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第4章 憎しみの結末
第181話 親友
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「ただいまより、準々決勝第2試合を開始いたします!両選手、闘技場中央までお進みください!」
審判が高らかに宣言し、闘技場内で歓声が沸き起こる。俺は反対側の入口に立っているヴァルトを見て笑顔を浮かべた。これから親友と本気で戦うことが出来る。それだけで自然と胸が躍ってしまう。
俺達はお互いの事だけを視界に入れながら、ゆっくりと歩みを進めていった。
「試合開始に先駆けまして、両選手の紹介をさせて頂きます!」
指定の位置で俺達が足を止めると、前までの試合では無かった審判による選手紹介が始まった。審判はまず俺と反対の方へと体を向け、手元のメモを見ながらヴァルトの紹介を始めた。
「栄えある準々決勝に駒を進めた一人目は、ウォーレン学園一年代表、ヴァルト。バッカス選手!職業はなんと『竜剣士』です!その戦いっぷりは、正に『正々堂々』の言葉を体現していると言わんばかりのもの!この試合でも、それを貫くことが出来るか!!」
ヴァルトの紹介が終わると、会場から拍手や指笛が飛び交い始める。ヴァルトを鼓舞するかのような会場の反応に、本人は手を振ることで答えて見せた。
一方の俺はというと、審判の選手紹介をする内容に少しの不安を抱いていた。
ヴァルトの職業を紹介したという事は、俺の職業も紹介するという事。別に他人にどう思われようが関係ないが、観衆が俺の職業を馬鹿にした場合、ユウナやヴァルトが悲しむかもしれない。それが少しだけ不安だ。
「相対するは、同じウォーレン学園の生徒という身でありながら、今フェルデア王国で最も有名な男!数か月前には二体のオークキングを討伐し、更には病に伏せるユウナ王女を救った英雄!その名も……アレク・カールストン!!!」
「ウォォォ!!アレク!アレク!アレク!」
俺の不安をよそに、審判が紹介をし終えると会場中にアレクコールが沸き起こった。自慢気にこちらを見てくる審判には少しムカついたが、マイナスな印象を持たれずに済んだことには素直に感謝するとしよう。
「それでは両者、準備は宜しいですね?」
「はい」
「ああ」
俺達の返事を聞き、審判が両手を左右へと広げる。観衆が声を静めて試合開始の合図を松中、俺はヴァルトと目を合わせてニヤリと笑う。
「あの時の拳の借り、今ここで返させて貰うぞ!」
「有り難く頂戴するとしよう。……私が勝った後でな!」
互いが言葉を交わした後、審判の両手が振り下ろされた。
「始め!!!」
「『#火矢__ファイヤーアロー__#』!!」
開始と同時に、俺は八本の火矢をヴァルトに向けて放つ。友との戦いで全力を出さないなど、そんな恥ずかしいことは無い。俺が放った火矢が迫る中、ヴァルトは表情を崩さずに剣を握りしめる。そして次の瞬間──
「はぁぁぁぁ!!」
ヴァルトが握りしめた剣が淡く光ったかと思うと、迫りくる火矢に向けてその剣を振り下ろした。そしてデイルとの一戦で披露したように、俺の火矢を真っ二つにして見せる。
魔法が切れるところなど見たことが無かった観客たちは、度肝を抜かれたのか口を大きく広げて固まってしまった。そのまま一本、二本と立て続けに切り落としていき、最後の火矢を両断したところで、ようやく完成が沸き起こった。
「やるな、ヴァルト」
ヴァルトに賞賛の言葉をかけるが、内心穏やかではなかった。魔法を切られることは予想していたものの、実際に目の前でやられると動揺してしまう。
