10 / 14
10
「うわあ、すごいです! これが私の下女服! ありがとうございますレニさん!」
「とんでもございません、オレーリア様からの、指示で……」
「そうなんですね! オレーリア様にもよろしくお伝えください」
こないだ体の寸法を測ってもらったんですが、このためだったみたいです。私は自分にぴったりのお仕着せでくるりと回りました。踊りたい気分です!
今まで使わせてもらっていた下女服も良かったんですが、やっぱり借りてるものなので汚したくなくて、汚れてもいい布を縫い付けたらもっさりしちゃったんですよね。
この国は少し暖かいので、このくらい薄いものだと助かります!
それでいてしっかりした布地で、簡単に破れそうにありません。さすがは大国です。
こんなものをくださるなんて、本当に、オレーリア様は素晴らしい方です。何かお返しできればいいんですけど。
「手触りもすっごくいいです。高級品みたい」
「そ、そんなことは、ないんですけど!」
「ふふっ、そうですよね! でもそのくらいすごいです。嬉しいです!」
人質のために高級な布を使う人なんているはずはありません。
それでも私が今まで持っていた中で、一番いい布に思えます。すでに最高に気に入っています。嬉しいです。
「これでまたバリバリ働きますね!」
高級感は布だけで、デザインはしっかり働き者の服です。肘のところとか袖のところとか、汚れやすい、破れやすいところが頑丈に作られているのがわかります。
これなら気にせず動けますし、長く使うことができるでしょう。
薄いのに機能性もあるって、神では!?
「い、いえ、リアンナ様は働くようなお立場では……いえ、ええっと……」
レニさんはなぜかとても困ったような顔をしています。そういえばレニさんは上司オレーリア様に振り回されてるお立場でした。この服のことも迷惑をかけたのかも。
でも私が謝るのも変だし、もう一度、丁寧にお礼を言っておきました。
「とんでもないです。……お気に召されたようで、よかったです……」
疲れた中にも安堵の表情を見せてくれました。よかった。無茶振りが終わって少し休めるといいですね。
レニさん、いつも疲れた顔してますから。
「あ、ルーさん、こんにちは!」
「今日も熱心だな、リア」
「ふふっ、熱心にもなりますよ、ほらこれ見てください新しいお仕着せです!」
私はご機嫌でぐるぐると回ってみせました。
ルーさんと話すのはもう何度目かで、すっかり慣れてしまいました。未だに他の下女さんとはあまり会話が成立しないので、お話できて嬉しいです。
「今日は商人さんなんですね」
「ああ、別人みたいに見えるだろう?」
「えー、それはないですよ。ルーさん、何着ててもなんか目立ちますもん」
どんな格好をしていても、何か妙に迫力があるというか。主人がいるとか言ってましたけど、ルーさん自身も貴族なのかも?
レニさんも男爵令嬢らしいんですけど、下女さん達と働いてますしね。
「そうか、わかるか……うーん……」
「わかっちゃ駄目でしたか?」
「いや、よく言ってくれた。これならわからないと思っていたが、意味はなかったようだ」
どうやら変装したかったみたいです。
私はぴんときました。
貴族さんが変装する=このあたりで女性と密会するってことですね!?
わあああ、一気にテンションがあがりました。どこでしょう?
どこから女性がやってくるんでしょう!
ルーさんは立派な人なのできっと女性もきれいな人なんでしょう。ああ、隅に置けません!
「……どうした?」
きょろきょろしているとルーさんが不審そうに見てきました。いけない、いけない。
人の秘密を暴こうなんて。
「いえいえ。じゃ、私は仕事に戻ります」
「あ、待て、そんなに忙しいのか?」
あれ、引き止められてしまいました。
まだ彼女さんは来ないってことでしょうか?
「そんなことはないですよ。自由すぎるくらい自由にさせてもらっていますから、仕事は自分で探してる感じです。でも、私とここにいて大丈夫なんですか?」
女性が来るんでしょう? そうなんでしょう?
