温情をかけるとは思わなかったけれど、まぁとりあえずあいつがいなくなってくれたらいい。
これでうちの劇団はまた俺を主役にして進んでいくんだ。
そう思っていたのに…‥。
あいつの事件をきっかけに所属俳優が次々と辞めて行って、結局残ったのは俺一人。
決まっていた仕事もあったのに、それを遂行することもできず、違約金の支払いでいっぱいになり、あっという間に劇団桃花は廃業になってしまった。
俺と父の元には莫大な借金だけが残った。
これを二人で返し続けるしかないと話していたのに、父親が突然失踪し、莫大な借金は俺だけで返さなければいけなくなった。
毎日生きていくのにもお金がかかるというのに、数億を超える借金をそうそう払えるわけがない。
劇団のあったビルを売り払い、父親の持っていた車も全て売り払ったけれど、借金はまだまだ残っている。
家を無くしてしまった俺は、どうすることもできずに街中を歩いていた。
「すみません、ちょっとお時間よろしいですか?」
久しぶりに誰かに声をかけられた。
やっぱり俺はトップ俳優なんだと喜んで顔を上げると、そこにはスーツの男性が三人、俺の周りを囲んでいた。
しかもパツパツのスーツの下にとんでもない筋肉を隠し持ってそうな男ばかり。
三人揃っての笑顔がかなり怖い。
「な、なんですか?」
「いや、お兄さん。すごくかっこいいなと思って。MVに出てくれる俳優を探してるんでもしよかったらどう? 興味ない?」
「えっ……MVの俳優? それって、どれくらいですか?」
「そうだね。一本は堅いよ」
「ほ、本当に? 一本?」
「君が頑張れば四本はいけるかもね」
「四本? やります!! やらせてください!!」
「じゃあこの車に乗って!」
とりあえずこの仕事で400万もらって、うまくこの仕事を続けられたら、借金も返せるどころか。もう一度舞台に立って戻れるかも!! 映画とかの話もくるかもしれない!
俺は突然現れた幸運に有頂天になり、連れられるがままに、雑居ビルに連れて行かれた。
「さぁ、ここで撮影するから」
そう言って案内された部屋には、裸の男が十人以上いて、俺を舐め回すように見ている。
「えっ、なに、なんですか?」
「えっ? だから言ったろ? MV、ここでメンズビデオを撮るんだよ。わかりやすく言えば、ゲイビかな」
「――っ、ちょっ、ゲイビって! 嘘だろっ!! 俺、そんなの無理だから! 帰る!」
「おいおい、ここまできてそれはないだろう。みんな待ってたんだぞ」
「ふざけんな。俺の身体は400万じゃ安すぎなんだよ」
「なんだ? 400万って?」
「はぁ? 四本くれるって言ったじゃないか。それも嘘なのか?」
「ははっ。お前バカだな。四本っていうのは、ちんこの数だよ。お前が頑張ったら上と下の口に二本ずつ入るだろう」
上と下に、二本ずつ……。
あいつらのが?
目の前で俺を見ながらシコってる奴らのものはどれも凶悪なまでにデカすぎて恐ろしいくらいだ。
「そ、そんなの無理に決まってるだろ!!」
「お前がここでゲイビ男優として頑張るなら、お前の借金ここで帳消しにしてやるよ」
「えっ……帳消しって、本当に?」
「ああ。しかもこのビルで寝泊まりもさせてやる。どうだ? 破格の待遇だろう」
あの借金が消えて無くなる……。
「ここでやるか、それとも借金とりに追われ続けるか、どうする?」
そう迫られて、俺はゲイビ男優としての道を選ぶしかなかった。
「おい、カンタ。久しぶりに女食いにいくぞ」
「いや、もう俺、いいっすよ。勃つ気しないですし」
「いいからついてこいって!」
ゲイビ俳優として働くようになって半年。
タチの先輩に連れて行かれたのは、同じビルの中にある風俗店。
このビルで働く男たちを相手にするための場所だ。
昔の俺なら喜んだだろうが、毎日毎日マッチョなタチにたっぷりと掘られまくった生活をしていると、女を抱きたい感情も失せてしまう。
もう女に入れても気持ちいいと感じられないかもしれない。
そもそもそんな欲求は消え失せた。
「いらっしゃいませ~」
そう言って虚な瞳で近づいてきた女に見覚えがあった。
「え、な……?」
あんなに魅力的だった身体がガリガリに痩せてしまっていたけれど、どう見てもこれは恵那だ。
「もしかして、幹太?」
「ああ、恵那。あえて嬉し――」
「ふざけないでよ! あんたのせいで私がどんな目に遭ったと思ってるの!!」
