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冤罪
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「ロゼッタさん、平民と貴族では習慣が違っているのはわかるわ。でも、この学園に入ったからには貴族のルールを学んでくださらなければ。婚約者のいる男性にベタベタと触れるのは、あまりに恥知らずな行為に見えているの、だから……」
「嫉妬してるんですかぁ?」
私は頭痛がしてきた。
平民が恋愛を楽しむのは知っていたけれど、もうちょっと会話が可能になってくれないかしら。
私だって貴族らしいおきれいな会話は好きではない。それでも生まれた立場のため、家の名誉のために努力しているのだ。
平民だったら、あの浮気症の王子なんてさっさと見捨ててるわよ。
あの王子の婚約者という時点で罰ゲームなのに、こんなお花畑の面倒まで見なきゃいけないなんて。
「……何を言っているの。そうではなく……」
「愛されてもいないのに婚約者だからって偉そうにして、恥ずかしくないんですかぁ? 残念だけど、王子さまが愛するのはこの私、ロゼッタなの。今からそれを見せてあげるわ!」
「ロゼッタさんのお気持ちはともかく、とにかく表向きだけでもまともに、」
「キャアアアアアア!」
「…………はあ?」
ロゼッタさんが急に悲鳴をあげて倒れ伏せた。
そこまでイカれてしまったのだろうか。
私はロゼッタさんから急いで距離を取った。話が話だけにここには二人きりで、学友の誰も連れてきていないのだ。暴れ出したらどうしようもない。
「どうした!?」
「ロゼッタ!?」
けれど飛び込んできた婚約者のバカ王子は、倒れたロゼッタさんを助け起こした。その後ろから側近たちもぞろぞろと、我先にロゼッタさんを囲んでいる。
ずっとそこにいたんですか?
その人数で?
「ユ、ユミフィル様に……突き飛ばされて……うっ、ううっ、ここまで恨まれていてなんて、わたし……っ」
「……なんてことだ! ユミフィル、貴様……」
「いいんです、わ、わたしが、あなたを好きになってしまったから……この気持ちが悪なんです」
「くそっ! ユミフィル、同級生への加害行為、見逃せんぞ!」
「で、でもきっとユミフィル様も苦しかったんです!」
「ああ、ロゼッタ、君は優しい。だがやってしまったことには謝罪が必要だ。ユミフィル! 誠心誠意謝ればこの場は許そう。二度とロゼッタに近づくことは許さない……!」
茶番に呆然としていた私は「はあ?」と殿下を見ました。
「ロゼッタさんは急に悲鳴をあげて倒れただけですよ」
「そんな言い訳が通じるものか! 誰が意味もなく悲鳴をあげて倒れるのだ」
「馬鹿馬鹿しいのはわかりますが、事実ですから」
「なんと醜い! くそっ……確かに証拠はないだろう。そのために二人きりで、こんな誰もいない空き教室を選んだのだろうからな」
「話があるとここに呼び出したのはロゼッタさんですよ。私は……」
「ああロゼッタ、怖かっただろう、恐ろしかっただろう。すぐに医務室へ」
話の通じなさはいつもの殿下だが、わけのわからない罪を押し付けられてはイライラしてくる。
突き飛ばした罪?
医務室?
証拠もなければロゼッタさんは怪我のひとつもしていない。
私はモヤモヤしたけれど、これ以上面倒に巻き込まれてはたまらない。私はぞろぞろと医務室に行く群れを見送ってため息をついた。
そんなことがあったので、私はロゼッタさんとは距離を取ることにした。
のだけれど。
何なの!?
「きゃっ! あ、ああ、ユミフィル様、申し訳ありませんん、申し訳……」
「ロゼッタ! 人を踏みつけるなど、貴様という女は!」
「……彼女が勝手にそこにうずくまっていただけですよ」
「ち、違うの、これは何でもなくて……っ」
「教科書がめちゃくちゃじゃないか! くそっ、ユミフィルめ」
「うっ、ど、どうしてユミフィル様はこんなにまで……私が憎いなら、直接言ってくれれば……」
「ユミフィルはもう悪鬼に心を支配されたのだ。ロゼッタ、君の優しさは素晴らしいが、悪鬼に伝わるわけはない。やはり」
「だ、だめです! お話すれば、ユミフィル様もきっと謝ってくれるはずです!」
どうして何もしていないのに謝らなければならないの?
