土地神に転生した俺、最強領地を築く!〜弱小領地から始まる異世界建国記〜

服田 晃和

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第1章 土地神ってなんですか

第8話 成長と停滞

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 俺が村人達から『土地神様』と崇められるようになってから1ヵ月の月日が経過した。時間の流れとは怖いもので、俺はこの世界での暮らしに慣れ始めてしまっている。勿論、元の世界に帰りたいという気持ちが消えたわけではない。今でも畑仕事をしていると、放置してきた自分の畑が恋しくなるのだから。

「ナオキ様!土台作り完成致しました!」

 村人達が俺の元へ報告にやって来た。彼等と共に作った畑のお蔭で、今のところ全員分の食糧を補うことが出来ている。十分な食事と十分な水分のお蔭で、村人達の体はみるみるうちに健康体になっていった。

 しかも、野菜がもたらした恩恵はそれだけに留まらなかった。

 十分な栄養を取り始めた村人達は、今まで失敗ばかりだった狩りで沢山の獲物を狩ることが出来るようになったのだ。十分な体力が戻ったことが大きかったのだろう。

 その結果、野菜では得ることが出来なかった栄養を、『肉』という最高の食材で補給することが出来るようになった。勿論加熱は必須だが。

 村人達は全て俺のお蔭と言っていたが、彼等が狩りを成功させたのは彼等自身の力によるものである。

 とまぁ、ここまで良いこと尽くしだった生活だが、全てが良かったわけではない。衣食住の食を満たしたところで衣と住は変わらないのだ。1ヵ月も同じ服を着ていれば、ボロボロになってくるのは当然。住ませて貰っているため強くは言えないが、村人達が住んでいる家は今にも吹き飛んでしまいそうな掘っ建て小屋だ。

 つまり、食の解決が済んだところで、『衣』『住』の改善を進めなければならないということだ。

 そこで俺は自分の力ではどうすることも出来ない『衣』を一旦保留にし、『住』の改善に取り組むことにした。理由は俺が使える『スキル』にある。

「ありがとう!じゃあ早速だけどみんな離れていてくれ!」

 俺は村人達に指示を飛ばし、彼等が作った家の土台の中へと入っていく。土台と言っても森から伐採してきた木を、地面に埋めただけのものだ。その木の周りに土を塗りたくって、補強しているだけ。あまりにも貧相な補強だが、スキルを使えばこれが一変する。

「『土地改善』発動!」

 改善する内容を頭に思い浮かべながらスキルを発動すると、地面だけではなく木に塗りたくっていた土にも変化が起きた。少し水分を含んでいた水が、あっという間に乾燥していき、レンガのように固くなったのだ。

 なぜこんなことが出来たのかと言うと、方法は至って簡単。

 一度『土地改善』で土質を粘土質のものへと変えておく。その土で土台を作った後、再度『土地改善』を行い、水分を全て失くしてしまうのだ。焼成を行っていないため、強度は本来のレンガより劣るものがあるが、これでも十分に使えるのである。

「よし、オッケー!あとは壁と屋根だ!みんな、もう一息頑張ろう!」
「はい、ナオキ様!」

 村人達は俺の指示を聞くと、再び働き始めた。

 お気付きだろうが、俺は彼等に対して普通の口調で話すようにしている。理由は勿論、俺が『土地神』だからだ。村人達は俺に敬語を使われると、申し訳ない気持ちになってしまうらしい。

 年上の人にため口を使うのはなんだか気が引けてしまうが、村人達の過ごしやすさを考えれば、この方が良いのだろう。

 そうこうしていると、畑の方からフランクが駆けてくる姿が見えた。手には立派なトマトとナスを持っている。

「ナオキ様!先程収穫した野菜になります!どうぞご覧ください!」
「おおー!どれも良い色してるな!」

 俺はトマトを一つ手に取り、そのまま齧り付く。みずみずしく甘いトマトに、思わず笑顔になる俺を見て、フランクも喜んでいた。

「ナオキ様のお蔭でどれも立派な野菜に成長しております!次は何の野菜を育てましょうか!?」

 フランクの言う通り、俺が使ったスキルの効果はどれも素晴らしいモノだった。『土地改善』は言わずもがな、驚くべきは『成長促進』の効果である。

 本来であれば収穫までに一月以上かかる野菜が、一瞬で収穫出来るようになってしまうのだから。しかも成長に必要な栄養を無視してだ。

 食料不足の段階ではとても嬉しい事なのだが、やはり畑をやるものとしては日々の成長を見守りたいという気持ちもある。しかし今はグッと堪えて、生活環境を整えることを第一優先に行動している。

 そのお蔭もあり、村には沢山の畑が出来ていた。ピーマン、トマト、ナス、ジャガイモ、そして小麦。今では子供達にも手伝って貰い畑の管理をしている程だ。

 どうしてこれほどまでに畑を増やせたのかと言うと、信仰Ptの入手方法が明確になり、毎日スキルを使えるようになったからというのが大きい。

 その方法とは、『村人達に毎日俺を崇めて貰う』というモノだ。言葉でも頭で考えるだけでもいい。ただそれだけで一人につき1Ptが加算されていく。加算されるのは日に一度だけなので、一日の獲得Ptは20Ptが限度なのだ。

 だがそれだけあれば、毎日『土地改善』や『成長促進』を使おうが問題ない。今では300Ptも保有しているくらいだ。だから今よりももっと畑を増やしても問題は無い、と言いたいところなのだが、実はそうではないのである。

「ひとまず野菜はこれくらいにしておこう。畑を増やしすぎると管理するのも大変だからさ」
「分かりました!」

 そう言うとフランクは俺の言葉に何の疑念も持たず、来た道を颯爽と戻っていた。俺がなぜ畑を増やすことに慎重になっているのか。なぜ信仰Ptを300Ptも保有しているのか。

 それは『移動制限』の解除方法が全く分からないからである。

 バハマの街に移動するためには、この『移動制限』というモノを解除しなくてはならない。その解除方法は『土地レベルを3にすること』だが、土地レベルを上げるための条件が不明なのである。

 『土地レベル』と言うくらいだから、土質が関係するのかと思い、畑を4つ増やしてみたのだが変化が見られなかったため、その方向ではないと判断した。育てている作物の種類も関係すると考え、極少量のみ『種生成』を使って白菜やネギを植えてみたのだが、これも関係はなさそうだった。

 そこで村人が暮らしている住環境を整えることにし、家を改築しているのだが、その件数もすでに5戸に到達している。後3戸で全ての家の改築が終了するため、その期待も薄い。

 残すは信仰Ptをキリのいい数字まで貯めてみるくらいしか無いため、あまりスキルを使わないようにしているのだ。

「一定の条件というモノがある以上、何かを満たせば必ず土地レベルは上昇するはずだ。それを一つずつ試していくしかないな」

 決意を新たにした俺は、拳を強く握りしめる。

 そして数日後、全ての住民の家が改築されたが土地レベルの変化は無かったのである。
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