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戯れ始まり
小料理屋で
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定時になった。
富塚君より先に会社を出て、それまで見てなかったスマホを開き、メールを確認する。
一件……富塚君から。今から一時間前だ。業務連絡。
予約しました。待ち合わせはいつもの時間、駅のホームで。ちなみに降りる駅はいつも降りる駅の前の駅です。
ちょっと遠回しだけど、たったそれだけ。
そこから行ける所なのだろうか。少し不安になるが指定された場所に行く。
富塚君と同じ道で歩いていないらしく、富塚君より遅く駅に着いてしまった。
「お疲れ、良く来たな」
「いや、お疲れ様ですけど、私もこの場所に来ないと帰れないし」
「バックレないで……ってこと。この次の駅で降りるから」
「念押し……、そんな近くにあるの?」
「ああ、歩いて六分とか? そんくらいにある所」
「どんな所?」
「小料理屋」
「小料理屋?」
「初めて? 行くの」
「いや……そうかな?」
「安心して、俺の知り合いの人がやってる所だし」
「何か怪しい……」
「ちゃんとした所だって! 料理の味、美味しいし、こじんまりしててね、高くないし、日下も気に入ると思うよ?」
「そう……、富塚君ってどの道通ってるの?」
「ん? 普通の道、日下が歩くの遅いんじゃないの? 道端にある花でも見て歩いてるとか……」
ちょっと図星、今日はちょっと空を見て歩いていた。ああ、早く歓迎会などというのが終わりますように……と星も出てない空に向かってお願いをしていた。
「割り勘?」
「ん? どうしようかな……」
そんな話をしていたら電車が来てしまった。
ちょっとギリギリって思ってたからな……なんて思いながら、電車に乗り、予定通りその駅で降りる。そして歩いて目的地に着いたみたいだ。ここまで会話一切なし。
まあ、それでも良いのだけど。
「あの、富塚君、ここ?」
「そう……鈴日」
暖簾にそう書いてある。ちょっと崩した字で『小料理屋 鈴日』というのが目立っている和風の店。良くある感じだ。
「ドキドキする?」
そんな風に微笑して、彼は中に入って行った。
もう何なの?! とちょっと怒りながらも彼に付いて行った。
「いらっしゃい、あら~、待ってたわよ、富塚君。小上がりの方でも良い?」
「はい」
と人が良さそうな女将さんらしき五十代の女の人と話して富塚君はもう二人分のお箸と小皿が机の上に置いてある席の方に向かった。
四人座れる所に二人……他にも来るんじゃないかと思ってしまう。
ちょっと二人だけのはないか……と奥にある二つのテーブルも見たりしてキョロキョロしてしまったのが目に留まったのだろう。
「大丈夫、ここ全部四人なんだ。カウンターの方が良かった?」
「いや……」
もうそうなっているのをまた移動して……というのは悪いと思い、私はこのままにしてもらうことにした。
「何飲む?」
手書きのお品書きを見ながら私は言う。
「オレンジジュース」
ぷっと笑いながらも富塚君は注文をしてくれた。
やっぱり富塚君はビールか……。
私達以外まだ誰も来てなくて、ちょっと不安になる。
「貸し切りとかじゃないよね?」
「まさか、そんなことはできないよ。何食べる?」
「えっと……」
適当に富塚君が頼んだ物を私は食べる。
「手羽先美味しい……。その前に食べた刺身も美味しかったし、お通しから美味しかった」
「好きになった?」
「うん!」
素直にそう言ってしまった。
「そうか、良かった……」
何か安心したのか、富塚君は一気にビールを飲んだ。
あんまりおすすめしない飲み方……。
ビール以外のお酒を頼んで富塚君は私の方を見た。
「何?」
「日下は正座で足痺れないの?」
「痺れてるよ」
「崩せば?」
「無理。それさえもできないくらい痺れてる」
またふふっと笑って、富塚君は次の料理を頼んでしまう。
「大丈夫?」
「何が?」
「お金……割り勘でしょう? 富塚君は持ってるかもだけど、私は……」
と小声になったのだが。
「大丈夫だって、それにこれは日下の歓迎会なんだから、全部俺が出します。だから好きなの頼んで食べれば良いのにしなくてさ……日下って前の仕事、何やってた?」
「工場の派遣」
「何の工場?」
「何か、作る系の」
「何作る系?」
「うーん、大きいの? 良く分かんない。小さい物を見て、ちゃんとそうなってるか確認する系だったから」
「ふーん、そんな感じ……」
「何? ちゃんと具体的に言わなきゃダメ? 富塚君はそうやって私の知ってどうするの?」
「参考に」
「何の参考?」
「いろんな職場があるんだなぁ……って」
「転職でもするの?」
「しないけど、日下が今までどうやって生きて来たのか知りたくて」
「え?」
そんな所で他のお客さんが数人来てしまった。それでもこの話を止めるつもりがない富塚君に私は言う。
「まあ、ずっとそんな工場ばかり勤めてた。だから、あんまりパソコンの入力とかして来なかったし……」
「ふーん、それでも今日は打つの早かったよね?」
そんな所まで見てるのか? この男は!
