最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和

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第4章 憎しみの結末

第142話 子守りは続くよ何処までも

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 「良いですか!ユミルさんはこっちのベッドですからね!間違っても俺のベッドに潜り込まないでくださいよ!」

 「……やだ」

 不満げに頬を膨らませるユミルさんをよそに、俺は自分が使う予定のベッドを整えていた。

 夏休みも残すところ後僅かとなり、学園の始業式がもう直ぐそこまで迫っていたため、俺とユミルさんはフェルーの街から帰還していた。そこで「蒼龍の翼」のメンバーに会うためにギルドへと向かったのだが、まだ指名依頼から帰還しておらず、ユミルさんは俺の寮まで着いてきてるのである。

 勿論、宿を借りるようにお願いしたのだがユミルさんの言い分はひどいものだった。

 「……アレク……私の面倒見る……約束」

 どうやらミリオさんの話していた内容を覚えていたらしい。彼等が王都に帰ってくるまでの間、俺はユミルさんの面倒を見ると約束はしていた。だがユミルさんもミリオさんから俺の言う事は聞くようにと言われていた筈なのだが。

 「俺の言う事も聞くって約束ですよ?」

 「……知らない」

 そう言ってソッポを向いてしまう彼女に、言うことを聞かせるのは不可能だった。

 面倒ごとはその後も続いた。ギルド内で話をしていた俺とユミルさんを見つけた、ギルドマスターのヘレナさんに呼び出しを喰らってしまったのだ。用件はユミルさんに対しての指名依頼についてである。
 
 どうやら私情を挟んだ指名依頼はギルドとしてもグレーゾーン扱いらしく、今回は横取りという点も含めて本来であれば厳重に処罰されるらしい。しかし、お互いがAランク冒険者という事もあって、今回は不問にして頂いた。だがコッテリと絞られたのは言うまでもない。

 その後結局、ユミルさんを引き連れて学園の寮に戻ることになったのだが、幸いにも寮には2つの部屋がある。本来は貴族の子と従者が寝泊まりする為の部屋だと思うのだが、ユミルさんにはもう一つの部屋を使って貰うことになった。

 そのため、俺は収納にしまっていたベッドを取り出さなくてはいけなくなり、ダンジョンでの快適生活が送れなくなってしまったのだが致し方ない。ミリオさん達が帰ってくるまでの辛抱だ。それまではダンジョンに潜るのは控える事にしよう。

 「そういえば、ユミルさんは学園とか通ったりはしなかったんですか?」

 確かユミルさんは17歳だったはずだ。通っていたとしたら2年前とかになるのだが、如何していたのだろうか。

 「……私……行ってない……冒険者やってた」

 「そうだったんですか!いつからミリオさん達とパーティーを組んだんですか?」

 「……3年前……それまでは……1人だった」

 「1人」と言った時、ユミルさんの顔は静かに下を向いた。落ち込ませてしまったと思った俺は、何とか雰囲気を変えようと、キッチンに向かって歩き出した。収納袋からボアの肉を取り出し、ユミルさんに声をかける。

 「ユミルさん!トンカツ食べましょう!沢山作りますから!」

 「ん!!」

 瞳をパッと輝かせて、コクコクと頷くユミルさん。俺の隣へと移動してくると、俺の手元をジーッと眺めていた。大量の油の海に肉を投下した時には、ユミルさんの両頬から零れ落ちる程の涎が垂れていた。

 「……9月から……どうしよう」

 トンカツを5切れ食べ終えた後、食器を片付けている俺の後ろでユミルさんが小さく呟いた。

 「あー、ミリオさん達帰ってくるの4日を過ぎるって言ってましたもんね。俺は1日から学園が始まりますし、その間1人になっちゃいますけど。何か予定は無いんですか?」

 「……ない」

 ミリオさん達が王都に帰還するのは4日以降。それまではユミルさんは1人きりでの行動となる。俺も1日から学園が始まり、忙しくなるだろうからユミルさんの面倒を見ている事は出来ない。