わくわくとしながら聞くと、ルーさんは困ったような顔で言いました。
「俺も暇……なわけではないんだが、忙しいときほどなぜか君と話したくなるんだ」
「あー、こっそり息抜きってことですね。なんだ、逢引しにきたのかと思っちゃいました」
「あっ! 逢引……ではない! そういうのではない!」
「ふふっ、大丈夫ですよ。ちょっとどきどきしちゃいましたけど!」
変装したのは逢引のためじゃなくて、仕事をサボるためですね。
真面目そうに見えていましたが、ルーさん、なかなかのワルです。
「そ……そうか、あー、服といえば、リアンナ姫の衣装は増えたのか?」
「あっ、そう、そうなんですよ! オレーリア様最高、オレーリア様天使! と言っておられました!」
オレーリア様はなかなかお会いすることさえ難しいお方です。せめてこうして宣伝して、オレーリア様の素晴らしさを広めましょう。
「とんでもございません、オレーリア様からの、指示で……」
「そうなんですね! オレーリア様にもよろしくお伝えください」
こないだ体の寸法を測ってもらったんですが、このためだったみたいです。私は自分にぴったりのお仕着せでくるりと回りました。踊りたい気分です!
今まで使わせてもらっていた下女服も良かったんですが、やっぱり借りてるものなので汚したくなくて、汚れてもいい布を縫い付けたらもっさりしちゃったんですよね。
この国は少し暖かいので、このくらい薄いものだと助かります!
それでいてしっかりした布地で、簡単に破れそうにありません。さすがは大国です。
こんなものをくださるなんて、本当に、オレーリア様は素晴らしい方です。何かお返しできればいいんですけど。
「手触りもすっごくいいです。高級品みたい」
「そ、そんなことは、ないんですけど!」
「ふふっ、そうですよね! でもそのくらいすごいです。嬉しいです!」
人質のために高級な布を使う人なんているはずはありません。
それでも私が今まで持っていた中で、一番いい布に思えます。すでに最高に気に入っています。嬉しいです。
「これでまたバリバリ働きますね!」
高級感は布だけで、デザインはしっかり働き者の服です。肘のところとか袖のところとか、汚れやすい、破れやすいところが頑丈に作られているのがわかります。
これなら気にせず動けますし、長く使うことができるでしょう。
薄いのに機能性もあるって、神では!?
「い、いえ、リアンナ様は働くようなお立場では……いえ、ええっと……」
レニさんはなぜかとても困ったような顔をしています。そういえばレニさんは上司オレーリア様に振り回されてるお立場でした。この服のことも迷惑をかけたのかも。
でも私が謝るのも変だし、もう一度、丁寧にお礼を言っておきました。
「とんでもないです。……お気に召されたようで、よかったです……」
疲れた中にも安堵の表情を見せてくれました。よかった。無茶振りが終わって少し休めるといいですね。
レニさん、いつも疲れた顔してますから。
「あ、ルーさん、こんにちは!」
「今日も熱心だな、リア」
「ふふっ、熱心にもなりますよ、ほらこれ見てください新しいお仕着せです!」
私はご機嫌でぐるぐると回ってみせました。
ルーさんと話すのはもう何度目かで、すっかり慣れてしまいました。未だに他の下女さんとはあまり会話が成立しないので、お話できて嬉しいです。
「今日は商人さんなんですね」
「ああ、別人みたいに見えるだろう?」
「えー、それはないですよ。ルーさん、何着ててもなんか目立ちますもん」
どんな格好をしていても、何か妙に迫力があるというか。主人がいるとか言ってましたけど、ルーさん自身も貴族なのかも?
レニさんも男爵令嬢らしいんですけど、下女さん達と働いてますしね。
「そうか、わかるか……うーん……」
「わかっちゃ駄目でしたか?」
「いや、よく言ってくれた。これならわからないと思っていたが、意味はなかったようだ」
どうやら変装したかったみたいです。
私はぴんときました。
貴族さんが変装する=このあたりで女性と密会するってことですね!?
わあああ、一気にテンションがあがりました。どこでしょう?
どこから女性がやってくるんでしょう!
ルーさんは立派な人なのできっと女性もきれいな人なんでしょう。ああ、隅に置けません!
「……どうした?」
きょろきょろしているとルーさんが不審そうに見てきました。いけない、いけない。
人の秘密を暴こうなんて。
「いえいえ。じゃ、私は仕事に戻ります」
「あ、待て、そんなに忙しいのか?」
あれ、引き止められてしまいました。
まだ彼女さんは来ないってことでしょうか?
「そんなことはないですよ。自由すぎるくらい自由にさせてもらっていますから、仕事は自分で探してる感じです。でも、私とここにいて大丈夫なんですか?」
女性が来るんでしょう? そうなんでしょう?