「何? やっぱり、打つの遅いから派遣切られるよ……って言いたいの? だったら、次の所探さなきゃだし、はっきりそう言ってくれれば」
「バカ、俺はね、心配してるんだよ。そうならないようにしてほしいって思ってるんだ」
「何で?」
「俺の中で日下が日々、癒しっていうか……何か気になるから」
「はい? 酔ってますね? ちょっと完全に酔ってますね?」
「酔ってはない。じゃなかったら、こんな話しません。それにうちの会社、一回は必ず出来ない人でも更新するから」
「え? 何の為に、そんな……」
「うーん……、たぶん社長の方針? どんな人にも等しくチャンスを……とか、隠れた能力があったりして……だとか、そういう夢的な部分を買ってのことだと思う」
「買わなくて良い部分だね、それ。私だって、今の富塚君みたいに人に慣れたら……一応はそういうパソコンに強い人になる為の学校行ったし……」
「へえ、高校卒業してそんな学校に行ったの?」
「大学ではないけどね。富塚君は確か……」
「東京の大学。でも、あっちで就職活動してたけど決まんなくて、こっちでやったら一つだけ。それが今の所」
「へえ、富塚君はそれでずっと……」
「そうだよ、日下みたいに一からいろいろ覚えるの嫌だしね」
「へえ、私は人間関係がすぐになくなるやつだから良いけど」
「ネックはそこですか?」
「そうだよ、富塚君には分からないだろうけど。私はそこが一番大事。私だって工場は嫌。でも、短期間というか……即日で働き出せるの製造系が多いし、事務系ってあんまりなくて、今回はそんな工場の仕事なくて、同じ所に行くの嫌だったし、あそこしか良いのなくて」
「ふーん、日下はいくつの派遣会社に登録してる?」
「三つ以上は……」
「ふーん、それで、他に悩みある?」
「え? 悩み……?」
ない! と言ったら嘘になるけど。
「料理……しろって親に言われてる。けど、良い料理教室なくて困ってる」
「また人間関係? それが問題?」
「うん……」
三十歳になるのだから……と言われるが、この先もきっと一人……何の為に料理をするのだろう。
「じゃあさ、俺ん家でやる? 料理教室」
「え? 何言ってんの? 酔っちゃった? 完全に」
「いやいや、酔ってません。人間関係が苦なら慣れた俺に教われば良い」
「え? 待って」
「待たない、日下、言っただろ? 俺みたいに慣れたら……って」
「聞き逃してないね、富塚君……正確に意味を理解してらっしゃる……」
「うん、こんくらいじゃ酔わない。もっと飲めば酔うかもだけど」
「悪い事、するもんじゃないね……」
「悪い事したの?」
「してないけど、富塚君は高校の頃、悪い事ばかりしてたでしょう?」
「してないって! 周りがしてたの!」
「周りのせいにしちゃいけないんだよ?」
「はーいっ!」
不意を突かれた。
子供っぽい富塚君の返事に少しニヤッとしてしまった。そのくらい今の彼は酔っていて、気分が良いのだろう。可愛い……。
そんな風に思ってしまう自分がちょっと恥ずかしくなって、トイレに行かせてもらった。
富塚君、反則~! いろいろ探りを入れられてる彼に私の心は揺れ動き始めているのかもしれない。
戻ってみれば、次の料理と富塚君が頼んだお酒があった。
ちらっと私を見て、おでんの大根を食べながら富塚君は私に言う。
