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帰り道で
しおりを挟む「さっさと家に帰ってぶりの照焼き作ろ。あ~久しぶりにぶりの照焼き食べるなぁ~」
ブランブランとエコバックを軽く振りながら、いつもより早足で家に帰る。スーパーで買った物は、ぶりに豆腐にワカメ。ぶりは、血合の色が鮮やかで皮や身に傷がない、鮮度の高い物にした。他に買った豆腐とワカメは、賞味期限が近いのか少し割引された物。流石にぶりの照焼きだけじゃ味気ないということで、味噌汁も作ることしにした。ワカメと豆腐はその具材だ。
外灯の明かりのみが頼りになる暗い道で、日が暮れた今しか味わえない爽やかな涼しい風を味わう。春の暖かな風も好きだが、こういう涼しい風も好きだ。特に、今のように早足で歩いている為体が少し熱い時などは、涼しい風は熱さを和らげてくれる。
風を味わいながら暗闇を進んでいると、何やら路地裏から二人の男の声と一人の女性のような声が聞こえる。興味程度に路地裏を覗いてみると、そこには女子を囲う卑猥な目で女子を睨む男子二人が居た。
「ねぇねぇ、少しだけだからさ~」
「本当に一瞬だけだからさ。少しくらいいいよね?」
「や…やめて下さい。」
うわぁ……
マジかよ。
ここ割と家から徒歩五分も掛からないところなんだけど。こんな奴等居るとか治安最悪じゃん。てか、今でもこういう奴等っているのか。う~ん。どうするか。
暗闇に慣れた目で服装を見てみると、二人の男はボタンすらしっかり止めていないようなチャラい服装なのに、その二人に囲まれた女子は赤いネクタイをびっしりと決めている、眼鏡が似合う清楚っぽい本が似合う真面目そうな可愛い女の子だ。
流石に、この三人が友達とは思えないしな。
このまま俺が助けなければこの子は襲われちゃうか?流石に、か弱わそうな女子が力の強い男子二人から逃げられるとは到底思えない。
でも……これって、モブが助けることじゃないよな?
俺は、動こうとした足を意地で止める。
普通、襲われた女の子を助けて、その助けた女の子と仲良くなっていくのは、俺のようなモブじゃなくて主人公的なキャラなのだ。
こんな主人公に訪れるような、ラブコメの恒例イベント。
俺のようなモブがやるのはおかしくないか?
もう少し待ったら、主人公的なキャラが訪れるのかなと待ってみることにしようと思ったが、状況がそれを許してくれなかった。
「ひ、ひいぇ。」
「ほらほら。俺達のことを聞いていれば服なんて破る必要なかったのに。」
「ここまで言って言うこと聞かなかったら、スカートも破るぞ?」
あぁ、こりゃ俺が助けなきゃ駄目だな。
助けたのが俺だとバレたくないため、付けていた伊達眼鏡を外して、髪もボサボサとした物から髪止めを使ってて短く纏めると、俺はその現場に走った。
「おい、お前何者だ。」
「お前もヤりたいのか?二千円払えばお前も俺達の後ならヤらせてや───」
「うるさい。こんなラブコメの主人公的なイベント、早く終わらしたいんだよ。」
女子を囲む二人のチャラい服装をした男子の顔面に、俺はパンチを入れ込む。元レスリング世界二位の俺のパンチ。並大抵の奴は一撃でノックアウトするだろう。
俺の予想通り、力をあまり入れない状態で殴ったというのに、この二人はさっきまで女子を襲っていた威勢はどうしたと疑いたくなるような程、脆くその場に倒れた。
そんな脆く倒れた二人と、二人をこのようにした俺をブルブルと足を震わせながら見つめる女子。
よしっ。
とりあえず、やることはやったし早く帰るか。
時間が命だと、この女子から声を掛けられる前に立ち去ろうとしたが、そんな俺の思いは打ち砕かれた。
「あ、ありがとうごさいます。」
「うぅん。お礼はいいよ。それじゃ。」
「ちょっと待ってください───」
立ち去ろうした俺の手をこの女子はがしっと掴む。
どこから、この力が。
本気を出せば振りほどけそうだったが、本気を出さなければ振りほどけなさそうな力で掴んできた。
「服破られちゃって。実はここから動けなくて。」
「あぁ。確かにそうだな。なら、俺のパーカーを使え。大きくてブカブカだと思うが、無いよりはマシだろ。」
今着ていたパーカーを脱ぎ、そのまま襲われていた少女へと渡す。もうこれでいいだろう。さっさとこの場から離れようとしたが、まだ何か用があるのか、また俺の手をこの少女は掴んできた。
「実は、下の方も………」
「確かに……破れ掛けているなぁ…」
「私家まで遠いので、歩いていったら破れちゃうと思うんです。それに、また襲われたら恐いですし。」
「俺にどうしろと?」
「貴方の家まで連れてって下さい。」
にっこりと笑みを浮かべながら、俺の持っていたエコバックに入ったぶりや豆腐やワカメを指差す。
やべっ。
スーパーの買い物帰りってバレたか。
それに、スーパーの買い物帰りってことは家が近いと………
「貴方が持っているぶりや豆腐にワカメ。多分予想ですけど、スーパーの買い物帰りですよね。それに、ぶりは魚で時間が経つと腐るというのに、氷が入っていない。……ってことは、貴方の家はそこまで遠くないということですよね?私の家は、ここから最低でも四十分。なら、貴方の家に行って服を借りた方がいいですよね?」
「いや……でも。普通に考えて襲われた女の子が男の家に行くのは───」
「それなら大丈夫です。人を見る目くらいは持っていますので。」
がっしりと、俺の腕を掴む力が強くなる。
あ~あ。
どうしてこうなった。
襲われていた時はもっとか弱そうだったのに。
滅茶苦茶強気なんだがこの子。
しかも、逃げられないよな状況的に…………
「それじゃあ連れてって下さい。えぇと……名前は?」
「黙秘権を行使する。」
「なら、叫んでいいですか私?服も破れてますし、きっ──」
「───転座徳だ。」
「そうなんですね。私の名前は、石縄香織って言います♪香織って呼んで下さい。徳君♪」
「……どうしてこうなったんだ。」
「そんな顔してないで、早く行きましょう。じゃないと、また叫びま──」
「付いてこい。こっちだ香織。」
どうして、こうなった。
モブ生活を始めて一ヶ月ちょい。
もう、主人公がやるようなラブコメが始まり掛けているんだが。
ニコニコと嬉しそうな彼女に、俺は大きくため息をついた。
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