13 / 14
モブじゃなくなった神童
しおりを挟む「それじゃあ、このポーズとって?」
「……このポーズか?出来るかちょっと不安だぞ?」
「さっき何でも出来るとか言ってたじゃん。なら、出来るんじゃないの?」
「こ、これであってるか?」
「はい♪じゃあそこに乗ります♪」
「ふぁっ!!」
「はい。パシャ♪」
「少し縮こまって、両手を後ろに伸ばして」と言われたのでその通りのポーズをとると、あと少しで写真を撮るという時に、香織が後ろから俺の肩に手を乗せて乗ってきた。急に香織に乗られた俺は何が起きたか分からなくて、後ろから香織に乗られたと頭で理解した時には、もう写真は撮られていた。
俺に乗った写真が撮れたことに満足したのか、写真を確認すると香織は俺の肩から手を離し俺から飛び降りる。乗られて分かったが、滅茶苦茶香織は軽かった。
「おぉ!いいじゃんないですか♪」
「何がいいんだよ。」
「ほらほら♪焦った様子の徳君に嬉しそうに乗ってる私。いいと思いません?」
「全然良くありません。」
「そんなこと言ってないで、次の写真撮りますよ♪次はこのポーズ取って下さい。」
「おい、また縮こまるのかよ………また乗ってくるとかないよな?」
「さぁ、早く早く♪」
「スルーしやがったぞ、こいつ。」
俺はため息をつきながら縮こまる。
すると、少し経ってから香織が近づい来て、俺の肩に腕を立てる。
これは何だ?
「ほら、団子ポーズ出来ましたよ♪」
「ん?成る程そういうことか。」
「私団子好きなんですよね♪徳君はどうなんですか?」
「俺も結構好きだぞ。久し振りに団子食べたくなって来たし、団子作るか。」
「団子作れるんですか?なら、手作り是非食べたいです。っていうか、そんなに料理出来るならやっぱ料理屋開いたほうが……」
「いいんだよ。趣味程度だから。」
「それじゃあ、いつか食べさせて下さい。」
「はいはい。それで、次はどんな写真を撮るんだ?」
「次はですね……こうです。」
「今回は立っているだけだな。」
俺は胸を張ってビシッとその場に立つ。
これからどうするんだ。
俺がこれからの展開がどう進むか考えようとすると、香織は俺に向かって飛び付いて来た。
「なっ!!」
「抱きしめちゃいました♪」
「抱きしめちゃいましたじゃないだろ!」
「もしかして、嫌でしたか?」
「いや、そういう訳じゃ。」
香織に抱きつかれた俺。
抱きつかれるのは嫌だと思わないが、あの……そうだ。モブとして、女子に抱きつかれるのは可笑しいだろ。それも、変態だがこんなに可愛い美少女に。
俺はどう返答すればいいか悩んだ。
「そういえば、徳君って私に隠してることありません?」
「え?何で?」
「だって、楽しそうな顔をして話をしていたのに、急に嫌そうな顔をするんですもん。話の内容も変わっていないのに。だから、何かあるのでは無いかと。」
「それは……まぁ。」
ヤバい。
俺がモブになりきろうと、実力を隠してるのがバレてる。
ここは素直に、俺がモブを演じようとしていることと、そうなった経緯を話した方がいいのか?
写真を撮る、パシャという音と共に強い光がプリグラの中を照らす。普通写真も撮り終わったので、ここで香織は俺を抱きつくのを止めるはずだったが、そのまま俺は抱きつかれていた。
「私も、徳君のように実は徳君に言えていないことがあります。言いたいけど、簡単には言い出せないことです。徳君はどんなものですか?」
「お、俺は……」
「私は、徳君に料理を作って貰ったり徳君に不良共から助けて貰ったり、とてもお世話になりました。それはもう、顔以外でも惚れてしまいそうになる程優しくて。今回だって、嫌々ですけど付いてきてくれてますし。助けられた私は、徳君に恩返しのようなことをしたいんです。だから、その徳君が隠していることを教えてくれませんか?私がその隠していることを少しでも解決出来るようになれればいいと思ってるんですけど。」
「そ、それは。」
香織の言葉に、俺は動揺する。
こいつなら、俺がどれだけの実力を持っていても距離を置いたりせず今のような関係を続けてくれるのか?
本当のことを話したら、絵とかで稼いだ金を迫ったりしてこないか?
言いたいけど、言えない。
隠している物がバレたら、こいつが離れてしまうかもしれないから。
……ってあれ?何で俺はこいつと離れたら嫌だと思ってしまうんだ?
そう思った瞬間、香織はまた口を開く。
「徳君だけに言わせるのもなんなので、私も隠してたこと言います。私は徳君のことが好きです。顔が好みなのもありますけど、一番は私は徳君の下着を漁ったりしたのに、引いたりしないで関係を一応は続けてくれた優しさや、不良達から助けてくれたりして心強かったり、今もしている私の横暴に付き合ってくれる心の広さから、一緒に居たいなと思っていますし、好きだなと思っています。………ここまで言っても、徳君は私に隠してることを教えてくれませんか?」
「お、俺は………」
ここで止まったら、もう一生本当の自分を隠して生きていくことになる。
何だか、そんな風に何故だか感じた。
それに、香織はこんな俺を好きと思ってくれている。
一歩先へ、進むしかない。
震えながらも、俺はまた人を信じてみるとにした。
「実は俺……」
「泣かないで大丈夫ですよ。私が付いていますからね。」
「うぅ……ありがとう。」
全部、全部、俺は泣きながら話した。
親ですら愛情を俺に対して持っていないことや、友達は金目的で近づいてくる奴等しか本当は居なかったことや、実力のあまり嫉妬されて嫌われたりしていたりして、人間不信に陥っていたこと。
こんな話、聞いていてもつまらないだろう。
でも、そんな話を香織は俺を優しく撫でながら聞いてくれた。
「それで、告白したからには返事が貰いたいんだすけど………」
「ちょっと、待っててくれ。」
「……優しさで付き合われても、私は嫌ですよ。」
「もうちょっと、こうやって……ほら出来た。」
「え?冗談じゃないですよね……これ?」
「あぁ、本当だ。俺は人間不信だから、こうやって証を残したいんだよ。それに、言葉っていうのは忘れたら無くなってしまうが、こうしたら無くならなくて済むだろ?」
「大好きな人の言葉を忘れる訳がないじゃないですか。」
「あぁ、じゃあ言ってやるからもうちょっと近付いて来い。」
「んっ!!ちょっと、いきなりそういうことするのは!!」
もう、俺はモブを演じなくて良くなった。
モブじゃなくなった俺は、物語の主人公を演じたっていいだろう。
モブじゃなくなった俺は、頬をほんのりと紅く染めて、もじもじと近付いてくる香織の肩に手を回し、出来るだけ優しく香織を自分に引き付け、そっと柔らかそうな唇にそっと自分の唇をつける。香織は急な出来事に何が起こったのか理解出来なかったようだが、時間が少し経つと理解したのか、さっきよりも赤く香織は頬を染めた。
そんな林檎のように、甘くて美味しそうな香織の耳元で俺は呟く。
「大好きだよ。俺と付き合え。」
俺の言葉を聞いたせいか、ブルブルと体を震わせた後香織はトロンとした顔で
──当たり前ですよ。一生返せないような恩返しを返さなきゃいけないので。
と言って、俺と香織の唇はまた重なった。
10
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる