最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和

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第4章 憎しみの結末

第179話 巡る思惑

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 清々しい勝利とはいかなかった一回戦だったが、無事に次の試合へと駒を進めることが出来た。試合を終えて控室に戻るとヴァルトとアリスに勝利の報告をする。

「勝ったぞ。次はお前の番だ」

 ヴァルトの肩を叩き檄を飛ばす。その言葉にヴァルトが「ああ」と返事をした直後、ハイデリッヒ先生が控室に訪れ、ヴァルトの名前を呼んだ。

「ヴァルト・バッカス!」

「はい!!」

「第五試合を始める!会場へと移動しろ!」

 先の俺と同様のやり取り交わすヴァルト。先生の元へと向かう前に、俺の目の前へ拳を突き出してきた。言葉を交わさずとも、ヴァルトの目を見れば何を求めているかは理解できる。

 俺は目の前に突き出された拳へ向けて、自分の拳を力強くぶつけた。ゴツンと鈍い音が鳴り響きいたあとジンジンとした痛みが拳を襲ってきた。その痛さが俺の声援の大きさだと言わんばかりに、ニヤリと口角を上げて見せる。

「ッツ……」

 予想以上に痛かったのか、ヴァルトは俺に殴られた拳を摩りだす。同じように笑みを浮かべたあと控室を出ていった。ヴァルトの背中を見送った俺は、アリスの隣へと腰を下ろす。

「楽勝だったみたいね。試合に行ったと思ったらすぐに帰ってきたから驚いたわ」

「そうでも無かったぞ?団体戦の時には使ってなかったスキルを使ってきたしな。腕を掠めた時は長引くと思ったんだが、その後急に相手が倒れてな。だから実際は、何もせずに勝った感じなんだ」

 オズマスが団体戦の際に使用していたスキルは、「パワーシールド」と「チャージシールド」のスキルだった。もしかしたら個人戦のために隠しておいたのかもしれないが、倒れていたオズマスの顔を見る限り、自分も予想外の結果だったのだろう。


すると、俺達の会話に聞き耳を立てていたのか、周囲で黙っていた生徒達が驚いた様子で俺の顔を見てきた。突然の事に少し戸惑ったものの、なぜ彼らが驚いたのかアリスの言葉で理解した。

「もしかしたらオズマスは壁を越えたのかもしれないわね」

「壁?……ああ!ライオネル先生が話してた奴か!」

 俺はスキル玉を使用すればどんなスキルでも使用できるようになるが、他の人達は違うのだった。『初級剣術』を『中級剣術』にするには、その『壁』を超える必要がある。強敵に打ち勝った時初めてその壁を越えられると言っていたはずだが、オズマスは大会中に強敵に打ち勝ったのだろうか。

「それは知らないけど……『壁』を超えるには自分よりも強い存在と戦う必要があるでしょ?この大会は二校から選ばれた生徒が出場する。だから『壁』を超えるにはいいチャンスなのよ。きっとオズマスは、昨日の団体戦でアレクと戦った時に壁を越えたんじゃないかしら」

「なるほど。それで新しいスキルを手に入れたはいいけど、慣れてない状態で使用したから体に負荷がかかったってとこか」

 俺の推測にアリスは頷く。この大会に出場することで『壁』を超えられる可能性があるというのなら、デイル達が大会に出場しようと必死だったのも頷ける。

 これまでのデイルの行動に一人で納得していると、俺の元へ歩み寄ってくる影が見えた。その影の方向に顔を向けると、少し気まずそうにしているエリック兄さんが立っていた。

「アレク、少しいいか」

 そう言って俺の隣へと座るエリック兄さん。俺は許可を出していないのだが、先に座られてしまっては仕方がない。

「……なんですか、エリック兄さん」

 俺が眉間にシワを寄せながら返事をすると、兄さんはゆっくりと話し始めた。

「父上からの言伝だ。『この大会で見事優勝を収めることが出来れば、家督をお前に譲ることにする』と」

 エリック兄さんの口から出てきた言葉に、思わず俺は口を大きく開けて固まってしまう。

「家督を譲る?俺は既に陛下から『子爵』の爵位を下賜されています。同じ姓では有りますが、今はもう父上と同じ『カールストン家』ではありません。父上がどうこう言える話ではないのでは?」

 父上は俺が爵位を下賜された場に居た。そして陛下に進言をしたのだが、却下されていたはずだ。その意味が分からない父上では無いと思うのだが、何故こんな馬鹿な話を伝えようとしているのだ。

 俺の問いかけに、エリック兄さんは周囲の生徒達を気にしながら小声で答えてくれた。

「父上から聞かされたのだが、お前はユウナ様とアリス様と婚約なさるのだろう?父上はその婚約に必要な『爵位』をお前に提供する代わりに、無理矢理でもお前と縁を結びなおすつもりなのだ」

 エリック兄さんは話し終えると、周囲に目を配り話が聞こえていなかったか確認しだす。俺はそんな兄さんを睨みつけながら、口を開いた。

「なるほど。確かに『辺境伯』であれば、立場的には十分でしょうね」

 俺が二人と婚約したことはまだ公開されていない情報のはずだ。知っているのは関係者のみのはず。だと言うのに、一番それを知ってほしくない人達がその情報を掴んでおり、俺を揺さぶろうとしているのだ。

 幾ら血の繋がった家族であろうと、アリス達を傷つける者を許すつもりはない。

「お前の事だから大丈夫だとは思うが、父上とは距離をとっておいた方が良い。これ以上、二人が傷つく姿は見たくないからな」

 エリック兄さんはそう言うと心配そうな表情を浮かべる。その顔があまりにも、自分は無関係だと言っているようにしか見えず、俺は失笑してしまう。

「ハハハ。よくもまぁそんなことが言えますね。父上に罪を擦り付ければ自分は許されるとでも思っているのですか?」

「そんなことは無い。私がお前とアリス様を傷つけたことは、何があっても許されることでは無いのだから。だからこそ、私が出来ることなら何でもしたいと思っている。私はお前の兄なのだから」

 表情を崩すことなく、俺の目を真直ぐに見つめながら話すエリック兄さん。隣に座るアリスは無言で兄の顔を見つめていた。

「兄、ですか。今更兄弟の絆を語りあうつもりは俺にはありませんよ」

「アレク……」

 俺は視線を落とし、兄の言葉を耳から遠ざける。上辺だけの言葉など、心に響くことは無い。エリック兄さんが俺にしてくれたことなど、何一つとして無いのだから。

 俺達の会話が途切れた時、控室のドアが開いて傷を負ったヴァルトが姿を現した。続けてその後ろからハイデリッヒ先生がやってきて、次の試合に出場する選手の名を呼ぶ。

「エリック・カールストン!」

「……はい」

 名前を呼ばれたエリック兄さんは俺を一瞥した後、すぐに立ち上がって返事をした。

「第6試合を始める!会場へと移動しろ!」

 ハイデリッヒ先生に言われるがまま兄さんは控室を出ていく。ヴァルトが「勝ったぞ!」と嬉しそうに報告をしてきたが、俺はそれに反応することが出来ずにただ笑いかける事しか出来なかった。
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