わくわくとしながら聞くと、ルーさんは困ったような顔で言いました。
「俺も暇……なわけではないんだが、忙しいときほどなぜか君と話したくなるんだ」
「あー、こっそり息抜きってことですね。なんだ、逢引しにきたのかと思っちゃいました」
「あっ! 逢引……ではない! そういうのではない!」
「ふふっ、大丈夫ですよ。ちょっとどきどきしちゃいましたけど!」
変装したのは逢引のためじゃなくて、仕事をサボるためですね。
真面目そうに見えていましたが、ルーさん、なかなかのワルです。
「そ……そうか、あー、服といえば、リアンナ姫の衣装は増えたのか?」
「あっ、そう、そうなんですよ! オレーリア様最高、オレーリア様天使! と言っておられました!」
オレーリア様はなかなかお会いすることさえ難しいお方です。せめてこうして宣伝して、オレーリア様の素晴らしさを広めましょう。
あなたにおすすめの小説
『「代わりはいる」と言われたので、公務をすべてお返しします』
かおるこ
恋愛
『「代わりはいる」と言われたので、公務をすべてお返しします』
「代わりはいる」
その一言は、羽のように軽く
けれど刃のように胸に沈んだ
灯りに満ちた夜会の中で
笑い声に紛れて落とされた言葉は
誰よりも静かに、深く響いた
私は頷いた
涙は零れず、声も震えず
ただ、終わりを受け取るように
机の上に積み上げたものは
紙ではない
夜を削った時間であり
飲み込んだ言葉であり
名も残らぬまま重ねた日々だった
インクに染まった指先も
冷えた朝の空気も
すべては誰かの名の下で
なかったことにされていた
「誰でもできる」
そう言ったあなたの背で
世界はきしみ始めていたのに
見えない糸をほどくように
私は一つずつ手を離す
支えていたものを、静かに返す
結び直されることのない契約
交わされぬまま消える言葉
止まる流れに気づくのは
もう、私ではない
記録は残る
光の中に、確かに刻まれている
誰が何を背負い
誰が何も知らなかったのか
だから私は振り返らない
崩れていく音も
呼び止める声も
もう私のものではないから
あなたの世界が止まる頃
私はようやく歩き出す
代わりなどいない場所へ
私であることを
私のまま受け取られる場所へ
「一晩一緒に過ごしただけで彼女面とかやめてくれないか」とあなたが言うから
キムラましゅろう
恋愛
長い間片想いをしていた相手、同期のディランが同じ部署の女性に「一晩共にすごしただけで彼女面とかやめてくれないか」と言っているのを聞いてしまったステラ。
「はいぃ勘違いしてごめんなさいぃ!」と思わず心の中で謝るステラ。
何故なら彼女も一週間前にディランと熱い夜をすごした後だったから……。
一話完結の読み切りです。
ご都合主義というか中身はありません。
軽い気持ちでサクッとお読み下さいませ。
誤字脱字、ごめんなさい!←最初に謝っておく。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
「お従妹様の看病で五年、夜会に出ておりませんの」
歩人
ファンタジー
侯爵令嬢イレーネは婚約者アーロンの要請で、五年にわたり彼の「病弱な従妹」クレアを看護してきた。夜会も社交も諦め、毎晩クレアの枕元で看護した。だが二十三歳の誕生日、医師会の抜き打ち健診でクレアは「むしろ同世代で最も健康」と診断される。イレーネが見せてもらった五年分の薬代明細には、存在しない薬品と架空の処置が並んでいた。アーロンは慌てる。「誤解だ。クレアは本当に弱くて……」イレーネは微笑んだ。「では、五年分の看護費と、わたくしが失った社交時間を、具体的な数字にして頂戴いたしましょう」。医師会長が断言する。「詐病誘導と医療費架空請求。司法に回します」。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
姑に嫁いびりされている姿を見た夫に、離縁を突きつけられました
碧井 汐桜香
ファンタジー
姑に嫁いびりされている姿を見た夫が、嬉しそうに便乗してきます。
学園進学と同時に婚約を公表し、卒業と同時に結婚したわたくしたち。
昔から憧れていた姑を「お義母様」と呼べる新生活に胸躍らせていると、いろいろと想定外ですわ。
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました
お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。
その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。