「当然だ!今度は私から行かせてもらうぞ!!」
ヴァルトは勢いそのままに剣先を俺の方へと向け、腰をわずかに落とした。
「『#竜突撃__ドラゴンストライク__#』!!」
スキルを発動させたヴァルトの体が加速し、一瞬の内に俺の目の前へ剣先が到達する。だが選抜大会の時に何度もこの目で見ることが出来たのだ。発動直前のヴァルトの体勢を見れば、スキルを発動させようとしていたことくらいお見通しである。
「はあっ!」
右手に握っていた剣をヴァルトの剣にぶつけ、剣先を逸らさせた。勢いを止めることが出来ないヴァルトのボディにそのまま左拳をお見舞いする。
「がぁっ……」
カウンターを食らい苦悶の表情を浮かべ、下を向くヴァルト。だが負けじとヴァルトは右手で俺の肩を掴み、そのまま上に飛び跳ねるように俺の顔面に頭突きを食らわせてきた。
「ぐっ……」
鼻にヴァルトの頭がクリーンヒットし、思わずのけ反る。ヴァルトはその隙を見逃さず、スキルを発動させた。
「『#強斬__パワースラッシュ__#』!!」
左手に握られたヴァルトの剣が俺の右肩目掛けて振り下ろされる。強斬のスキルで攻撃力が僅かながら強化されているため、生身で受けるのは回避しなければならない。だが、後ろにのけ反ってしまっているせいで、足に力が上手く伝わらず、後ろへ飛ぶことが出来ない。
回避行動が不可能と判断した俺は直ぐに左手で魔法を発動させた。
「『風圧弾』!!」
剣が体にぶつかる直前、ヴァルトに向けて風の弾丸をお見舞いする。ヴァルトに衝突した風の弾はそこで弾けると、俺とヴァルトの間に激しい暴風を撒き越した。
その風にお互い吹き飛ばされ、後方へとゴロゴロ転がっていく。何とか体勢を立て直し、右手をついて立ち上がろうとするが、右肩が僅かに切られていることに気づいた。吹き飛ばされる直前、ヴァルトの剣が触れていたのだ。
試合開始から僅かの間に繰り広げられた攻防に、観客席は怒号めいた歓声で溢れかえる。互いの名前が叫び交わされる中、俺の視界にはただ一人の存在しか映っていなかった。
腹部に風圧弾が直撃したはずなのに、立ち上がったヴァルトは、笑みを崩すことなく俺を真っ直ぐに見つめている。口端から流れ出た血を手の甲で拭い、ニヤリと口角を上げるヴァルト。
「はぁ、はぁ……いくぞぉぉぉぉ!!」
ヴァルトの声が俺の体を震わせる。ヴァルトはそのまま先程と同じ位置まで腰を落とした。また『竜突撃』が来る。そう思ったのだが、ヴァルトの構えが少し違うことに違和感を覚えた。
「『竜翼の爪撃』!!」
ヴァルトが口にした言葉は聞いたこともないスキル名だった。一体どんな技なのか?そんな想像をする暇もなく、ヴァルトが俺に向かって駆けてくる。その速度をこれでは『竜突撃』と同じではないか。
俺は直ぐに右方向へと身体を逸らし、ヴァルトへカウンターを食らわせようとする。『竜突撃』の弱点は真っ直ぐにしか移動できないこと。十分に反応出来る距離を保てていれば、回避することは容易だ。
勝手に決めつけ、油断した俺が拳を振り上げたとき、予想外の出来事が起きた。
真っ直ぐに駆け抜けると思っていたヴァルトが、俺にぶつかる直前で目の前から姿を消したのだ。
「なっ!」
本当に姿を消したわけでは無く、速度を落とさずに直前で方向転換したのは分かっていた。それを目でおえてはいたものの、反応が間に合わず、ヴァルトが横薙ぎにふるった剣が俺の右腕を斬りつける。
ダメージを減らすため、ヴァルトの力に逆らわず自分で左側へと飛ぶ。しかし、スキルで強化されていたヴァルトの一撃は、遥かに重いモノだった。
