異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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291.施設の位置(聞き取り2)✔

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 チビとベビには拉致された獣人が、コカドリアスかリザードマンにされている可能性があると説明している。できるだけ怪我させないように無力化してほしいと伝えていたんだ。

 ふたりの操る風の刃は威力があるため、力を抑えられているか心配だったが、手も脚もちゃんと繋がっている。これなら癒しの魔法で完治できなくても、エリクシアで治せばいい。

 リザードマンを蔦で拘束すると、癒しの魔法を行使して止血した。つぎに獣人の首に嵌められた魔道具を外そう。

 この魔道具の皮ベルトは外れないぞ! 魔石の嵌った台座の下に突起が出ており、ベルトの穴が通過すると嵌まるようになっている。この突起は片方にしかベルトが進まない造りになっていた。こっちの世界で初めて見る技術だ。

 前世の結束バンドを革のベルトで再現しているようだ。一度、ベルトを差し込むと突起が刺さって緩めることができない。差し込むと外せないところがそっくりだ。

 結束バンドなら、ツメにマイナスドライバーを差し込めば外すことができたんだけどな。突起が絶妙な位置にあり、無理やり外そうとすると首が締まる構造になっている。

 隷属の魔道具の他にも、魔石爆弾や結界の魔道具、変身の魔道具まで作っている。魔大陸の技術レベルに対して、邪神の使徒の技術力が突出しているのが気になる。早めに拠点を見つけ出さないと被害者が増え続けてしまうだろう。

 怪我をさせないようにするため、時間はかかるが少しずつ慎重に切ることにした。なんの魔物の皮なのか、やたらと丈夫だったがなんとか切断することができた。

 魔道具から直ぐに魔石は外しておこう。この魔石からは禍々しい魔力を感じるんだ。魔力鑑定眼で確認すると、どす黒い色をしている。

 今までのモノより強力になっており、この魔力には触れない方がいい。魔石を一つずつ、土魔法で覆い固めてしまおう。三重にすると、やっとどす黒い魔力は見えなくなった。

 拘束したリザードマンと獣人を壊れた建物の近くに運んできた。壊れた建物の壁際に、生気の感じられない獣人が寄り集まっていた。抵抗もしてこないため、簡単に拘束する。

 首に嵌まった魔道具を慎重に取り外す。ベルトの構造は同じだった。取り外した魔石は同じように土魔法でガチガチに固めておいた。

 リザードマンの魔石を内視鏡手術により摘出すると、癒しの魔法を行使する。何度も行っているので段々と時間も短く摘出できるようになっている。麻酔から覚めたら聞き取りをしよう。

 魔道具を嵌められていた獣人にも癒しの魔法を行使した。念のためピンクスライムポーションも飲ませておこう。

 木造の建物は、チビとベビの攻撃を受けて半壊状態だ。他の建物も見て回ったが、もぬけの殻になっており、誰も見つけることができなかった。

 邪神の使徒に連れ去られたのだろう。段々と意識が回復し始めており、聞き取りができそうだ。

 今回捕らえた元リザードマンの獣人なんだけど、リザードマンにされている間もずっと意識があったんだって。

 魔石を無理やり飲まされると、体の自由が効かなくなり、命令された通りに動いてしまうそうだ。

 ここに来るために、迷いの森は通っておらず、邪神の施設までの道を憶えていると言っている。

 おおよその距離と方向を教えてもらった。施設は崖の下の洞窟にあり、獣人を使った実験が行われていると悲しそうに話してくれた。洞窟の入り口はリザードマンがいつも見張っているんだって。

 洞窟は隠ぺいや認識阻害はされていないらしいから、近いうちに見つけられるだろう。

 早く捕まっている獣人を助け出さないとね。ここにいると、また襲われる可能性が高い。迷いの森にかくまってくれればいいんだけどな。

 精霊の女王様にお願いしに行ったんだけど、受け入れはできないと断られてしまった。そのかわり、数日間は効力の続く結界を張ってもらえることになったんだ。直ぐに食料と飲み水を準備して結界を張ってもらった。

 結界の効力があるうちに、施設を探さなければならない。場所を憶えていた獣人をベビの背中に乗せて確認に向かう。気が付かれないように少し離れた場所を飛行し、洞窟のある崖は特定することができた。

 顔の上半分を仮面で隠しているやつらが邪神教の使徒だと教えてもらった。隷属の魔道具を嵌められていないなら、自らの意思で邪神を崇拝しているという事だろう。

 獣人が捕まっているそうなので、俺一人では厳しい気がする。洞窟の大きさを聞いたが、チビとベビが大きいまま入ることは出来ないみたいだ。

〈チビ、ベビ、大きさって自由に変えられるの?〉

〈半分くらいにもなれるダォ!〉〈五メートルとかにもなれるノ!〉

〈危険だけど手伝ってくれる?〉

〈任せてダォ!〉〈ママを手伝うノ!〉

 チビとベビの尻尾がピッピッと左右に振られ、嬉しそうにしている。

 一旦、獣人の所に戻ると、案内してくれた獣人と別れた。隷属の魔道具が外された獣人も、普通に会話できるまでに回復している。リザードマンだった獣人はもう少し時間がかかりそうだな。

 チビとベビと打ち合わせを始めよう。精霊の女王様にも手伝ってもらえないかお願いしてみるかな。
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