「決めようか、料理教室」
「酔ってない時に決めたい」
「それは俺が……ってこと?」
「うん」
と頷く。
「分かった。じゃあ、明日ね」
「明日? 明日は土曜日で、仕事ないよ?」
「だからじゃん。料理教室、仕事に関係ないし。日曜でも良いんだよ?」
「え? そんな休みの日に……富塚君、やる事あるでしょう?」
「ない。ゲームしか」
「はっきり言うねぇ……」
呆れつつ、逃れられない感じになって来た。
「こういうのはさっさと決めた方が良いんだって、日下は覚えてない事を期待してるだろうけど、こんくらいで酔ってたら課長と飲めないし、ま、俺だって、日下よりはできるよ? 料理」
「う、一人暮らしの独身男に言われたくない……」
「じゃあ、見返す感じで一度作ってみなよ。俺の前で、そうしたら、もう何も言わないよ」
「う、ツライ!」
「じゃあ、家に来る?」
「どういうやり方? それ!」
「ちょろくはなかったか……」
ちょろいと思われていたことに腹が立った。
「むーっとしてますが、俺的に日下ともっと仲良くなりたいんで、少し付き合ってもらえませんかねぇ?」
「じゃあ、別にこのまま富塚君の家に行かなくても良いでしょう? 明日、富塚君ん家に行ってやる! だから、今日はナシ!」
「良いよ、それでも」
何か含みのある感じに笑われた……いや、誘導だった! これ!!
「今のナシで!」
「無理でーっす! じゃあ、時間と場所はまた送りますから楽しみましょう? 続きを」
「憎き! 何かになってるよ? 富塚君、私の中で」
「良いよ、別に。そこからスタートでも。俺は日下に慣れてもらえたことで幸せです」
「酔ってますよねぇ?! 完全に!」
怒りというのはこうして出て来るのかと思った。
富塚君より先に会社を出て、それまで見てなかったスマホを開き、メールを確認する。
一件……富塚君から。今から一時間前だ。業務連絡。
予約しました。待ち合わせはいつもの時間、駅のホームで。ちなみに降りる駅はいつも降りる駅の前の駅です。
ちょっと遠回しだけど、たったそれだけ。
そこから行ける所なのだろうか。少し不安になるが指定された場所に行く。
富塚君と同じ道で歩いていないらしく、富塚君より遅く駅に着いてしまった。
「お疲れ、良く来たな」
「いや、お疲れ様ですけど、私もこの場所に来ないと帰れないし」
「バックレないで……ってこと。この次の駅で降りるから」
「念押し……、そんな近くにあるの?」
「ああ、歩いて六分とか? そんくらいにある所」
「どんな所?」
「小料理屋」
「小料理屋?」
「初めて? 行くの」
「いや……そうかな?」
「安心して、俺の知り合いの人がやってる所だし」
「何か怪しい……」
「ちゃんとした所だって! 料理の味、美味しいし、こじんまりしててね、高くないし、日下も気に入ると思うよ?」
「そう……、富塚君ってどの道通ってるの?」
「ん? 普通の道、日下が歩くの遅いんじゃないの? 道端にある花でも見て歩いてるとか……」
ちょっと図星、今日はちょっと空を見て歩いていた。ああ、早く歓迎会などというのが終わりますように……と星も出てない空に向かってお願いをしていた。
「割り勘?」
「ん? どうしようかな……」
そんな話をしていたら電車が来てしまった。
