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石崎香織side2
しおりを挟む「よしっ!予約してた今日発売のアイドル雑誌も無事本屋で貰ってきたし、家で楽しみますか!」
本屋で予約しておいた本を胸で抱えながら、私は幸せな気分で帰路を歩く。もう辺りは、外灯が無ければ何も見えないような時間。いつものように、本屋に飾られているアイドルの雑誌を読んでいたら、初めは四時くらいだったのに、気付けばもう七時を過ぎている。
「あ~あ。イケメン何処かに居ないかな~?」
そんな希望を胸に、とことこと暗い中を歩いていると、服装すらただしくない不良のような奴等に、もう少しで家に帰れるような路地裏のようなところで肩を触られた。
「ねぇねぇ、少しだけだからさ~」
「本当に一瞬だけだからさ。少しくらいいいよね?」
ヤバい。
自分の肩を触った奴等の顔を見て、私は逃げたくなる。
こいつら、同じ学校の違うクラスの同級生で、私に何度も告白してきた奴で、いわゆるチャラ男だ。
名前は知らないが、何度もしつこく告くられたので顔は覚えている。
何でこいつらが。
ヤバい、凄く逃げたい。
とりあえず、こんな路地裏の近くに誰もいないと思うが、誰かいたらラッキーだと思って声を上げる。
「や…やめて下さい。」
さぁ、誰か近くに居てくれ。
そんな私の思いも外れ、誰も助けに来てくれない。
ねぇ、何もしないよね?
私、イケメンでもない貴方達とすることになるのは嫌よ。
所詮、やることといったらゲーム程度よね。
ねぇ、聞いてる?
「ひ、ひいぇ。」
「ほらほら。俺達のことを聞いていれば服なんて破る必要なかったのに。」
「ここまで言って言うこと聞かなかったら、スカートも破るぞ?」
急に私の服を破き始めたこいつらに、とても屈辱的だが恥ずかしい声を出してしまう。
ねぇ、止めて。
本当にイケメンじゃないと嫌だから。
てか、制服破るとかどんだけ力あるんだよコイツら。
全然動けないし。
襲わないでよ。
誰か……助けて。
そう思った瞬間、暗闇でよく見えないが誰かがこっちに向かって走ってくる。暗闇の中、どんな姿か全然見えないが、目を凝らして見てみると背の高い某アイドルグループに匹敵するぐらいのイケメンだ。何処に居たのこんなイケメン。恐怖で足が震えていたが、私は恐怖よりもイケメンに出会えた嬉しさが勝ってしまった。
「おい、お前何者だ。」
「お前もヤりたいのか?二千円払えばお前も俺達の後ならヤらせてや───」
「うるさい。こんなラブコメの主人公的なイベント、早く終わらしたいんだよ。」
私の服を破こうとしたこいつらが、私を物として扱うような酷い発言を繰り広げようとしたが、この急に現れたイケメンはそれらの話を無視して、この下品な奴等の顔面に目で追えないくらいの速さのパンチを打ち込んだ。
す、凄い。
イケメンは強いというイメージがあったが、服を破る程の力を持ったコイツらをワンパンで片付けてしまう彼に、思わず感嘆を漏らす。
そんなイケメン君。
なんと、私を助けたことに満足したのか、もうこの場から離れようとする。
絶対に逃がさない。
初めて出会ったイケメンで一目惚れしてしまったが、それ以上に助けられたことから男らしさも感じて、好きだという言葉以外浮かばない。
心臓がドクンドクンと激しく動く。
これが恋という物なのだろうか。
私は、いつの間にか逃げようとする彼の腕を掴んでいた。
「服破られちゃって。実はここから動けなくて。」
「あぁ。確かにそうだな。なら、俺のパーカーを使え。大きくてブカブカだと思うが、無いよりはマシだろ。」
彼は買い物帰りの様子で、魚があるというのに氷を入れていないことから、彼は家に近いということが分かり、これを機に何か服を貸して貰うという程で彼の家に入ろうかと思ったが、彼はもの凄いスピードで、何も嫌な風な感じを出さず、着ていたパーカーを私に被せて着た。
思い通りにいかないことに少し腹が立ったが、着せられたパーカーを前にそんな考えは消える。
いい匂い。
それに、暖かい。
イケメン最高かよ。
パーカーを着せられた喜びで、その場に鼻血を出してしまいそうになったが、何とか踏ん張って、逃げようとする彼を引き留める。
「実は、下の方も………」
「確かに……破れかけているなぁ…」
「私家まで遠いので、歩いていったら破れちゃうと思うんです。それに、また襲われたら恐いですし。」
「俺にどうしろと?」
「貴方の家まで連れてって下さい。」
明らかに嫌そうにする彼に分からせる為に、私は氷が入っていない魚の入ったエコバックを指差す。
「貴方が持っているぶりや豆腐にワカメ。多分予想ですけど、スーパーの買い物帰りですよね。それに、ぶりは魚で時間が経つと腐るというのに、氷が入っていない。……ってことは、貴方の家はそこまで遠くないということですよね?私の家は、ここから最低でも四十分。なら、貴方の家に行って服を借りた方がいいですよね?」
「いや……でも。普通に考えて襲われた女の子が男の家に行くのは───」
「それなら大丈夫です。人を見る目くらいは持っていますので。」
彼は、観念したような様子で肩を落とす。
えへへ。
これで、イケメン君の家を暴けるぞ。
家本当は近いけど、こんなイケメンの住所を暴けるチャンスだし仕方ないよね。
「それじゃあ連れてって下さい。えぇと……名前は?」
「黙秘権を行使する。」
「なら、叫んでいいですか私?服も破れてますし、きっ──」
「───転座徳だ。」
「そうなんですね。私の名前は、石縄香織って言います♪香織って呼んで下さい。徳君♪」
「……どうしてこうなったんだ。」
「そんな顔してないで、早く行きましょう。じゃないと、また叫びま──」
「付いてこい。こっちだ香織。」
名前を聞くと、転座徳という名前らしい。
恥ずかしいが、ここはこの勢いに乗って、下の名前で呼んでみることにする。
すると、彼も私のことを香織と呼んでくれた。
めちゃ嬉しい。
何これ、この体がふわふわするような暖かい気持ちは。
脅してしまったけど、別にいいよね。
嫌そうな顔をする彼に、いつもしている愛想笑いじゃなくて本心からの笑みをしてしまった。
今の私、どんな顔しているんだろう。
あまり表情が読めない暗闇でよかったと思った。
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