土地神に転生した俺、最強領地を築く!〜弱小領地から始まる異世界建国記〜

服田 晃和

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第3章 領地開拓

第38話 新領主の野望?

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 七日後。

「ぬぉぉぉぉ!!飯じゃ!!飯を持ってこい―!!」

地獄の日々から解放されたシズクちゃんは、腹がはち切れそうになるまでご飯を食べていた。これでようやく俺達の間にわだかまりは無くなり、晴れ晴れしい気持ちで新しい生活をスタートさせることとなった。

「今回はワシも意地が悪いところもあったからのう。お相子という事で水に流してやるのじゃ!」
「そりゃぁどうも!次からは変なことしないでくれよな!」

 少しきつい口調でシズクちゃんに言い聞かせる。彼女もそれは分かっているのか、バツの悪そうな顔をしながらコクリと頷いてくれた。

 若干気まずくなった俺達の所に、秋の始まりを告げる風が吹き抜ける。ジャージが無くなって薄着になった俺にとって、大分キツイ冷たさだった。それはシズクちゃんにとっても同じだったようで、肌を手でこすりながら微かに震えて見せる。

「うーー、肌寒くなってきおった!もうそろそろ冬になるのう!!そういえば、お主はこれから先どうするつもりなのじゃ?」

 なんとなく気にでもなったのか、ふとそんな質問をしてくるシズクちゃん。俺は冬支度で忙しそうにしている村人達を見つめながら話し始めた。

「そうだなー。バハマの街へ行けるようになったのは良いけど、土地レベルはまだ3だからな。暫くはこの周辺で活動して、土地レベルを上げていこうと思ってる」
「その方が良いじゃろう!トルネア領を全域をお主の管理地にすれば、もしかしたら他領に攻め込まずとも済むかもしれぬしな!」

 安心したように微笑むシズクちゃん。だが俺はそんな彼女に対し、苦笑いを浮かべて見せた。恐らくトルネア領全域を管理地にしただけでは足りない。俺の直感がそう告げていた。

「そうだったら良いんだけどな!あーでも……トルネア領全域を俺の管理地にするって、どのくらい時間かかるんだ?」
「うーむ。ワシの予想では早くて五年かのう!その土地で暮らす生物が、お主を信仰して初めて管理地にすることが出来るのじゃ!」
「やっぱりそうだよなー。何とかして時短できる方法があれば良いんだけど!」

 そんなうまい話は無いだろうと、お互い笑う。丁度その時、背後から聞き覚えのある女性の声がした。

「ナオキ様、何かお困りですか?」

 声の方向へと振り返ると、眼帯の女性が美しいドレスに身を包んで立っていた。

「ハイネさん!?どうしてここに!?」
「ナオキ様のお蔭で、無事にトルネア領の領主を継ぐことが出来ましたので、そのご挨拶に伺ったのです!」
「おーそうだったのか!おめでとう!!」

 嬉しそうに頭を下げるハイネさん。彼女の父であるバッカスがどうなったかは分からないが、ここは素直にお祝いすべきだろう。彼女が望んでいた願いを無事に叶えることが出来たのだから。

「それで、何か悩んでいるようでしたけれど、何かお困りのことでも?」
「え?あー、実はですね──」

 彼女になら話しても問題ないだろうと感じた俺は、シズクちゃんと話していた内容をそのまま彼女へ話していく。俺の悩みを聞いたハイネさんは、顎に手を当てて黙り込んでしまった。

「……なるほど。トルネア領全域を管理するためには、領地に住む人間全員から信仰される必要があると」
「そうなんだよ!それが結構大変でさー!初対面の人に、『土地神です!』って挨拶しても、絶対信じて貰えないだろ?」
「そうですね。事前情報がなければ、頭のおかしい奴だと思われても仕方ないと思います」

 ハイネさんはそう言って申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。領主でもそう思うなら仕方がない、地道に頑張るしか無いか。そう思った矢先、ハイネさんが任せてくださいと胸に手を当てながら話し始めた。

「分かりました!私が何とか致します!!」
「え!良いのか!?」

 ハイネさんは俺の問いかけに力強く頷いて見せる。

「お二人のお蔭で領主になれたのですから、私に出来ることであればなんでも致します!領地内に御触書を出しましょう!『土地神ナオキ様が降臨なされました。近い内に新領主と挨拶に参ります』とでも出しておけば問題無いかと!」
「それ滅茶苦茶良い案じゃないか!そうすれば皆簡単に土地神だって信じてくれるだろうし!!流石領主様だな!」

 領主にしか実行出来ない案に、俺は思わずハイネさんの手を握りブンブンと振り回してしまう。それほどまでに彼女が提案してくれた案は、素晴らしいモノだった。これがあれば一年もかからずトルネア領全域を管理地にすることが出来る筈だ。

「ではその案で進めて参りましょう!1週間後にお迎えに上がりますので、それまでにご準備をお願いします!」
「分かった!有難うハイネさん!」

 ハイネさんはもう一度俺に頭を下げると連れの方と共に去っていった。彼女の背中が見えなくなったのを確認して、俺はシズクちゃんへ話しかけた。

「いやー良かったなシズクちゃん!これで何とか時短できそうだ!」

 嬉しそうに語る俺に対し、シズクちゃんは眉間にシワを寄せたままハイネさんが去っていった方向を見続けていた。明らかに不満そうなその態度に、俺は少し苛立ちめいた感情を覚える。

折角俺達の為に協力を申し出てくれたハイネさんに対して、そんな顔をするのは酷いんでは無いかと。

「なんでそんなに不服そうなんだよ。凄く良い案だと思わないか?」
「はぁ……お主は本当に抜けておるのう。前にあった時から思っておったのじゃが、あの女は小賢しい女狐じゃ!神であるワシ等と共に挨拶回りをすることで、自分が神に認められた領主だと印象付けるつもりなのじゃぞ!!」

 自分を利用されたことに腹が立ったのか、シズクちゃんは鼻息を荒げながら文句を言い続けた。ハイネさんが俺を利用しようとしているのは、俺も薄々は気づいていた。

そもそも、彼女は領主になるために俺の力を使って自らの父親を殺そうとしてたくらいだからな。

「あー……まぁそういう人だとは思ってたし、俺はそういうの別に気にしないからいいんだよ」
「ふん!!せいぜい気を付けることじゃ!ワシはついていかんからな!!勝手にするのじゃ!」

 不満そうに頬を膨らませて歩いていくシズクちゃん。一人になってしまった俺の身体を、秋風が吹きぬけていく。

 もうすぐ初めての冬がやってくる。
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