神童と言われてきた俺は、爪を隠しモブに徹します。……ってあれ?気付けば主人公がやりそうなラブコメが始まってる件

狼狼3

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料理で喜ばれたのは初めてかもしれない。

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「それじゃあ、そこのソファーに座って、テレビでも見たりゲームでもして暇を潰しといてくれ。ちょっと料理作るから。」
「え?料理作れるんですか徳君。」
「まぁ、多少な。あまり期待するなよ。」
「はい。期待して待ってます♪」
「期待してからの絶望は凄いからな。てか、飯食べたらさっさと家帰れよ。」

 家に香織を連れて来て、ここ二十分。
 家に帰ってきたというのに、全然落ち着けていない。
 しかも、香織はジャージを着させて服は大丈夫になったと言うのに、何故かもうちょっとここに居るらしい。
 はぁ………

 家に入ってはくんくんと俺の私物の匂いを嗅ぐ香織を黙らせ、ぶかぶかのジャージを香織に着させるまで、二十分近く掛かっている。ただジャージを着させるだけでこんなに時間が掛かるだろうか?俺なら、三分も掛からずにジャージなど着替え終わる。それを考えると、どれだけこの香織がヤバいということが分かる。

  香織にジャージを着させる時、男の俺に着替えているところを見られるのは香織が嫌がると思い、ジャージを渡して風呂場へ行かせると、全然風呂場から戻ってこない。
 何かあったのかと思い、コンコンと風呂場の扉を軽く叩いてからそこへ突入すると、そこにはこれから洗濯する予定だった下着などを漁る、まだ俺のパーカーを着たままの破れそうなスカートを履いた香織の姿があった。

 そんな姿を見てどうしたかって?
 
 当然、俺は怒った。
 さっさと着替えろと。
 すると、香織は「イケメンにこうして怒られるのもいい。」とかいって、体をくねくねし始めた。
 そんな香織を見て、俺は大きくため息をついた。
 どうして、こんな奴を俺は家に入れてしまったんだと。

 とりあえず着替えて貰わないと帰って貰えないので、早く着替えろと俺は言うが、全然香織は着替えてくれない。何故着替えないのかと聞くと。もっとここに居たいからという。
 は?
 ふざけんな。
 ここに来た本来の目的から、滅茶苦茶ずれてますよね。

 本来、こうして男が女を家に招き入れるのは本当に危険なのだ。これを知り合いやクラスメイトの誰かに見られたとしたら、こいつと俺が付き合っているとかそういう噂をされるかもしれないし。
 ……まぁ、今の俺は学校でもないし伊達眼鏡を外していたりするため、学校の姿と今の俺は全然見た目が違うのでまだいいとして、香織は普段のままなので、香織が香織の知り合いとかに見られた場合がヤバい。
 
 だから、俺は早くこいつを帰らせたい 。
 てか、もう一生家に招きたくない。
 こいつとの彼氏とか絶対嫌だし、そもそもモブは彼女を作らない。

 とりあえず滅茶苦茶嫌だったが、このままじゃ腹は減るし、状況は絶対に進まない為、俺はもう少し居ていいから早く着替えろと言った。すると、香織はそれを待っていたかのように、さっきとは打って変わって一分掛かるか掛からないかぐらいで、風呂場から出てきた。

 こうして、今に至る。
 こいつのせいで落ち着かないし、お腹は減るしという最悪な状態だ。
 早く飯でも食わせて帰らせよう。
 そう考えた俺は、久しぶりに作るが出来るだけ時短出来るところは時短をして、さっさっさと流れるように手順を踏み、自分でも驚くスピードでぶりの照焼きと味噌汁を作った。

「おいっ。作ったぞ。運ぶの手伝ってくれ。」
「は、早くないですか?まだ、十五分くらいしか経ってないですよ?」
「……ってか、香織は何をやっているんだ?」
「いや、人気ゲームのパクットモンスターがあったので、ちょっとやってみたくて。うわぁ♪パクットモンスターといえばこれだという電気ネズミのパクモンに、わざわざ「ピカ丸」っていうニックネームつけてる。可愛い過ぎかよぉ。」
「おいっ!そんなのは置いといてさっさと飯を運べ。」

 デレデレしている香織から、パクモンを恥ずかしさを紛らわすように出来るだけ早く元の場所にしまうと、香織に作ったばかりのぶりの照焼きと味噌汁を運ばせる。……にしても、どうしてこんなものを堀当てるんだよこいつは。

 味噌汁とブリの照焼きが並んだテーブルに、まだよそり忘れていたご飯を炊飯器から茶碗に取り分けると、味噌汁が冷めないうちに急いで運んだ。

「「いただきます。」」

 手を合わせる音が、ぴったりと重なる。
 その合図で、俺は久しぶりに食べるブリの照焼きにかぶりつくと、顔がとろけそうになる程旨い。
 この口に入れればとろけるような身に、これしか無いだろと言うしかないような程その身にマッチする甘辛い照焼きのタレ。
 久しぶりに作って食べてみたが、やはり旨い。
 隣に座る香織を見てみると、何故か香織は泣いていた。

「イケメンの作ったご飯。めっちゃ美味しいよぉ~」
「おおぅ。そんなに旨いか。」
「滅茶苦茶美味しいですよ。期待していましたけど、想像以上でした。徳君は何か、料理関係の仕事に就こうと思っているんですか?」
「いや、そのつもりはないな。まぁ、趣味程度に作る程度だ。」
「こんなに美味しいのに勿体ない。店開けば絶対繁盛するのに。私なら絶対に毎日通いますよ。」
「そ、そんなにか。」
「な、何ですか徳君?もしかして、こんなアイドル顔負けの美女に褒められて、照れてるんですか♪?可愛いところありますねぇ~」
「いや、そういう訳じゃないから安心しろ。ただ、こうして本当に美味しそうに食べてくれたこと無かったからさ。」
「?」
「ここには住んでないけど、俺には二人の両親が居て、二人とも俺の作る料理を褒めてくれるんだ。でも、香織のように本当に美味しそうに食べて貰ったことはなくて、今思うと気を遣って言わせてたのかもしれないと思ったからさ。こうして本当に美味しそうに食べて貰うところを見ると、何か嬉しくて。」
「へぇ~徳君、もっと照れていいんですよ?」
「うるさい。早く飯食べて帰れ。」

  本当に美味しそうに、顔をとろけさせながら食べる香織を見ながら食べる飯は、いつもと違った暖かさがあって何か気分がよかった。何かこう、体温とかで感じる暖かさじゃない、内から溢れ出てくるこの不思議な感じ。
 
 たまには、香織に飯を作ってあげるのもいいと思った。
 
 ………でも、早く帰れよ?
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