学園でもっとも地位の高い殿下に、いつもいつもいつも悪役にされた私は、周囲から距離を取られることになった。
「いいか、ロゼッタの優しさゆえに、耐え難いことだが貴様にチャンスを与えているんだ。ロゼッタに頭を下げ、謝罪しろ。でなければ社交界にいられなくしてやる……!」
殿下にも直接そう脅された。
学園は貴族としての勉学を行う場、同じ貴族の縁を作る場だ。ここで孤立していては、卒業後に貴族としての社交を行うことなどできない。
「嫉妬してるんですかぁ?」
私は頭痛がしてきた。
平民が恋愛を楽しむのは知っていたけれど、もうちょっと会話が可能になってくれないかしら。
私だって貴族らしいおきれいな会話は好きではない。それでも生まれた立場のため、家の名誉のために努力しているのだ。
平民だったら、あの浮気症の王子なんてさっさと見捨ててるわよ。
あの王子の婚約者という時点で罰ゲームなのに、こんなお花畑の面倒まで見なきゃいけないなんて。
「……何を言っているの。そうではなく……」
「愛されてもいないのに婚約者だからって偉そうにして、恥ずかしくないんですかぁ? 残念だけど、王子さまが愛するのはこの私、ロゼッタなの。今からそれを見せてあげるわ!」
「ロゼッタさんのお気持ちはともかく、とにかく表向きだけでもまともに、」
「キャアアアアアア!」
「…………はあ?」
ロゼッタさんが急に悲鳴をあげて倒れ伏せた。
そこまでイカれてしまったのだろうか。
私はロゼッタさんから急いで距離を取った。話が話だけにここには二人きりで、学友の誰も連れてきていないのだ。暴れ出したらどうしようもない。
「どうした!?」
「ロゼッタ!?」
けれど飛び込んできた婚約者のバカ王子は、倒れたロゼッタさんを助け起こした。その後ろから側近たちもぞろぞろと、我先にロゼッタさんを囲んでいる。
ずっとそこにいたんですか?
その人数で?
「ユ、ユミフィル様に……突き飛ばされて……うっ、ううっ、ここまで恨まれていてなんて、わたし……っ」
「……なんてことだ! ユミフィル、貴様……」
「いいんです、わ、わたしが、あなたを好きになってしまったから……この気持ちが悪なんです」
「くそっ! ユミフィル、同級生への加害行為、見逃せんぞ!」
「で、でもきっとユミフィル様も苦しかったんです!」
「ああ、ロゼッタ、君は優しい。だがやってしまったことには謝罪が必要だ。ユミフィル! 誠心誠意謝ればこの場は許そう。二度とロゼッタに近づくことは許さない……!」
茶番に呆然としていた私は「はあ?」と殿下を見ました。
「ロゼッタさんは急に悲鳴をあげて倒れただけですよ」
「そんな言い訳が通じるものか! 誰が意味もなく悲鳴をあげて倒れるのだ」
「馬鹿馬鹿しいのはわかりますが、事実ですから」
「なんと醜い! くそっ……確かに証拠はないだろう。そのために二人きりで、こんな誰もいない空き教室を選んだのだろうからな」
「話があるとここに呼び出したのはロゼッタさんですよ。私は……」
「ああロゼッタ、怖かっただろう、恐ろしかっただろう。すぐに医務室へ」
話の通じなさはいつもの殿下だが、わけのわからない罪を押し付けられてはイライラしてくる。
突き飛ばした罪?
医務室?
証拠もなければロゼッタさんは怪我のひとつもしていない。
私はモヤモヤしたけれど、これ以上面倒に巻き込まれてはたまらない。私はぞろぞろと医務室に行く群れを見送ってため息をついた。
そんなことがあったので、私はロゼッタさんとは距離を取ることにした。
のだけれど。
何なの!?
「きゃっ! あ、ああ、ユミフィル様、申し訳ありませんん、申し訳……」
「ロゼッタ! 人を踏みつけるなど、貴様という女は!」
「……彼女が勝手にそこにうずくまっていただけですよ」
「ち、違うの、これは何でもなくて……っ」
「教科書がめちゃくちゃじゃないか! くそっ、ユミフィルめ」
「うっ、ど、どうしてユミフィル様はこんなにまで……私が憎いなら、直接言ってくれれば……」
「ユミフィルはもう悪鬼に心を支配されたのだ。ロゼッタ、君の優しさは素晴らしいが、悪鬼に伝わるわけはない。やはり」
「だ、だめです! お話すれば、ユミフィル様もきっと謝ってくれるはずです!」
どうして何もしていないのに謝らなければならないの?
学園でもっとも地位の高い殿下に、いつもいつもいつも悪役にされた私は、周囲から距離を取られることになった。
「いいか、ロゼッタの優しさゆえに、耐え難いことだが貴様にチャンスを与えているんだ。ロゼッタに頭を下げ、謝罪しろ。でなければ社交界にいられなくしてやる……!」
殿下にも直接そう脅された。
学園は貴族としての勉学を行う場、同じ貴族の縁を作る場だ。ここで孤立していては、卒業後に貴族としての社交を行うことなどできない。
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