「えっ……」
「あれからすぐに南條くんの弁護士って人が来て虚偽告訴罪と名誉毀損罪で訴えられて、その上損害賠償請求までされて、消費者金融からお金借りて一括で支払いして、それが親にばれて勘当されて……結局こんなところで働くしか無くなったんじゃん! 全部あんたのせいよ!!」
あれから自分のことに精一杯で恵那のことなんかすっかり忘れていた。
俺たち二人して、地の底まで落ちてしまっていたんだな。
「悪い、恵那……ごめん」
悪いと思っても恵那に何もしてやれない俺はもう土下座して謝るしかなかった。
本当にバカだったな、俺たちは。
二年以上も経ってすっかり忘れ去られてるでしょうが(汗)
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side葛井幹太>
「南條朝陽、あいつを主役から引き摺り下ろしてくれたら、お前を次の作品のヒロインになれるように和泉監督に話をつけるよ」
「本当?」
「ああ、俺が嘘ついたことなんてないだろ」
「うん、わかった。幹太の言うとおりにする」
「いい子だ。たっぷりと可愛がってやるよ」
「ああっんっ!! そこ、きもちいいっ!!」
バカな女だ。
こんな尻軽女なんかヒロインになれるわけないだろうが。
和泉監督が好むのはこいつとは真反対の清純派の女優。
天地がひっくり返ったってこんな女をヒロインになんかするはずもないが、俺の目当てはあの忌々しい南條朝陽を引き摺り下ろすことだけ。
俺、葛井幹太は劇団桃花の社長を父にもつ、その事務所のトップ俳優。
舞台をメインに活躍するイケメンで長身な俺はいつだって主役をはってきた。
だが、ここ最近俺の地位を脅かす奴がいる。
顔はそこそこイけてるが、イケメンというよりは女顔の役者。
南條朝陽は俺の舞台で端役ばかりを務めていたが、正直演技力はなかなかのものだった。
それは俺だって認める。
だが、あくまでもそれは端役としての演技力だ。
まだまだ俺の足元にも及ばない存在だったはずなのに、なぜか突然和泉監督の目に留まり、同じ舞台に立つようになってきた。
最近では端役のくせに俺より存在感を出しやがって、同じ舞台に立っていても俺が霞むようになってきた。
本当にムカつくやろうだ。
あいつも腹の中じゃ俺のことバカにしてるんだろう。
そう思ったら言いたいことを抑えきれなくなった。
舞台休憩の合間にも共演の俳優たちと、あいつの話で盛り上がった。
「可愛い顔してると簡単に主役が貰えていいよな」
「知ってるか、あいつ。ああ見えて下の方はすごいらしいぞ」
「あいつはそれで仕事もらってるんだ。枕俳優やってんだよ」
「恋愛も何も知らない童貞みたいな顔しやがって、裏では共演の女たちを食い漁ってるって話だぞ」
「聞くところによると和泉監督もあいつの身体に陥落したらしいぜ」
「へぇー、役もらうために年増女まで食うとかプライドも何もないんだな」
どうやらあいつを疎ましく思っていたのは俺だけじゃなかったらしい。
ははっ。やっぱりな。
あんなやつ、さっさと辞めたらいいのに。
俺たちが流しまくった噂はかなり広まっていたけれど、南條朝陽は全く気にする様子もなく舞台に出続けていた。
それがさらに俺のイライラを募らせたんだ。
そんな時、突然ものすごいオファーがうちの劇団に舞い込んできた。
――南條くんを主役にして、舞台を作ることにしたの。彼ならきっとものすごいヒット作になるわ! 葛井くんには、彼のライバル役として頑張ってもらうからよろしくね。
和泉監督直々のオファーにもはや驚きしかない。
俺も出ているならと脚本に目を通しを見ると、今までなら俺が主役でやっていたはずのところに南條朝陽の名前が書かれ。最低最悪なクズ男に俺の名前が書かれていた。
「こんな役……っ、嫌に決まってんだろ!! なんで俺がこんな役なんだよ!」
苛立ちが止まらず、事務所の社長でもある父親に文句を言ったけれど、
「仕方がないだろう。和泉監督直々のオファーなんだ。私だって、本当はお前に主役をやってもらいたいと思っているよ。だが、これは南條朝陽を主役に当て書きで書かれた脚本だから、南條朝陽以外ではやれないというのだからどうしようもないんだ。わかってくれ!」
と言われてしまった。
今までならどんなことをしてでも、俺の役になるように尽力してくれていたのに……。
くそっ!