ちょっとギリギリって思ってたからな……なんて思いながら、電車に乗り、予定通りその駅で降りる。そして歩いて目的地に着いたみたいだ。ここまで会話一切なし。
まあ、それでも良いのだけど。
「あの、富塚君、ここ?」
「そう……鈴日」
暖簾にそう書いてある。ちょっと崩した字で『小料理屋 鈴日』というのが目立っている和風の店。良くある感じだ。
「ドキドキする?」
そんな風に微笑して、彼は中に入って行った。
もう何なの?! とちょっと怒りながらも彼に付いて行った。
「いらっしゃい、あら~、待ってたわよ、富塚君。小上がりの方でも良い?」
「はい」
と人が良さそうな女将さんらしき五十代の女の人と話して富塚君はもう二人分のお箸と小皿が机の上に置いてある席の方に向かった。
四人座れる所に二人……他にも来るんじゃないかと思ってしまう。
ちょっと二人だけのはないか……と奥にある二つのテーブルも見たりしてキョロキョロしてしまったのが目に留まったのだろう。
「大丈夫、ここ全部四人なんだ。カウンターの方が良かった?」
「いや……」
もうそうなっているのをまた移動して……というのは悪いと思い、私はこのままにしてもらうことにした。
「何飲む?」
手書きのお品書きを見ながら私は言う。
「オレンジジュース」
ぷっと笑いながらも富塚君は注文をしてくれた。
やっぱり富塚君はビールか……。
私達以外まだ誰も来てなくて、ちょっと不安になる。
「貸し切りとかじゃないよね?」
「まさか、そんなことはできないよ。何食べる?」
「えっと……」
適当に富塚君が頼んだ物を私は食べる。
「手羽先美味しい……。その前に食べた刺身も美味しかったし、お通しから美味しかった」
「好きになった?」
「うん!」
素直にそう言ってしまった。
「そうか、良かった……」
何か安心したのか、富塚君は一気にビールを飲んだ。
あんまりおすすめしない飲み方……。
ビール以外のお酒を頼んで富塚君は私の方を見た。
「何?」
「日下は正座で足痺れないの?」
「痺れてるよ」
「崩せば?」
「無理。それさえもできないくらい痺れてる」
またふふっと笑って、富塚君は次の料理を頼んでしまう。
「大丈夫?」
「何が?」
「お金……割り勘でしょう? 富塚君は持ってるかもだけど、私は……」
と小声になったのだが。
「大丈夫だって、それにこれは日下の歓迎会なんだから、全部俺が出します。だから好きなの頼んで食べれば良いのにしなくてさ……日下って前の仕事、何やってた?」
「工場の派遣」
「何の工場?」
「何か、作る系の」
「何作る系?」
「うーん、大きいの? 良く分かんない。小さい物を見て、ちゃんとそうなってるか確認する系だったから」
「ふーん、そんな感じ……」
「何? ちゃんと具体的に言わなきゃダメ? 富塚君はそうやって私の知ってどうするの?」
「参考に」
「何の参考?」
「いろんな職場があるんだなぁ……って」
「転職でもするの?」
「しないけど、日下が今までどうやって生きて来たのか知りたくて」
「え?」
そんな所で他のお客さんが数人来てしまった。それでもこの話を止めるつもりがない富塚君に私は言う。
「まあ、ずっとそんな工場ばかり勤めてた。だから、あんまりパソコンの入力とかして来なかったし……」
「ふーん、それでも今日は打つの早かったよね?」
そんな所まで見てるのか? この男は!