 「ギルドで依頼をこなすとかどうですか?ユミルさんには手持ち無沙汰かもしれませんけど。」

 「……んー……やだ」

 「やだとか言わないで下さいよ!Aランク冒険者なんですから!」

 「……手続き……めんどくさい」

 この1週間でユミルさんについてよく分かったことがある。彼女は基本的にめんどくさがりなのだ。依頼の手続きや宿に泊まる時の手続きも全部俺がやってきた。ユミルさん俺の後ろからその様子をポケーっと眺めていただけである。

 料理をしないのもそれが理由かも知れない。食材のカットや味付けと言った工程があるのが面倒いのだろう。だからこそ、モンスターを狩るだけで済む依頼は大好きなのかも知れない。

 「でも、明後日から俺は学園ですよ?流石にユミルさんの面倒を見る訳にはいかないですし……寮の部屋を貸してる分には良いですけど。」

 「……サボる……とか」

 「サボりませんよ!確かに学園に通う意味はもう無いですけど、学園に通ってる方が都合の良い時もあるんです!友人が通ってる以上はやめません!」

 「……むぅ」

 俺とユミルさんの話し合いは、折り合いがつかないまま次の日を迎える事となった。この日は、学園の準備やダンジョンに潜る事を考慮して、王都の市場に訪れた。食材を買ったり、ポーションを買ったり着替えを買ったり、準備する事は盛り沢山である。

 その為、サンフィオーレ魔具店に足を運んだのだが、相変わらずの大盛況であった。しかし何故か店の中にフィーナさんの姿が見えない。俺はお店の中を走り回っていたアイナを呼び止めて、フィーナさんについて尋ねてみた。

 「アイナ、久しぶり。」

 「わぁアレクさんだ、久しぶり!元気だった?」

 「ああ、元気だったよ!アイナもセレナさんも元気そうで何よりだ!」

 「うん!お母さんお仕事が大変みたいで、最近まではちょっと疲れ気味だったけど、冒険者のお兄さん達が色々良くしてくれて調子良いみたいなの!」

 「へ、へぇそうなんだ。」

 アイナの口から出た言葉は、その言葉通りの意味であった。一部の冒険者が店に訪れた客を列で整備したり、セレナさんに掛かる負担を減らそうとしてるのだ。それだけ見れば皆いい奴に見えるかも知れないが、他にも違和感を覚える点が沢山ある。

 まずは服装。冒険者と言えば鎧を着たり、それなりの装備をしている筈だ。匂いだってキツいはずなのに、このお店の中にはそんな男の冒険者は1人も居ない。全員が髪を整えて髭を剃り、小綺麗な服を着こなしているのだ。よく見ると従者を引き連れた貴族らしき男性も居る。

 更に、レジでの会話がおかし過ぎる。

 「セレナさん!今日も何て美しいんだ!もし宜しければお茶でも如何ですか?この先に美味しい紅茶を出すお店があるんですよ!」

 「すみません……今お仕事中ですので。宜しければまた誘って下さいね?お会計は金貨30枚になります!」

 「は、はいぃ!」

 この問答が既に5回は繰り返されている。鼻の下を伸ばした男共を見れば、全員の目的が誰なのかは一目瞭然だ。俺はフィーナさんに同情しながら、アイナに尋ね直した。

 「アイナ、フィーナさんは何処にいるんだ?」

 「フィーナさんはねー、グランドの酒屋じゃないかな!最近はいっつもそこでお酒飲んでるんだよ!」

 「そ、そうか。ありがとなアイナ。」

 俺はアイナにお礼を言って魔具店を後にした。

 「この後どうしますか?俺はフィーナさんの所に顔を出そうと思ってるんですけど。ユミルさんも着いてきます?」

 「……用事……出来た……夜には帰る」

 ユミルさんは一言そう告げると、酒屋とは逆方向に向かって歩いて行った。俺は彼女の姿が見えなくなるまで見送ると、フィーナさんが居るグランドの酒屋に向かったのだった。
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