面白くない!
「あの、葛井さん。今までずっと葛井さんを目標に芝居を続けさせてもらっていました。今回、葛井さんとW主演のような形で出られることは本当に嬉しく思っています。ご迷惑をかけるかもしれませんが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」
舞台顔合わせの日、南條朝陽は俺の姿を見るや否や、笑顔で駆け寄ってきてまるで優等生のような挨拶をしてきた。
そんなこと一ミリも思ってないくせに!
本当にムカつく!
大体お前が主役はるなんて十年早いんだよ!
そう怒鳴りつけてやりたいのを必死に抑えて、そこは軽くスルーした。
調子乗っていられるのも今のうちだからな。
せいぜい主役になれると楽しんでいればいい。
その日、和泉監督の声掛けで、出演者みんな揃って食事会をすることになった。
ここであいつをハメてやる。
あいつへの信頼も全て失墜させてやるんだ。
それこそ和泉監督があいつへの期待を全て失うくらいに。
「恵那、しっかりやれよ」
「うん、わかってるって! 任せて!」
食事会が始まってしばらくして、店中に恵那の叫び声が響き渡った。
俺たちよりも速く店員たちがその部屋に突入し、どう見ても襲われたとしか思えない恵那の姿と二人っきりで個室にいた南條朝陽の姿を発見し、店員たちはすぐさま南條を羽交い締めにして警察を呼んだ。
南條は茫然自失の状態だったようだが、結局密室での行為ということで証拠不十分で釈放されたらしい。
だがこの狙いは逮捕されたかどうかの問題じゃない。
そんな騒ぎを起こしたかどうかだけ。
こんなスキャンダルを起こした俳優を主役にするわけがなく、スポンサーも一気に降りて和泉監督の舞台の話は消えてなくなった。
俺としては舞台の話が消えるのは予想外だったが、まぁいい。
結局あいつは事務所を首にしたと父が言っていた。
けれど、たっぷりと違約金でも払わせればよかったのに、和泉監督の方から違約金はいらないと言われたそうで首にしただけで終わったそうだ。
そこまで和泉監督が南條に温情をかけるとは思わなかったけれど、まぁとりあえずあいつがいなくなってくれたらいい。
これでうちの劇団はまた俺を主役にして進んでいくんだ。
そう思っていたのに…‥。
あいつの事件をきっかけに所属俳優が次々と辞めて行って、結局残ったのは俺一人。
決まっていた仕事もあったのに、それを遂行することもできず、違約金の支払いでいっぱいになり、あっという間に劇団桃花は廃業になってしまった。
俺と父の元には莫大な借金だけが残った。
これを二人で返し続けるしかないと話していたのに、父親が突然失踪し、莫大な借金は俺だけで返さなければいけなくなった。
毎日生きていくのにもお金がかかるというのに、数億を超える借金をそうそう払えるわけがない。
劇団のあったビルを売り払い、父親の持っていた車も全て売り払ったけれど、借金はまだまだ残っている。
家を無くしてしまった俺は、どうすることもできずに街中を歩いていた。
「すみません、ちょっとお時間よろしいですか?」
久しぶりに誰かに声をかけられた。
やっぱり俺はトップ俳優なんだと喜んで顔を上げると、そこにはスーツの男性が三人、俺の周りを囲んでいた。
しかもパツパツのスーツの下にとんでもない筋肉を隠し持ってそうな男ばかり。
三人揃っての笑顔がかなり怖い。
「な、なんですか?」
「いや、お兄さん。すごくかっこいいなと思って。MVに出てくれる俳優を探してるんでもしよかったらどう? 興味ない?」
「えっ……MVの俳優? それって、どれくらいですか?」
「そうだね。一本は堅いよ」
「ほ、本当に? 一本?」
「君が頑張れば四本はいけるかもね」
「四本? やります!! やらせてください!!」
「じゃあこの車に乗って!」
とりあえずこの仕事で400万もらって、うまくこの仕事を続けられたら、借金も返せるどころか。もう一度舞台に立って戻れるかも!! 映画とかの話もくるかもしれない!
