神童と言われてきた俺は、爪を隠しモブに徹します。……ってあれ?気付けば主人公がやりそうなラブコメが始まってる件

狼狼3

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モブの俺に女子が連絡先を下さいと迫ってきます。

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「よし、それじゃあ時間ヤバいし。さっさと家に帰れ。」
「嫌だ、嫌だ。もっとここに居たい。」
「上目遣いされたって、足をそんなにバタバタさせたって無理だ。帰って貰う。」

 ソファーの上で、足をものすごい早さで上下にバタバタとさせながら、俺のことを上目遣いで見てくる香織。スカートならパンツがもろ見えるのではないかというくらいには、バタバタと足を激しく動かしている為、本当にジャージを着させてよかったと思っている。一瞬、生憎も可愛い俺の下着を漁るような変態からの上目遣いにドキッとしてしまいそうになったが、ずくに冷静さを取り戻し軽くあしらう。
 
「なぁ、もうタクシー呼ぶからそれで帰ってくれない?」
「え?タクシー?」
「もうこんな時間だし、外も歩けないだろ。それにあんなことされたし、外歩くの怖くないか?だから、タクシーでも呼んでやろうかと。」
「えぇ?いや、でも……タクシーの人が男の人だったら私…」
「大丈夫だ。俺、そのタクシー会社のトップ層に知り合い居るから。そいつに頼んで、女性にして貰う。」
「そ、そんなぁ……」

 タクシーを呼ぶと言ったら、明らかに嫌そうな態度をこいつはとる。
 安心して家へ帰れる手段だと思うし、少し掛かる金さえも俺が払うと言っているのだから、香織にとってそれ以上ない提案だと思うんだが。
 それでも、こいつはう~んと首を傾げたりして、何とか考えを引き出そうと必死に考えている。
 
 こいつマジで何なんだ。
 とりあえず、このままこいつが何かを思いついて、さっきのように抵抗されるのだけは絶対に阻止したかった為、早い内に俺は手を打つことにした。

「よぉ~久しぶり健吾。」
「おおっ。徳か。どうしたんだこんな時間に?」
「実は、タクシーを呼びたいんだが、そのタクシーの運転手を女性にしてくれないか?」
「何だよぉ~そんなことかよ。勿論大丈夫だ。……っていうか、俺をもっと頼っていいんだぞ。俺はお前に……」
「いいんだよ。とりあえずありがとな、またいつか、どっか遊びにでも行こう。」
「分かった。いつか絶対恩返しさせてくれよ。特大の。」
「また今度な。」

 そよ風が当たる気持ちいい中で、俺は健吾からの電話を切る。
 健吾は、今はもう副社長という立派な地位を築いていてお金もかなり稼いでいるが、昔俺が健吾と会った時は借金に埋もれて、食にありつけるかも怪しいという感じの汚い服を着た奴だった。
 どうして借金に埋もれたかというと、健吾にはアイドル並みの美貌を持つ結婚を決めた相手が居たらしいのだが、実はその美女には他に男が居たらしく、その女に貯金していたお金などを全てかっさられた挙げ句逃げられたようで、逃げられる前にその女がクレジットカードで買いに買いまくったツケが襲いかかってきたらしく、借金に借金を当てるという自転車操業をしていたらしい。
 聞いてみればものすごく酷い話で可哀想な健吾だが、どうしてこんな健吾と俺が出会ったかというと、今は描いていないが俺が昔絵にはまり絵を描いていた時、実はその描いた絵の健吾は大ファンで、俺の絵の展覧会みたいなのが開かれていたところに健吾は全て来ていたので、俺は健吾のことを「毎回くる熱狂的なファン」として、知っていたのだ。
 そんな熱狂的なファンが、突如来なくなった。 
 今まで来てたのにどうしてだろうと思っていたら、俺の展覧会が開かれている会場の近くにそいつは居て、そわそわとうろちょろしていた様子だったので興味程度に話掛けたら、さっきのような状態に陥って、展覧会に行くお金も無いと泣かれて言われた訳だ。

 そんな話を聞いた俺。
 当時描きまくっていた俺の絵はとても高値で人気があるらしく、一枚あたり数百万で売れていて、気付けば貯金額は二億を超えていた。
 絵でも異次元並みの才能を発揮していた俺だが、こんな大金使う機会もなく、どのようにして使うか迷っていたので、せっかくの出会いだし健吾の借金を俺が肩持ちして全て払ってあげることにし、これからも普通に生活していけるように二百万近く健吾に俺は渡した。

 こうした結果、死ぬ程健吾に泣かれたのを今でも覚えている。そんな健吾とは、俺の描く絵や唯一の俺の趣味であったラノベで気が合い、今でもたまに遊ぶ程の親友となっている。

 今思うと、本当にあの時助けてよかったなと思っている。
 こうしてたまに遊ぶことも出来るような、俺にとって唯一の親友だし、何しろこういう非常事態の時にも役に立ってくれる。
 俺が引っ越しをしようとした時、止めてくれなかった親に心が折れそうになった俺を、仕事を休んでまで真剣に慰めてくれたのは健吾だった。

 ………正直、慰めて貰えなかったら、今頃俺はこの世に居ないかもしれない。
 それ程までに、俺の精神は狂っていた。
 
 俺も健吾には返せない恩があるし、事ある度にあの時の恩を返そうとしてくる健吾。俺にとっちゃ気にしていないような恩を返そうとする健吾は、本当にいい親友だと思う。

 そんな親友との出会いを思い返していると、邪魔されないようにわざわざ隠れていた俺に気が付いたのか、閉めておいた扉が思いっきり開かれた。

「はぁはぁ……間に合った?」
「残念。時間切れだ♪呼んでやったから帰れ。」
「そ、それなら。」
「うん?どうした?」
「連絡先交換しましょ♪」
「あっ、急にスマホの充電が切れた。」
「まだ百パーセント近くあるでしょ?近くにいた時、チラッと画面を見たら充電百パーセントMAXだったよ?嘘つくなんて酷いなぁ♪」

 ニヤニヤしながら香織は、電気がついていないような薄暗い部屋に居る俺に、スマホを片手に迫ってくる。
 なぁ……
 これって、さっき香織に迫った男達と同じことをしてないか香織。
 ニマニマと笑いながら近づいてくる様子に、少なからず恐怖を覚えるんだが。
 
 それに、モブが女子の連絡先を持っているなんておかしいよな?

 どうやって断ろうか、迫ってくる香織に俺は頭を抱えたくなる。
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