銀河鉄道の夜に優しい君と恋をする

三月菫

文字の大きさ
51 / 64

51話 結果発表!

しおりを挟む
 それからテスト週間はあっという間に過ぎていった。
 詠の宣言どおり、俺と詠は日曜日以外、毎日一緒に勉強をした。

 平日の放課後は学校の図書室で。そして土曜日は詠の部屋で。
 黙々と、真剣に、学習の時間を積み重ねていく。

 勉強に向かう詠の姿勢は常に真剣で、誠実で。
 そんな詠に引っ張られるように、俺も否応なしに勉強に真剣に向き合った。

 おかげで、俺の人生において、過去一有意義なテスト期間を過ごすことができた。

 そして、迎えた期末テスト当日。
 勉強の甲斐かいあって、どの科目もとどこおりなくシャーペンが進む。

 あ、この問題、チ○レンジでやったところだ!

 某通信教材の販促漫画の主人公はかような気持ちだったんだな、なんてことを考える余裕があるくらい、テスト問題をすらすら解いていく俺。

 これは結果が楽しみだ。
 そう思えるほど、今回のテストの手応えは十分だった。

 最後の科目のテストが終わった瞬間、俺は隣の席に座る詠の方へ視線をやった。
 ちょうどそのタイミングで詠も俺を見つめる。

 視線があった俺たちは、どちらともなく笑いあった。
 その爽やかな笑顔が、俺たちの努力の結果を物語っていた。

***

 期末テストが終了した、その数日後の昼休み。
 一年の教室が立ち並ぶ、廊下の掲示板スペースに、期末テストの結果が張り出された。
 
 自分の順位を確認するために、生徒たちが我先にと集まって、人だかりを作っている。
 俺と詠は、その人壁の一歩後ろから、生徒達の隙間すきまって、自分たちの順位を確認していた。

「えっと、詠の名前は……」
「見つかった?」
「うん、すごい……」

 自分の身長を利用して、首を伸ばしながら確認した俺の目に飛び込んできたのは、三位の位置に陣取った「優木坂 詠」の名前だった。

「詠――学年で三位。凄すぎる……」
「ほんと? やった」

 俺から自分の順位を聞いた詠は、短く喜びの声を上げ、笑顔を浮かべた。

「おめでとう。詠……いや、これからは詠さんと呼ばないとダメですね」
「もう、からかわないでよ……! それより、夜空くんは?」

照れくさそうにはにかんだのは一瞬、すぐに詠は俺の順位をたずねた。

「うーん……どうだろう……」

詠の問いかけに応えつつ、俺は自分の名前が記載されているであろう順位に当たりをつけて、そこから順番に眺めていく。
 一〇〇位くらいから順に見ていっているけど、一向に自分の名前が見つからない。

「あれ、おかしいなぁ」
「名前、見つからないの?」

 俺が首をひねっていると、詠が不思議そうな顔をして尋ねてきた。
 それから、ちょうど彼女の前辺りの人だかりがいたので、「私も直接見てみるよ」といって、彼女は前の方へ進んでいった。
 
「あっ!」

 しばらくして、詠が小さく声を上げた。そして俺の方に振り返る。

「あったよ! 夜空くんの名前」
「え、ほんと? 何位?」
「四十五位!」
「ええ? マジ?」

 詠の口から驚きの順位が語られる。俺は思わず聞き返してしまった。
 ちなみに一年の生徒数は五〇〇人ちょっと。参考までに中間テストの俺の順位は二五〇位より下だったので、二〇〇位くらいまくった大躍進だいやくしんといえる。

「キャー! やったね! 夜空くん!」

 ガシッ。

 俺のもとに戻ってきた詠は、そのままの勢いで俺の両手を手にとった。

「ひゃっ!?」

 俺の両手のひらに、詠の手のひらの温かさと柔らかさを感じて、俺は思わず変な声をあげてしまった。

 身体が、一気に熱を帯びる。
 やばい、手汗が。マズイ。ちょっ。

 詠はそんな俺の内心の戸惑いなんてお構いなしにそのままブンブンと両手を振り回す。

「わわっ。ちょっと……!」
「夜空くん、すっごく頑張ってたもんね! よかったね! よかったね!」
 
 そのまま彼女は、飛び跳ねんばかりに全身で喜びの感情を爆発させた。
 そのたびにたわわに実った二つのおっぱいが、ボインボインと悩ましげに揺れる。あわわわわ……! あわわわわ……!

「詠。落ち着いて……!」
  
 俺は慌てて制止しようとするけど、詠はそんなのお構いなしだ。
 彼女は、自分の順位を確認したときよりも、すっかりテンションが上ってしまっていた。

 やがて、そんな彼女の様子に、周囲の生徒たちの奇異きいの視線が集まりだす。
 ようやく詠は、自分の振る舞いが周囲の注目をえらく集めていることに気付き、慌てて体を小さくして、掴んでいた俺の手を離した。

「ご、ゴメン。私、浮かれちゃって……」
「ううん、ありがとう、詠」

 小声になった彼女に、俺も同じトーンの小声で応じる。
 それから、俺たちはお互いの顔を見合わせて、コクリと一つうなずいた後、喜びと達成感をしっかりと噛みしめるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...