斬られた腕から夥しい量の血が流れ始める。腕を伝い、ポタポタと地面へ垂れていく血が、その傷の深さを物語っていた。
審判が高らかに宣言し、闘技場内で歓声が沸き起こる。俺は反対側の入口に立っているヴァルトを見て笑顔を浮かべた。これから親友と本気で戦うことが出来る。それだけで自然と胸が躍ってしまう。
俺達はお互いの事だけを視界に入れながら、ゆっくりと歩みを進めていった。
「試合開始に先駆けまして、両選手の紹介をさせて頂きます!」
指定の位置で俺達が足を止めると、前までの試合では無かった審判による選手紹介が始まった。審判はまず俺と反対の方へと体を向け、手元のメモを見ながらヴァルトの紹介を始めた。
「栄えある準々決勝に駒を進めた一人目は、ウォーレン学園一年代表、ヴァルト。バッカス選手!職業はなんと『竜剣士』です!その戦いっぷりは、正に『正々堂々』の言葉を体現していると言わんばかりのもの!この試合でも、それを貫くことが出来るか!!」
ヴァルトの紹介が終わると、会場から拍手や指笛が飛び交い始める。ヴァルトを鼓舞するかのような会場の反応に、本人は手を振ることで答えて見せた。
一方の俺はというと、審判の選手紹介をする内容に少しの不安を抱いていた。
ヴァルトの職業を紹介したという事は、俺の職業も紹介するという事。別に他人にどう思われようが関係ないが、観衆が俺の職業を馬鹿にした場合、ユウナやヴァルトが悲しむかもしれない。それが少しだけ不安だ。
「相対するは、同じウォーレン学園の生徒という身でありながら、今フェルデア王国で最も有名な男!数か月前には二体のオークキングを討伐し、更には病に伏せるユウナ王女を救った英雄!その名も……アレク・カールストン!!!」
「ウォォォ!!アレク!アレク!アレク!」
俺の不安をよそに、審判が紹介をし終えると会場中にアレクコールが沸き起こった。自慢気にこちらを見てくる審判には少しムカついたが、マイナスな印象を持たれずに済んだことには素直に感謝するとしよう。
「それでは両者、準備は宜しいですね?」
「はい」
「ああ」
俺達の返事を聞き、審判が両手を左右へと広げる。観衆が声を静めて試合開始の合図を松中、俺はヴァルトと目を合わせてニヤリと笑う。
「あの時の拳の借り、今ここで返させて貰うぞ!」
「有り難く頂戴するとしよう。……私が勝った後でな!」
互いが言葉を交わした後、審判の両手が振り下ろされた。
「始め!!!」
「『#火矢__ファイヤーアロー__#』!!」
開始と同時に、俺は八本の火矢をヴァルトに向けて放つ。友との戦いで全力を出さないなど、そんな恥ずかしいことは無い。俺が放った火矢が迫る中、ヴァルトは表情を崩さずに剣を握りしめる。そして次の瞬間──
「はぁぁぁぁ!!」
ヴァルトが握りしめた剣が淡く光ったかと思うと、迫りくる火矢に向けてその剣を振り下ろした。そしてデイルとの一戦で披露したように、俺の火矢を真っ二つにして見せる。
魔法が切れるところなど見たことが無かった観客たちは、度肝を抜かれたのか口を大きく広げて固まってしまった。そのまま一本、二本と立て続けに切り落としていき、最後の火矢を両断したところで、ようやく完成が沸き起こった。
「やるな、ヴァルト」
ヴァルトに賞賛の言葉をかけるが、内心穏やかではなかった。魔法を切られることは予想していたものの、実際に目の前でやられると動揺してしまう。
「当然だ!今度は私から行かせてもらうぞ!!」
ヴァルトは勢いそのままに剣先を俺の方へと向け、腰をわずかに落とした。
「『#竜突撃__ドラゴンストライク__#』!!」
