面倒くさがり王子の一大決心

雪菊

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3 sideミシェル

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 世界は全て灰色に見えていた。何をやっても楽しくないし面白くない。子供の頃はそれでも新しい挑戦したいことがたくさんあった。
 かたっぱしから挑戦してそれなりに出来てしまうともう興味はなくなった。
 だんだんと色あせていく世界でフィオナだけが色づいていた。けれど彼女には『楽しいこと』があるのだと自分とは違うのだと思い知ったとき、彼女もまた褪せた。
 いや褪せたというより届かない光のような星のような存在になった。高等部に入ると彼女の周りに他の星が存在していた。
 
 自分は彼らとは違うのだ、だからあの星にはなれない。そう思うと近づくこともできない。
 ただこの灰色の世界に少しの変化が現れた。星というより変わった虫、という印象ではあったが。灰色の世界に久しぶりに色がついたのだと思えた。
 別に欲しかった彩りではなかったけれど。
「ねぇ、殿下。ランチはたまにはカフェテリアでなくて中庭に行きませんこと?うちのシェフにお弁当つくらせてありますの」
「ならば勝手にしろ。私は食堂で食事をする」
「わかりましたわ。カフェテリアに参りましょう」
 クラスメイトのレイリア・ランバート男爵令嬢。気づけばまとわりついて勝手に行動を共にするようになった。
 一度適切な距離を保てと言ったことがあったが、『まあ、フィオナ様に色々言われたのですね。大丈夫です、私平気ですわ』と会話にならなかった。
 鬱陶しくて諭してみたのだが何一つ伝わらず、どうせこの高等部の間だけだしと放置した。
 どれほどまとわりつかれようが所詮は男爵令嬢。卒業してしまえば縁もそれまでだ。
 
 いや、少し面白がっていたのは否めない。文官コースの授業はすでに王宮で学んだことで、復習にもならない程度。
 その退屈な日々に刺激にはなった。ただ少しうっとおしいだけで。
 高等部に進学したての頃は挨拶にくるものは多かった。未来の国王に阿るものばかりで適当に返事をしていた。
 そのうち誰も挨拶にこなくなりわずらわしさが消えた。やはり面倒なことは放置するのが一番だな、とぼんやり学園生活を送った。
 ときおりフィオナが仲間に誘ってきたが今更関わりを持つのは面倒なので断った。
 将来の側近を、と従者にも言われるがどうせ誰がなるかは決まっている。貴族感のパワーバランスを崩してまで傍に置きたい存在もない。
 フィオナが王家に嫁ぐからブルーム家を必要以上に重用しないこと、他の公爵家をたてること、実力あらば伯爵家以下もとりたてること。
 それだけわかっていればいい。卒業後側近にしたい者は目をつけているし、フィオナと仲の良い彼らが中枢になることも予想している。
 この3年間が無駄なのではないかと思いつつ過ごして半年たったころ、レイリアという男爵令嬢がまとわりつくようになったのだった。
 何を話しかけられても『ああ』とか『そうだな』程度の適当な相槌しかうたなかったのに『無口でステキですわ。さすが王太子殿下』とほめたたえてきた。
『私はまだ王太子ではない』とそこだけは訂正したのだが『王子はお一人だけですので同じですわよ』と返された。
 立太子しているかどうかはかなり違うと思うのだが面倒なので放っておいた。
 それからもずっと授業の合間の休憩、昼休み、放課後とまとわりつかれている。幾度かクラスメイト、特に女子生徒から注意されたようだが『嫉妬は見苦しいですわ』と相手にしていなかった。
 その中の数人は直接ミシェルに忠告してきた。特にアラン・ローズ伯爵令息からはフィオナと不仲の噂がたっている今一度ご自分の行動を振り返って欲しいと言われた。
 相手の身分によっては不敬になりかねないが特に気にならず、忠告感謝する、とだけ返していた。
 アランは成績優秀でクラスでも中心人物だ。フィオナの仲間でもあるし彼を側近としてとりたてようとひそかに思っている。
 誰から何を言われても行動を変えるつもりはない。レイリアがまとわりつきたければそうすればいい。そのうち飽きていなくなるだろう。
 それくらい会話らしい会話もないし気にかけてもいない。
 
 幼い頃からなんでもできた。将来は稀代の名君主になるだろうと言われ続けた。
 自分にできることが他人には容易ではないと気づいたのはいつの頃だろうか。
 まだあどけなさの残るフィオナが目を輝かせて学ぶのが楽しいのだと言っていたあの頃、自分は彼女を羨ましく思っていた。
 なのにいつの頃からか所詮彼女も他人と同じだ、自分と同じ視点には立てないものだと思うようになり、見下していたわけでないけれど、自分は孤立しているのだと思った。
 自分の孤独を誰もわかってはくれない。自分はこの世で一人なのだと思うようになり、学園に入学してもそれなりに取り繕うこともせず孤独を深めた。
 近寄ってくるのは未来の王に媚びを売ってくるものばかりですげなくあしらえば離れていった。彼ら、彼女らの名前すら覚えなかった。
 その中でジョシュア・バールだけがめげずに近づいてきたがフィオナの忠告で彼もまた自分の背後しか見てない者だと知った。
 やっぱり学園生活なんて面倒なだけだ。フィオナは上手くやっているのは彼らと同じ物の見方ができるからだろう。
 学ぶことが楽しいと、できないことができるようになるのが楽しいと、そう思える仲間といるのだ。
 学ぶのが楽しいなど思ったことはない。できないことなどほとんどない出来て当たり前の自分とは違うのだ。
 面倒だが途中で退学など王族としてできるわけがない。ならできるだけ人と関わらずに居ればいい。
 まとわりついてくるレイリア・ランバートも勝手にまとわりつかせておけばいいのだ。そう思っていた。


 
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