神童と言われてきた俺は、爪を隠しモブに徹します。……ってあれ?気付けば主人公がやりそうなラブコメが始まってる件

狼狼3

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モブじゃなくなった神童

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「それじゃあ、このポーズとって?」
「……このポーズか?出来るかちょっと不安だぞ?」
「さっき何でも出来るとか言ってたじゃん。なら、出来るんじゃないの?」
「こ、これであってるか?」
「はい♪じゃあそこに乗ります♪」
「ふぁっ!!」
「はい。パシャ♪」

 
「少し縮こまって、両手を後ろに伸ばして」と言われたのでその通りのポーズをとると、あと少しで写真を撮るという時に、香織が後ろから俺の肩に手を乗せて乗ってきた。急に香織に乗られた俺は何が起きたか分からなくて、後ろから香織に乗られたと頭で理解した時には、もう写真は撮られていた。
 俺に乗った写真が撮れたことに満足したのか、写真を確認すると香織は俺の肩から手を離し俺から飛び降りる。乗られて分かったが、滅茶苦茶香織は軽かった。

「おぉ!いいじゃんないですか♪」
「何がいいんだよ。」
「ほらほら♪焦った様子の徳君に嬉しそうに乗ってる私。いいと思いません?」
「全然良くありません。」
「そんなこと言ってないで、次の写真撮りますよ♪次はこのポーズ取って下さい。」
「おい、また縮こまるのかよ………また乗ってくるとかないよな?」
「さぁ、早く早く♪」
「スルーしやがったぞ、こいつ。」

 俺はため息をつきながら縮こまる。
 すると、少し経ってから香織が近づい来て、俺の肩に腕を立てる。
 これは何だ?
 
「ほら、団子ポーズ出来ましたよ♪」
「ん?成る程そういうことか。」
「私団子好きなんですよね♪徳君はどうなんですか?」
「俺も結構好きだぞ。久し振りに団子食べたくなって来たし、団子作るか。」
「団子作れるんですか?なら、手作り是非食べたいです。っていうか、そんなに料理出来るならやっぱ料理屋開いたほうが……」
「いいんだよ。趣味程度だから。」
「それじゃあ、いつか食べさせて下さい。」
「はいはい。それで、次はどんな写真を撮るんだ?」
「次はですね……こうです。」
「今回は立っているだけだな。」 

  俺は胸を張ってビシッとその場に立つ。
  これからどうするんだ。
  俺がこれからの展開がどう進むか考えようとすると、香織は俺に向かって飛び付いて来た。

「なっ!!」
「抱きしめちゃいました♪」
「抱きしめちゃいましたじゃないだろ!」
「もしかして、嫌でしたか?」
「いや、そういう訳じゃ。」

 香織に抱きつかれた俺。
 抱きつかれるのは嫌だと思わないが、あの……そうだ。モブとして、女子に抱きつかれるのは可笑しいだろ。それも、変態だがこんなに可愛い美少女に。

 俺はどう返答すればいいか悩んだ。

「そういえば、徳君って私に隠してることありません?」
「え?何で?」
「だって、楽しそうな顔をして話をしていたのに、急に嫌そうな顔をするんですもん。話の内容も変わっていないのに。だから、何かあるのでは無いかと。」
「それは……まぁ。」

 ヤバい。
 俺がモブになりきろうと、実力を隠してるのがバレてる。
 ここは素直に、俺がモブを演じようとしていることと、そうなった経緯を話した方がいいのか?