俺は突然現れた幸運に有頂天になり、連れられるがままに、雑居ビルに連れて行かれた。
「さぁ、ここで撮影するから」
そう言って案内された部屋には、裸の男が十人以上いて、俺を舐め回すように見ている。
「えっ、なに、なんですか?」
「えっ? だから言ったろ? MV、ここでメンズビデオを撮るんだよ。わかりやすく言えば、ゲイビかな」
「――っ、ちょっ、ゲイビって! 嘘だろっ!! 俺、そんなの無理だから! 帰る!」
「おいおい、ここまできてそれはないだろう。みんな待ってたんだぞ」
「ふざけんな。俺の身体は400万じゃ安すぎなんだよ」
「なんだ? 400万って?」
「はぁ? 四本くれるって言ったじゃないか。それも嘘なのか?」
「ははっ。お前バカだな。四本っていうのは、ちんこの数だよ。お前が頑張ったら上と下の口に二本ずつ入るだろう」
上と下に、二本ずつ……。
あいつらのが?
目の前で俺を見ながらシコってる奴らのものはどれも凶悪なまでにデカすぎて恐ろしいくらいだ。
「そ、そんなの無理に決まってるだろ!!」
「お前がここでゲイビ男優として頑張るなら、お前の借金ここで帳消しにしてやるよ」
「えっ……帳消しって、本当に?」
「ああ。しかもこのビルで寝泊まりもさせてやる。どうだ? 破格の待遇だろう」
あの借金が消えて無くなる……。
「ここでやるか、それとも借金とりに追われ続けるか、どうする?」
そう迫られて、俺はゲイビ男優としての道を選ぶしかなかった。
「おい、カンタ。久しぶりに女食いにいくぞ」
「いや、もう俺、いいっすよ。勃つ気しないですし」
「いいからついてこいって!」
ゲイビ俳優として働くようになって半年。
タチの先輩に連れて行かれたのは、同じビルの中にある風俗店。
このビルで働く男たちを相手にするための場所だ。
昔の俺なら喜んだだろうが、毎日毎日マッチョなタチにたっぷりと掘られまくった生活をしていると、女を抱きたい感情も失せてしまう。
もう女に入れても気持ちいいと感じられないかもしれない。
そもそもそんな欲求は消え失せた。
「いらっしゃいませ~」
そう言って虚な瞳で近づいてきた女に見覚えがあった。
「え、な……?」
あんなに魅力的だった身体がガリガリに痩せてしまっていたけれど、どう見てもこれは恵那だ。
「もしかして、幹太?」
「ああ、恵那。あえて嬉し――」
「ふざけないでよ! あんたのせいで私がどんな目に遭ったと思ってるの!!」
「えっ……」
「あれからすぐに南條くんの弁護士って人が来て虚偽告訴罪と名誉毀損罪で訴えられて、その上損害賠償請求までされて、消費者金融からお金借りて一括で支払いして、それが親にばれて勘当されて……結局こんなところで働くしか無くなったんじゃん! 全部あんたのせいよ!!」
あれから自分のことに精一杯で恵那のことなんかすっかり忘れていた。
俺たち二人して、地の底まで落ちてしまっていたんだな。
「悪い、恵那……ごめん」
悪いと思っても恵那に何もしてやれない俺はもう土下座して謝るしかなかった。
本当にバカだったな、俺たちは。
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ヒロさま。コメントありがとうございます!
余計な嫉妬などせずに素直に役を受けていればそんなふうにはならなかったかもしれないのに。
人を貶めようとしたら、自分もそうなるんですよねぇ。
人間、誠実が一番です☺️
四葩さま。コメントありがとうございます!
超久々の更新で彼らの話でしたが、楽しんでいただけて何よりです。
大事な朝陽を傷つけて何も制裁受けないわけがないですからね。
使い物にならなくなるまでしっかりと働いてもらいましょうか(笑)
一応俳優してたし、彼のビデオなら需要はありそうですしね。
ミッキーリンさま。コメントありがとうございます!
いろんなシリーズを読んでいただき嬉しいです💕
このシリーズはこの二人から始まったんですよね☺️
そうですね、嫌な女への報復を考えてもいいかもですね✨
涼平ならなんでもできそうです(笑)
また番外編を書いたときにはぜひ読みに来てくださいね❤️