「何? やっぱり、打つの遅いから派遣切られるよ……って言いたいの? だったら、次の所探さなきゃだし、はっきりそう言ってくれれば」
「バカ、俺はね、心配してるんだよ。そうならないようにしてほしいって思ってるんだ」
「何で?」
「俺の中で日下が日々、癒しっていうか……何か気になるから」
「はい? 酔ってますね? ちょっと完全に酔ってますね?」
「酔ってはない。じゃなかったら、こんな話しません。それにうちの会社、一回は必ず出来ない人でも更新するから」
「え? 何の為に、そんな……」
「うーん……、たぶん社長の方針? どんな人にも等しくチャンスを……とか、隠れた能力があったりして……だとか、そういう夢的な部分を買ってのことだと思う」
「買わなくて良い部分だね、それ。私だって、今の富塚君みたいに人に慣れたら……一応はそういうパソコンに強い人になる為の学校行ったし……」
「へえ、高校卒業してそんな学校に行ったの?」
「大学ではないけどね。富塚君は確か……」
「東京の大学。でも、あっちで就職活動してたけど決まんなくて、こっちでやったら一つだけ。それが今の所」
「へえ、富塚君はそれでずっと……」
「そうだよ、日下みたいに一からいろいろ覚えるの嫌だしね」
「へえ、私は人間関係がすぐになくなるやつだから良いけど」
「ネックはそこですか?」
「そうだよ、富塚君には分からないだろうけど。私はそこが一番大事。私だって工場は嫌。でも、短期間というか……即日で働き出せるの製造系が多いし、事務系ってあんまりなくて、今回はそんな工場の仕事なくて、同じ所に行くの嫌だったし、あそこしか良いのなくて」
「ふーん、日下はいくつの派遣会社に登録してる?」
「三つ以上は……」
「ふーん、それで、他に悩みある?」
「え? 悩み……?」
ない! と言ったら嘘になるけど。
「料理……しろって親に言われてる。けど、良い料理教室なくて困ってる」
「また人間関係? それが問題?」
「うん……」
三十歳になるのだから……と言われるが、この先もきっと一人……何の為に料理をするのだろう。
「じゃあさ、俺ん家でやる? 料理教室」
「え? 何言ってんの? 酔っちゃった? 完全に」
「いやいや、酔ってません。人間関係が苦なら慣れた俺に教われば良い」
「え? 待って」
「待たない、日下、言っただろ? 俺みたいに慣れたら……って」
「聞き逃してないね、富塚君……正確に意味を理解してらっしゃる……」
「うん、こんくらいじゃ酔わない。もっと飲めば酔うかもだけど」
「悪い事、するもんじゃないね……」
「悪い事したの?」
「してないけど、富塚君は高校の頃、悪い事ばかりしてたでしょう?」
「してないって! 周りがしてたの!」
「周りのせいにしちゃいけないんだよ?」
「はーいっ!」
不意を突かれた。
子供っぽい富塚君の返事に少しニヤッとしてしまった。そのくらい今の彼は酔っていて、気分が良いのだろう。可愛い……。
そんな風に思ってしまう自分がちょっと恥ずかしくなって、トイレに行かせてもらった。
富塚君、反則~! いろいろ探りを入れられてる彼に私の心は揺れ動き始めているのかもしれない。
戻ってみれば、次の料理と富塚君が頼んだお酒があった。
ちらっと私を見て、おでんの大根を食べながら富塚君は私に言う。
「決めようか、料理教室」
「酔ってない時に決めたい」
「それは俺が……ってこと?」
「うん」
と頷く。
「分かった。じゃあ、明日ね」
「明日? 明日は土曜日で、仕事ないよ?」
「だからじゃん。料理教室、仕事に関係ないし。日曜でも良いんだよ?」
「え? そんな休みの日に……富塚君、やる事あるでしょう?」
「ない。ゲームしか」
「はっきり言うねぇ……」
呆れつつ、逃れられない感じになって来た。
「こういうのはさっさと決めた方が良いんだって、日下は覚えてない事を期待してるだろうけど、こんくらいで酔ってたら課長と飲めないし、ま、俺だって、日下よりはできるよ? 料理」
「う、一人暮らしの独身男に言われたくない……」
「じゃあ、見返す感じで一度作ってみなよ。俺の前で、そうしたら、もう何も言わないよ」
「う、ツライ!」
「じゃあ、家に来る?」
「どういうやり方? それ!」
「ちょろくはなかったか……」
ちょろいと思われていたことに腹が立った。
「むーっとしてますが、俺的に日下ともっと仲良くなりたいんで、少し付き合ってもらえませんかねぇ?」
「じゃあ、別にこのまま富塚君の家に行かなくても良いでしょう? 明日、富塚君ん家に行ってやる! だから、今日はナシ!」
「良いよ、それでも」
何か含みのある感じに笑われた……いや、誘導だった! これ!!
「今のナシで!」
「無理でーっす! じゃあ、時間と場所はまた送りますから楽しみましょう? 続きを」
「憎き! 何かになってるよ? 富塚君、私の中で」
「良いよ、別に。そこからスタートでも。俺は日下に慣れてもらえたことで幸せです」
「酔ってますよねぇ?! 完全に!」
怒りというのはこうして出て来るのかと思った。
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