 写真を撮る、パシャという音と共に強い光がプリグラの中を照らす。普通写真も撮り終わったので、ここで香織は俺を抱きつくのを止めるはずだったが、そのまま俺は抱きつかれていた。

「私も、徳君のように実は徳君に言えていないことがあります。言いたいけど、簡単には言い出せないことです。徳君はどんなものですか?」
「お、俺は……」
「私は、徳君に料理を作って貰ったり徳君に不良共から助けて貰ったり、とてもお世話になりました。それはもう、顔以外でも惚れてしまいそうになる程優しくて。今回だって、嫌々ですけど付いてきてくれてますし。助けられた私は、徳君に恩返しのようなことをしたいんです。だから、その徳君が隠していることを教えてくれませんか?私がその隠していることを少しでも解決出来るようになれればいいと思ってるんですけど。」
「そ、それは。」

 香織の言葉に、俺は動揺する。
 こいつなら、俺がどれだけの実力を持っていても距離を置いたりせず今のような関係を続けてくれるのか?
 本当のことを話したら、絵とかで稼いだ金を迫ったりしてこないか?
 言いたいけど、言えない。
 隠している物がバレたら、こいつが離れてしまうかもしれないから。
 ……ってあれ?何で俺はこいつと離れたら嫌だと思ってしまうんだ?
 そう思った瞬間、香織はまた口を開く。

「徳君だけに言わせるのもなんなので、私も隠してたこと言います。私は徳君のことが好きです。顔が好みなのもありますけど、一番は私は徳君の下着を漁ったりしたのに、引いたりしないで関係を一応は続けてくれた優しさや、不良達から助けてくれたりして心強かったり、今もしている私の横暴に付き合ってくれる心の広さから、一緒に居たいなと思っていますし、好きだなと思っています。………ここまで言っても、徳君は私に隠してることを教えてくれませんか?」
「お、俺は………」

 ここで止まったら、もう一生本当の自分を隠して生きていくことになる。
 何だか、そんな風に何故だか感じた。
 それに、香織はこんな俺を好きと思ってくれている。
 一歩先へ、進むしかない。
 震えながらも、俺はまた人を信じてみるとにした。

「実は俺……」
「泣かないで大丈夫ですよ。私が付いていますからね。」
「うぅ……ありがとう。」

 全部、全部、俺は泣きながら話した。
 親ですら愛情を俺に対して持っていないことや、友達は金目的で近づいてくる奴等しか本当は居なかったことや、実力のあまり嫉妬されて嫌われたりしていたりして、人間不信に陥っていたこと。
 こんな話、聞いていてもつまらないだろう。 
 でも、そんな話を香織は俺を優しく撫でながら聞いてくれた。

「それで、告白したからには返事が貰いたいんだすけど………」
「ちょっと、待っててくれ。」
「……優しさで付き合われても、私は嫌ですよ。」
「もうちょっと、こうやって……ほら出来た。」
「え?冗談じゃないですよね……これ?」
「あぁ、本当だ。俺は人間不信だから、こうやって証を残したいんだよ。それに、言葉っていうのは忘れたら無くなってしまうが、こうしたら無くならなくて済むだろ?」
「大好きな人の言葉を忘れる訳がないじゃないですか。」
「あぁ、じゃあ言ってやるからもうちょっと近付いて来い。」
「んっ!!ちょっと、いきなりそういうことするのは!!」

 もう、俺はモブを演じなくて良くなった。
 モブじゃなくなった俺は、物語の主人公を演じたっていいだろう。
 
 モブじゃなくなった俺は、頬をほんのりと紅く染めて、もじもじと近付いてくる香織の肩に手を回し、出来るだけ優しく香織を自分に引き付け、そっと柔らかそうな唇にそっと自分の唇をつける。香織は急な出来事に何が起こったのか理解出来なかったようだが、時間が少し経つと理解したのか、さっきよりも赤く香織は頬を染めた。
 そんな林檎のように、甘くて美味しそうな香織の耳元で俺は呟く。

「大好きだよ。俺と付き合え。」

 俺の言葉を聞いたせいか、ブルブルと体を震わせた後香織はトロンとした顔で
──当たり前ですよ。一生返せないような恩返しを返さなきゃいけないので。
 と言って、俺と香織の唇はまた重なった。


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