スキルを発動させたヴァルトの体が加速し、一瞬の内に俺の目の前へ剣先が到達する。だが選抜大会の時に何度もこの目で見ることが出来たのだ。発動直前のヴァルトの体勢を見れば、スキルを発動させようとしていたことくらいお見通しである。
「はあっ!」
右手に握っていた剣をヴァルトの剣にぶつけ、剣先を逸らさせた。勢いを止めることが出来ないヴァルトのボディにそのまま左拳をお見舞いする。
「がぁっ……」
カウンターを食らい苦悶の表情を浮かべ、下を向くヴァルト。だが負けじとヴァルトは右手で俺の肩を掴み、そのまま上に飛び跳ねるように俺の顔面に頭突きを食らわせてきた。
「ぐっ……」
鼻にヴァルトの頭がクリーンヒットし、思わずのけ反る。ヴァルトはその隙を見逃さず、スキルを発動させた。
「『#強斬__パワースラッシュ__#』!!」
左手に握られたヴァルトの剣が俺の右肩目掛けて振り下ろされる。強斬のスキルで攻撃力が僅かながら強化されているため、生身で受けるのは回避しなければならない。だが、後ろにのけ反ってしまっているせいで、足に力が上手く伝わらず、後ろへ飛ぶことが出来ない。
回避行動が不可能と判断した俺は直ぐに左手で魔法を発動させた。
「『風圧弾』!!」
剣が体にぶつかる直前、ヴァルトに向けて風の弾丸をお見舞いする。ヴァルトに衝突した風の弾はそこで弾けると、俺とヴァルトの間に激しい暴風を撒き越した。
その風にお互い吹き飛ばされ、後方へとゴロゴロ転がっていく。何とか体勢を立て直し、右手をついて立ち上がろうとするが、右肩が僅かに切られていることに気づいた。吹き飛ばされる直前、ヴァルトの剣が触れていたのだ。
試合開始から僅かの間に繰り広げられた攻防に、観客席は怒号めいた歓声で溢れかえる。互いの名前が叫び交わされる中、俺の視界にはただ一人の存在しか映っていなかった。
腹部に風圧弾が直撃したはずなのに、立ち上がったヴァルトは、笑みを崩すことなく俺を真っ直ぐに見つめている。口端から流れ出た血を手の甲で拭い、ニヤリと口角を上げるヴァルト。
「はぁ、はぁ……いくぞぉぉぉぉ!!」
ヴァルトの声が俺の体を震わせる。ヴァルトはそのまま先程と同じ位置まで腰を落とした。また『竜突撃』が来る。そう思ったのだが、ヴァルトの構えが少し違うことに違和感を覚えた。
「『竜翼の爪撃』!!」
ヴァルトが口にした言葉は聞いたこともないスキル名だった。一体どんな技なのか?そんな想像をする暇もなく、ヴァルトが俺に向かって駆けてくる。その速度をこれでは『竜突撃』と同じではないか。
俺は直ぐに右方向へと身体を逸らし、ヴァルトへカウンターを食らわせようとする。『竜突撃』の弱点は真っ直ぐにしか移動できないこと。十分に反応出来る距離を保てていれば、回避することは容易だ。
勝手に決めつけ、油断した俺が拳を振り上げたとき、予想外の出来事が起きた。
真っ直ぐに駆け抜けると思っていたヴァルトが、俺にぶつかる直前で目の前から姿を消したのだ。
「なっ!」
本当に姿を消したわけでは無く、速度を落とさずに直前で方向転換したのは分かっていた。それを目でおえてはいたものの、反応が間に合わず、ヴァルトが横薙ぎにふるった剣が俺の右腕を斬りつける。
ダメージを減らすため、ヴァルトの力に逆らわず自分で左側へと飛ぶ。しかし、スキルで強化されていたヴァルトの一撃は、遥かに重いモノだった。
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途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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