(隠れ)子犬警備員とじゃじゃ馬令嬢

桜梅花 空木

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アタック初撃

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 早速朝起きて朝食の後、軽く身支度をすると、散歩と称して部屋を出た。勿論、ケイシーにエスコートを頼んで。

「ボルト子爵令息様はいつもこのように早朝から勤務なさっているの?」

「はっ、この3日間は安全のためなるべく少人数で警護にあたっております。」

「でしたらお疲れが溜まってしまいますわね。私達のために感謝致しますわ。」

「滅相もございません。」

まだ一日目だけど、固いわ!どうやって解そうかしら……あっそうだわ

「甘いものはお好き?私の領地の研究で、頭がスッキリするお菓子ですわ。よろしければ、召し上がって。」

「はっ、こっかたじけない。」

こっ?あら、心無しか目が輝いて……雰囲気から尻尾も見えるわ。うん、可愛い

 それにしても、撫でたい、この頭。餌付けは効果的。けれど、あくまでお礼として渡す程度に留めないと。私はあくまで王太子妃選抜に参加している令嬢だもの。あーもどかしいわ!!
…………

「…お嬢様(階段が終わりますよ)」

「ええ、ナタリーも裾を今日もありがとう。」

 危なかったわ…!見つめて時間を忘れるところだった。今私とケイシー様が噂になるのは非常にまずい。少しの油断でここは大火になるから、気が抜けないわね。

 ということは……アタックというアタック出来ないじゃない!!どどどどうしましょう。ナタリー!

「お嬢様、本日は良いお天気ですよ(まずはここから離れますよ)」

「そうね、折角の王城ですもの。楽しみましょう。ケ…ボルト子爵令息もご一緒にいかが?」

「はっ、大変恐縮ですが、わたくしの持ち場はここでございますので、お帰りをお待ちしております。」

「そう……お仕事に熱心なのは、私達の安心に繋がります。では行ってまいりますわ。」

 いつもより花が綻ぶ笑顔でエントランスを歩くと、通りかかった侍従や兵士の顔が真っ赤に染まっていく。ちらっとケイシーを見るが、特に変化もなく真顔の直立不動に戻ってしまった。





 散策だけのつもりが、朝食会に参加する羽目になってしまったわ。

 エントランスに戻ると、ケイシーが丁度休憩から交代するところだった。思わず柱に隠れてしまい、聞き耳を立ててしまう。


新しい表情が発見できるならそれはそれで上々…。



「ケイシー、お疲れ!お、どうした?なんか美味いもの食ってきたんか?口元にカスついてんぞ!」

「え!悪い!ありがとう。」

「今日の休憩の菓子そんな美味かったんかよ。何だった?」

「あー…休憩のはいつものクッキーだったよ。けど、これはご令嬢から頂いたパイ菓子……美味かった」

キューーン

ふにゃっとした笑みも可愛いことこの上ないのに、手で食感を表現している天然の可愛さはなんですの?!可愛すぎる!!


「お前もご令嬢にそういう顔を見せればいいのになぁ。」

「男兄弟だし、どうしたらいいか分からなくなるんだよ……もう交代するぞ。」


グッジョブご家族の皆様!そのお陰で天然記念物が立派に育ちました!

ぽん


ビクッ!?何?!


「ナタリー」

「はっ。卿、肩のその手をお離しなさい。こちらの方をどなたと心得ますか。」

命令があると瞬時に髪飾りの鋭利な方を不審者に向けた。
逆に言うと、命令がなければ子爵令嬢のナタリーが動けなかった相手ということ。さて、どこの誰なのか……近衛兵の制服に人当たりの良い美形。


「名を名乗りなさい。私に許可なく背後から触れる意味をお考え?」

「ご不快にさせてしまった様で申し訳ありません。私はマルドーロ伯爵家嫡男、フェリペでございます。パルス公爵令嬢にご挨拶申し上げます。お困りなのかと気が焦ってしまいました。お詫び申し上げます。」

「……許します。私もこのような所に居たのです。非はあります。」

「ありがとうございます。それで、なぜこのような所に?どこかご気分が優れないとか?」

「心配要らないわ。ただ…少しの私語を公爵令嬢に見られたら、彼らは罰を受けるでしょう?」

「彼ら………なるほど。温かいお心遣い、痛み入ります。では、僭越ながら私めがエスコートの栄誉を。」

完璧な所作での申し込み。流石今人気の伯爵家令息である。人気があるのも頷ける。


「ええ、お願いするわ。」

 こちらも負けじとにっこり笑顔。美男美女は絵画のように美しく、自然と周りの使用人達の視線を集め、どこからともなく感嘆のため息が聞こえる。

 階段に差し掛かり、休憩から交代したケイシーが真っ直ぐ立っていた。気持ち的には交代して欲しいけど……そんな事は無いわよね、うん。分かってた。1回分のケイシー補充が無くなったけどしょうがない。せめて……

「ボルト子爵令息様、ごきげんよう。今日もお勤めご苦労様。」

「はっ、有り難き。先程のお心遣いも頂きました。何かあれば何なりと。」

「ええ……」


 程よく手を引くフェリペが柔和な雰囲気を保ちながら、部屋へと案内する。
 王城では大きな魔法は強制解除されるため、浮遊魔法も1番微弱なものしかドレスに掛けられない。

 マルドーロ伯爵家令息は会話を盛り上げてくれて、階段の長さを感じさせない気遣いを感じるけれど……やっぱりケイシーの方が歩きやすいし、何より少し会話した時の反応がエネルギーに変わってる気がするのよね。
(後でナタリーにそれはアリスだけだと言われた)


「そういえば、ケイシーが…失礼。ボルト子爵令息が、お心遣いと申しておりましたが、何かお聞きしても…?」

「朝にケ、ボルト子爵令息様に…」

フェリペの笑みが一瞬深くなった

「いつ階段を利用しても護衛なさっているので、私の領地で取れたハーブを使ったパイ菓子をお渡ししましたの。お口に合ったようで良かったわ。……マルドーロ伯爵令息様もいかが?もうパイは無くなってしまって、ブラウニーでよろしければ…」
 
「それは楽しみですね。ケイシーも甘いものが好きですから、あの様子だとかなり美味しかったのでしょう。」


……あの様子だと?


「まあ、嬉しいですわ。ナタリー、ブラウニーをお渡しして。では、エスコート感謝致します。ごきげんよう。」


パタン




 あの様子ってさっき同僚の方とお話していた時?でもあの時マルドーロ伯爵令息、居なかったはずよね?
 いや、でも、仲が良いから先程の一瞬の表情で分かっただけ…………



いや、でも待って


私がつられてケイシーって言いそうになった時に一瞬笑顔が深くなったわよね

 あの時単に舌を噛んだとして紳士としてスルーしてくれたのかと思ったけど……





ぞぞぞっ




 
まさか……バレた?











 裏付けするかのように、王太子顔合わせパーティーの3日間、ケイシーに長めに話をしようとすると、フェリペが途中からやってきてやんわりと邪魔をしてきた。







これ確実にバレてるわ…



おかげで3日間まともに話すことが出来ずに、公爵家へ帰路についた。


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